「腕相撲しようよ」

「はい?」


団長が笑顔で誘ってきた。
いや、明らかに勝負見えてるよね?やる意味ないよね?


「ピョン子は両手使っていいから、俺は片手ね」


ね?じゃないですよ。それでも勝負分かりきってますからね?


「ほら早く」


ニコニコと手を出す団長を見て、仕方ないからあたしも手を出す。もちろん両手をそえた。


「いくよ?レディー…ファイッ!!」



すっげー団長、やっぱりびくともしないよ!!
あたしは両手に入る力すべてを注ぎ込んでいるのに、団長は余裕の顔だ。まぁ、予想はしてたけどね。


「ふんっ!!」

「…」

「…団長、強いですね!!」

「そう?、けっこーいい勝負じゃん」


嘘つけ!!団長めっさ力加減してんでしょーが!!!


「はあっ!!」


どう頑張っても全く動かない。
おい…いつまでこれ続くんだろう…早く終らせてくれよ!!疲れてきたよ…!
団長はニコニコしながら、頑張れ〜なんて言ってる。

ちくしょー!!

ここは勝ってやりたいとこだけど、力では全く敵わない。しばらく奮闘したけれど、やがてあたしの力は尽き、腕の力は無くなった。
なのにあたしの腕は立ったままで…


「?」


それは神威団長の手にも力が入っていないからだった。


「だ、団長…?」

「なっかなか勝負つかないねー」


いや、これただ手を握り合ってるだけだもの。勝負とかじゃないもの。ニコニコの団長はぎゅうっとにぎる手に力を入れた。少し怖くなったあたしは、もう負けてしまおうと考える。


「…!!」


自ら負けようと、わざと自分の腕を倒そうとしたのだが、


「ふんっ!!」


やっぱり腕はびくともしない。


「うんうん、いい勝負だなぁー」

「…うーん!!」


この作戦もダメだ!!なんだこの人!!?何が目的だ!!
さらに怖くなったあたしは団長の手を離そうとした。


ギュッ!!


途端ににぎられている手に力が入った。


「痛!!」


団長を見るとすごい素敵な笑顔で、


「勝負の途中放棄は認めないよ」







腕相撲
ただ手をにぎっていたくて









20090313白椿

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