「私ってブスかなあ……?」



十四歳の秋。
いつも通り学校から帰り机に向かって勉学に励んでいると、委員会とやらで僕より遅く下校したらしい夢子さんが部屋に上がりこんできたのです。追い返そうとも思ったのですが、ひどく元気がないようだったのでこれならばうるさくされることもないだろうと思い、「お好きにどうぞ」と僕は夢子さんに構うことなく数式を解く作業に専念し直しました。夢子さんは言葉通りにお好きにすることにしたのか、いつものように僕のベッドにゴロンと寝転んで屍の如く大人しくただただ天井を眺めていました。
何かあったのでしょうか、と考えましたがどうせ凰壮くん関連のことだろうと、それ以上何かを詮索しようとは思いませんでした。

「(もしそうなら自分から相談を持ちかけてくるでしょう)」

夢子さんが僕の部屋を訪れるのは珍しいことではありません。彼女が望むような娯楽は何一つないと言うのに、ことあるごとに尋ねてきては勉学に励む僕の側でただただぐうたらとして日が落ちると帰るという習慣を繰り返しているのです。何故夢子さんにそのような習性が備わっているのかと問われればそれは、僕に懐いているからだろうという回答を導き出すことができます。
幼馴染の夢子さんとは物心朧気な幼稚園時代からの付き合いです。親同志が親しく家も隣であったため一緒に遊ばされることも多かった夢子さんは、喧嘩友達兼想い人である凰壮くんと喧嘩するたびに、僕に助けを求めてきました。二人の喧嘩など心底どうでもよかったのですがムキになる夢子さんの子供特有の金切声が耳元で叫ばれるのは僕の鼓膜の健康上大変よろしくなかったので、不本意ではありますが仲裁役に回ることが多く凰壮くんを窘めるのも僕の仕事になっていました。
その頃の刷り込みか何かのせいか、夢子さんは未だに何かあると僕を頼るし僕もなんとなく夢子さんの相談にのることぐらいは行っていたのです。
夢子さんの相談事なんて八割は凰壮くんのことであり、二人の仲を応援する義理など微塵もありませんでしたが、曲がりなりにも幼馴染という立ち位置である人間にはそれ相応の情が湧くもので、七割がた面白がりつつも三割くらいは真面目に相談を受けていました。


そうして、しばらくの沈黙を経て彼女の口から出た言葉が、冒頭の言葉です。


「……何か言いました?」

あまりにも独り言のような小さな呟きに、聞き返さずにはいられませんでした。スルーしてもよかったのですが、それはそれで面倒くさいことになりそうだと思ったので仕方なしに耳を傾けることにします。

「……私って、ブス?」
「人並みだと思いますよ。可もなく不可もなく。化粧でごまかせるレベルです」
「……そっかあ」
「凰壮くんですか?」

僕が尋ねると夢子さんは少し間を開けてから頷きました。

「またブスブス言われたんですか?そんなこといつものことなのに、今更気にするなんて何かあったんですか?」
「……別に、ただ、気になっただけ」

そう言って夢子さんはほとんど力なく「ありがとう、竜持。元気出た」と笑いました。
別に元気が出るようなこと、言った覚えないんですけどね。

「今日は、もう帰るね」

夢子さんは来たときと同じように肩を落としたまま僕の部屋を後にしました。


これは……何かありましたね。


「ま、どうでもいいですけど」

やれやれと言うように溜息をつき、僕は再び机に向かい直したのでした。





「ただいま」
「お帰りなさい、凰壮くん」

夢子さんが帰ってから数時間後、部活から凰壮くんが帰宅してきました。
息抜きにリビングでテレビを見ていた僕の後ろを通る凰壮くんは重そうな荷物をソファーの側に置いてからキッチンに向かい、冷蔵庫を開けてペットボトルに入ったお茶をコップにうつさずそのまま飲み始めました。「凰壮くん、口付けて飲まないで下さいよ」と釘を刺すと「つけてねえよ」と言い返してきて、よく見ると確かに口をつけないようにペットボトルを浮かせながら飲んでいましたが、どっちにしても行儀が悪いことには変わりありません。

