「夢子さん」
「ん?」
「ひざまくら」
「ん。いーよ」
「してあげます」
「そっち?!」

隣に座っている竜持くんはポンポンと自分の膝を叩いて「早く早く」と、まるでプレゼントを待てない子供みたいにニコニコして楽しそうだ。何がそんなに面白いのだろうか。竜持くんって、時々年上の私よりもずっと大人びた顔をするくせに、本当はずうっと、年相応にあどけないんだあ。そういう竜持くんの不安定なところ、私好きよ。

「普通、そういうのって女の子の役目じゃない?」
「僕、そうやって固定観念にとらわれるのはどうかと思います」
「どっちにしても、竜持くんの太ももは固そうだからなあ」
「確かに僕は夢子さんみたいに肉付きの良い体はしていませんが……」
「おい」

失礼な!
とお灸をすえるつもりで竜持くんの頬をペチン、と可愛い音で殴った。
竜持くんは「暴力では何も解決しませんよ。なんて愚かな人間なんですかあなたは」と、呆れたように溜息を吐く。けれど口元が緩んでいるのが見えるから、本気で呆れているわけではないのだろう。竜持くんの大好きな、皮肉、というやつだ。

「お返しに、SNSで夢子さんの恥ずかしい写真を晒すことにします」
「ちょっと待って。何それ、恥ずかしい写真ってなに?いつ撮ったの?」
「さあ?」
「だ、だめ!パソコン貸して」

太ももにパソコンを乗せてカタカタとキーボードを叩きはじめる竜持くん。ひざまくらはパソコンにとられてしまったようだ。
慌てて竜持くんからパソコンを取り上げようと勢いよく詰め寄ったのだけれど、ヒョイっと素早い動作でパソコンを持ち上げて、避難させられてしまった。掴むはずだった対象物を失って、私は勢い余りそのまま竜持くんの空いた膝に倒れこんでしまった。ダイブ。

「ぎゃ!」
「もう、夢子さんそんなにひざまくらしたかったんですか?仕方のない人ですねえ」

持っていたパソコンを閉じて机の上にそっと置くと、竜持くんは膝に上半身を凭れかからせている私の頭を優しく撫でた。さっきまでキーボードを叩いていた指が滑る様に私の髪を絡ませる。しなやかな彼の仕草に、少しだけドキッとした。さっきまで子供らしかったのに、今度は何処か艶っぽい。竜持くんって、やっぱり不安定。そこが好き。

「甘やかしてあげますね」

うつ伏せからゴロンと身体を仰向けの状態にさせて、竜持くんを見る。
いつもはあんまり甘やかしてくれないくせに。
なんてね。うそ。厳しい言葉ばかり目立つけど、いつも「仕方ないですねえ」って私の我儘聞いてくれちゃうの、ちゃんとわかってるよ。出会ったばかりの頃こそツンケンしてたはずなのに。いつからこんなに子供らしく笑ってくれるようになったんだろう。大人びたフリをする竜持くんが、こういった表情を見せてくれるようになったのは、とても光栄で幸せなことと思う。

「じゃあ甘えちゃおう」

オデコを撫ぜる竜持くんの掌の温かみを感じながら、やっぱり全然柔らかくない膝を枕にして、気持ちよさにそっと目を閉じた。





楓さま
企画へのご参加どうもありがとうございました!
どうだったでしょうか…?イチャイチャできてましたか…?
イチャイチャといえば膝枕でしょう!と思って書いたのですが…笑
いつも読んでくださってありがとうございます。
素敵なお話と言っていただけてとても嬉しいです!
竜持くんは私も書くのが楽しいので、そう言っていただけると嬉しく思います!
お気遣いのほうも本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
リクエスト、ありがとうございました!
(2013.06.15)

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