湿気が多くて梅雨は嫌いだなあ。
その上、外で遊ぶ予定だって潰れてしまいがちだ。頭だって痛くなるし、髪の毛だってうねる。買ったばかりの靴は履けないし。
それに、練習試合だって中止になってしまう。

「虎太、怒ってるの?」
「怒ってねえよ」
「夢子さん、虎太くんは怒っているのではなくて、試合で発散するはずの闘争心が昇華できていないだけなんですよ」
「ま、しょうがねえじゃん。雨が降るのは誰のせいでもないし」
そんなことより早く帰って風呂入りてえな、足が寒い。

そう言った凰壮の靴はびしょ濡れだった。無理もない。今日は土砂降りだ。凰壮だけではなく、竜持や虎太の靴も水を吸って重そうに色を濃くしていた。
折角集合場所まで来たのに。家を出る時はまだ小雨でやろうと思えばできそうな天候だったが、集合時間になるころにはすっかり雨模様になっていた。集合場所に着くなり監督から「今日は解散」宣言され、サッカーをやる気満々だった私たちは溜息を吐かずにはいられなかった。最近、思い切りサッカーができていない。全部雨のせいだ。雨がやんでもグラウンドが乾かないことにはサッカーはできない。芝生でできればいいのになあ、なんて心の中で毎日ぼやいた。

「折角ですし、どこか寄って帰りますか?」

四人で並んで傘をさし、家に帰る途中、竜持がそんなことを言った。

「どこかって?」
「ゲームセンターとか?」
「図書館?」
「マック?」

三人の答えに、どれもパッとしないなあと首を捻る。

「やっぱりサッカーしたいねえ」

そう呟いた私に、虎太が頷くだけの同意を示した。

「そうですねえ」

うわ言のような力のない相槌を打った竜持が、ふと、目の前に転がっていた空き缶を蹴った。宙に浮いた空き缶が、凰壮の方に飛んでいく。ソレを凰壮が「よっ」と言いながら足の内側でトラップする。
「虎太」と、凰壮が呼ぶと空き缶は虎太に向かった。
振り向いた虎太が、持っていた傘をポイっと地面に捨てた。凰壮からパスされた空き缶を一度トラップすると、今度はドリブルをはじめた。

「虎太、どこ行くの」

虎太が捨てた傘を拾いながら走り出す虎太の背中に問いかけると「公園!」と虎太にしては大きな声が返ってきた。

「虎太くん待ってくださいよ」
「しょうがねえなあ、虎太のやつ」

そう言って竜持と凰壮も虎太に続いて走り出す。水を吸った靴が水たまりの上を跳ねてますます重そうに色を重ねた。

「夢子も遅れんなよ」

雨の中から、虎太の楽しそうな声が聞こえた。
傘も差さずに何をやっているんだ。風邪を引いたら折角晴れてもサッカーできなくなっちゃうのに。

「しょうがないなあ」

そう溜息を吐きながらも、三人の後を追って走り出す。

雨の中のサッカーも、結構乙なものだろう。




椎名さま
初めまして、ナコといいます。
リクエスト+アンケートにご協力いただいでありがとうございました!^▽^
最近はまったのですね…!銀オフ面白いですよね…!^///^

三つ子の話、ということでしたがどうでしたでしょうか…。
サッカーが大好きな三つ子が好きなので、こういう話を書かせていただきました。
少しでも気にいってもらえたら幸いに思います!
それでは、どうもありがとうございました!
(2013.06.05)
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