凰壮くんはペットボトルを冷蔵庫に戻すと「母さんは?」と聞いてきました。

「今日は遅くなるって言ってたじゃないですか。因みに、夕飯は鍋の中です」
「そうだっけ?まあいいや。俺、先に風呂入ってくる」

そう言ってキッチンを出ていこうとする凰壮くんに「夢子さんが……」と呟くように言うと、凰壮くんは終始動かせていた体をピタリと止めて「何だよ?」と振り返ってきたので、笑わずにはいられませんでした。

凰壮くん、随分と夢子さんのことが気になるみたいですね。

「……何笑ってんだよ」
「いいえ、別に。ただ凰壮くん、夢子さんのことそんなに大事なら、あんまり傷つけるようなこと言わないでくださいね。僕が慰めないといけないので」
「はあ?なんの話だよ」

凰壮くんが怪訝そうに眉を顰めたので「また喧嘩してブスとかなんとか言ったのでしょう?落ち込んでましたよ」と説明するように言うと「喧嘩なんかしてねえよ」と答えました。

「へえ、それは変ですね」

凰壮くんの回答に対し、僕は手を顎に添えて考えるようなポーズをします。

確かに夢子さんは「凰壮と喧嘩した」と言ったはずですが。
そう思って数時間前の夢子さんとの会話を思い出してみれば、それは僕の勝手な解釈によるもので実際に夢子さんはそんなこと言ってない、と思い直すことになりました。
夢子さんは僕の「凰壮くんですか?」という問いかけにただ頷いただけで、「喧嘩した」と言ったわけではありません。それどころか、僕の「何かあったんですか?」という質問には「別に」とそれとなくはぐらかしてきました。

つまりそれは、凰壮くん関連のことで何かあったけれども、直接凰壮くんとの間に起こったことではなく、且つ僕にも相談するのは憚れる事柄、ということになります。


「(いじめられてでもいるんでしょうか、でもそんな話聞いたことないですし。他に考えられる可能性は……)」


しばらく黙って思案していると、訝しげに僕を見ていた凰壮くんが「竜持、何の話だよ」と尋ねました。

「さあ?」

気になって仕方がないみたいな凰壮くんが面白くて、僕に出来得る限り最上級の微笑みを向けてはぐらかすと凰壮くんはムッとした顔を見せつつ「また夢子がなんか相談しにきたのか?」とまた質問します。「いいえ、相談はされてませんけど」と嘘は吐かないけれど核心もつかない言葉で返すと、焦れた凰壮くんから苛立ちと鬱陶しさを含んだ溜息が聞こえてきて、僕はまたもや笑い声を漏らさずにはいられませんでした。

「怒らないで下さいよ、本当に何があったかは僕も知らないんです」

クスクスと笑いながらも僕がそう宥めるように言うと、凰壮くんは「……ふーん」と何か考えるような素振りで相槌を打ちました。

「なので凰壮くん、何かあったら夢子さんの力になってあげてくださいね」
僕は二人の喧嘩の仲裁役で、慰めるのは凰壮くんの役ですから。

そう笑う僕に対し「はっ、なんで俺が」と鼻で笑うように言い背中を向けてお風呂に向かう凰壮くんを見送りながら「そんなこと言って、本当は気になるくせに」と心の中で呟いて、僕は再度テレビに視線を戻したのでした。





次の日。朝練のなかった凰壮くんと一緒に学校に登校すると、ちょうど靴箱で靴を履きかえている夢子さんと遭遇しました。

「おはようございます、夢子さん」
「よう」
「あ。竜持、凰壮。おはよう」

後ろから僕らが声をかけると、一瞬驚いたように肩を上下させた夢子さんはゆっくりと振り向いて目が合うと、どこか安心したようにけれどぎこちなく笑いました。
いつもらしくない力ない笑顔に、まだ元気はないようですね、と頭の隅で呟きます。

