いつも何やかんやで団長に負けている気がするあたし。考えてみればいつだって勝負を仕掛けてくるのは団長で、そして何かいやらしいことを作戦に組み込んできやがる。つまり、神威団長に勝とうと思ったら勝負を受けているだけではダメだと考えたあたしは、


「神威団長!!勝負しましょう!!」


自分からけし掛けることにした。


「ん?ピョン子からなんて珍しいネ。いいよ、何で勝負するの?」

「ずばり料理です!!」


料理は乙女の武器!!あたしも女の端くれだ。一通りのメニューなら作りこなせる。しかもこれなら、なかなかデンジャラスな展開に発展しないだろうと考えてだ。


「いいよ、ルールは?」


思ったよりあっさりOKを出した団長に心の中で拍手した。さすが団長だ、どんな内容でも勝負ならば受けるというその姿勢、尊敬する。あたしはルールを説明した。それはいたって簡単。肉ジャガを作って、どっちが美味しいか阿伏兎に判定してもらおうというもの。きっと阿伏兎なら公正なジャッジを下してくれるはず。


「負けた方は、一週間勝った方の奴隷です」

「今の言葉忘れないでヨ」

「団長こそ!」


団長とあたしは厨房を借りて料理を始めた。
団長が暴れ出したりしないか少し心配していたのだが、なんだ団長、真剣な眼差しで食材を見極めている。一安心だ。しかし、これであたしの勝ちは決まったようなもの。料理は力でどうにかなるものではない、愛情と経験、そしてテクニック。どれも団長には無いはずだ。意気揚々と作りだしたあたし。

ルンルンとジャガイモの皮をむいていれば、隣からトントンとこ気味よい音がする。見れば、華麗なる包丁さばきを見せる団長がいて驚いた。しかし、それほどのことでもないと心を落ち付ける。なにせ戦場に出ているお方だ。刃物の扱いには慣れているのだろう。
しかしさらに数十分後、今度は思わず二度見してしまった。

団長が…!!

あの扉を蹴破って入室してくるような団長が…!!

あの邪魔なものは部下ですら粉砕してわが道進む団長が…!!!

軽量スプーンを使っていらっしゃる!!!!!!!??

今まで見たことない繊細な動きを見せる団長に顎が外れそうだ。なんだコレ幻覚??え、幻覚??


「なにピョン子さっきからこっち見てるの?」

「あ、あの、団長」

「なに?」

「料理の経験あるんですか?」

「ん?まぁね、まだ夜兎の惑星にいた頃は俺が毎日飯作ってたから」


大誤算んんんん!!!!どんな家庭的な団長だ!!!!いつもとだいぶギャップあるだろうが!!!!!


「もしかしてさ、俺料理できないと思ってた?」

「…」

「はは、負けた方は一週間奴隷だヨ?」

「…!!」


冷や汗が伝った。これはヤバい!!団長がいやらしい笑みをこちらに向けた。ち、ちくしょー負けてなるものか!!あたしだって料理には少しだけだけど自信あるんだから!!


「ピョン子には悪いが、団長の方が好みだな」


阿伏兎は公正なジャッジを下した。
ああ、一週間地獄の生活が始まる





料理

確かに団長の美味しかった…





20100202白椿

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