「夢子、お前落ち込んでんだってなあ?」

靴箱から靴を取り出しながら凰壮くんがニヤニヤとからかうように笑って、夢子さんに声をかけました。
そう言われた夢子さんは、驚くべき速さで僕の方に振り返り「喋ったの?」というような目で睨んできたので「口止めされてませんし」と笑顔で返すと、不服そうに眉を顰めます。
夢子さんは凰壮くんを一瞥し「落ち込んじゃいけないっていうの?」と不機嫌そうに答えました。

「別に。ただ、能天気な夢子でも一丁前に悩むのかと思っただけだよ」
「な、なにさ、能天気で悪かったね!凰壮には関係ないでしょ」
「……ま、そりゃそうだな」

フン、と笑うような声で言うと凰壮くんは靴を履きかえて「行こうぜ竜持」と僕に声をかけて、ズカズカと一人で先に教室に行ってしまいました。
僕は凰壮くんを追いかけるように数歩歩いてから、なおも靴箱の前でムッとした顔で頬を膨らませている夢子さんに「あれで凰壮くん、心配しているんだと思いますよ?」と言うと、夢子さんは「そうは見えないけどね」口を尖らせて不服そうに漏らします。

「でも夢子さん、さっきより元気そうですね?」

いつもらしく怒る夢子さんにからかうように笑いかけると、夢子さんは驚いたように目を見開いてから、すぐに再び顔を顰めらして「違うもん。凰壮がムカつくことばっかり言うから」とふて腐れました。

「……(夢子さんって、本当に鈍感ですねえ)」
「……なに?」
「いいえ、別に。それで?元気がない理由は、結局何なんですか?」
「……」
「……まあ別に言いたくないのなら無理には聞きませんが。ただ、何かあった後で泣きついてくるのはやめてくださいね」
「……」
「……それじゃあ」

肝心なことには口を噤む夢子さんに対し呆れたように溜息をついた僕は、彼女を残し教室に向かったのでした。


確かに僕は夢子さんの相談役兼仲裁役かもしれませんが、彼女が何も言わないことには、何もする義理はないのです。





昼休み。図書室に本を返しに行こうと廊下を歩いていると、凰壮くんが窓枠に頬杖をついて外を見下ろしていました。
生徒の近寄ることのない、植木しかない裏庭に面している廊下側から一体何を眺めているのだろうかと、忍び寄るように凰壮くんの隣に立って一緒に窓の外を見下ろすと、下にいたのは夢子さんともう一人、見覚えのない男子生徒でした。
二人は何やら話し込んでいるようです。

「何してるんでしょうね?」
「さあな」

気配でわかったのでしょうか、凰壮くんは僕に視線を向けることなく、つまらなそうに相槌を打ちました。

くだらない問いかけに、くだらない返答だと思いました。
なぜなら僕たちは、二人が何をしているか、なんとなく察しがついていたのです。
校内の人気ない場所で、男女二人が密やかに話し込んでいたら、内容なんて大抵相場が決まっています

「(いじめではなかったみたいですね)」

ぼんやりそんなことを思いながら、窓から体を離して凰壮くんにからかうような笑顔を向けました。

「断るといいですね、凰壮くん」
「……夢子の方が告白してるのかもしれねえだろ」
「……それは有り得ませんねえ」
「どうでもいいけどな、俺関係ないらしいし」

皮肉りながらもそっけなく答える凰壮くんは、やっぱり、気になって仕方がないのでしょう。

寂しそうに目を伏せた凰壮くんが二人から目を離すことは、一度もありませんでした。



正直、二人が喧嘩しようが心底どうでもいいし、二人の仲を応援する義理も僕にはありません。
けれども、曲がりなりにも幼馴染や兄弟といった立ち位置である人間には、それ相応に情が湧くもので、だから、二人の元気がないのは、ほんの少しだけ、面白くなかったのです。


「(あれじゃあ、からかったところで面白くないですし)」


そうして僕は、重い腰をあげることにしました。

一応僕は、二人の仲裁役ですから。





「夢子さん、帰りますよ」
「え、竜持?」

放課後、授業が終わり夢子さんのクラスまで迎えに行くと、夢子さんは不思議そうな顔をしました。
それもそうでしょう。僕が夢子さんを迎えてまで一緒に帰ろうとすることなど、滅多になかったのですから。

「早くしてください」
「……う、うん」

教科書を持ち帰らない夢子さんは、彼女の脳みそと同じスカスカの鞄を抱え、僕の側に駆けてきます。
「行きましょうか」と軽く笑って歩き出す僕の後ろを不審そうに恐る恐るついてくる夢子さんに校舎を出たところで「何警戒してるんですか?」と振り返りながら問いかけると「……竜持、怒ってるのかと思ってた」と小さな声で呟きました。

「怒るわけないじゃないですか、面倒くさい。呆れたんですよ」
「呆れて、僕に泣きついてくるなって言っておいて、なんで迎えにくるの」

僕は視線を夢子さんから前方に戻してから「放っておくほうが、面倒くさいことになりそうだったので」と返しました。

「?なにそれ」
「わからなくていいですよ、それより夢子さんの落ち込んでた原因は何なんですか?」
「……」
「……今日告白された人ですか?」
「え!見てたの?」
「ええ、凰壮くんと一緒に」
「え」

途端夢子さんはその場に立ち止まりました。
僕も数歩先で歩みを止めて、夢子さんに体ごと向き直るとそこには顔面蒼白の夢子さんがいました。
夢子さんは心なしか泣きそうで、困ったように視線を泳がしてから「凰壮、なんか言ってた?」と尋ねました。

「関係ないらしいですよ」
「あ、そ、そう、か」
「夢子さんが、凰壮くんにそう言ったんですよ?」
「わ、わかってるよ……」
「それから、夢子さんの方が告白していると思ってるみたいでした」
「え!ち、違うよ!そんなわけないじゃん!」
「僕はわかりますよ。それに、僕に言ったところで仕方がないじゃないですか」
「そう…だけど……」

顔を俯かせてだんだん声が小さくなっていく夢子さんを前に、なんだかいじめている気分になって、居たたまれない気持ちになってしまいました。
それに、僕たちの傍を横切る人の視線も、居心地が悪いです。

「言い訳なら、いくらでもできるでしょう?」
「で、でも、そんなのしたって意味ないじゃん……凰壮、気にしてなんかないんだし」
「勘違いされたままでいいんですか?」
「……よく、ない」
「じゃあメソメソしてないで、腹くくってください」

しばらく黙った後、弱弱しく頷いた夢子さんに「じゃあ、家で凰壮くんの帰りを待ちましょう」と言って歩き出します。

すると無言で後ろから一定の距離を保って歩く夢子さんが「本当は、告白されたのは昨日なの」と消え入りそうな声で話しはじめました。

「今日は、告白されたんじゃなくて、断ったの。あの子、委員会が一緒の子でね、それで、昨日、委員会の後に告白されて、でも、断るのが嫌で、保留にしたの」
「……?断るのが嫌?凰壮くんにフラれたときのためのキープか何かですか?」
「そんなわけないじゃん。……断りたくなかったのは……私だって、告白して、フラれるのは、嫌だなあって思ったから」
「……?」
「私だって、凰壮にフラれたりしたら、嫌だから、だから、断りたくなんてなかったの」
「……」
「私のこと、好きだって言ってくれる人に、断って、嫌な想い、させたくなかったの」

背中に届く夢子さんの声が、今にも泣きだしそうでした。
そんな彼女にお構いなく、僕は素直に思ったことを言葉にします。

「……偽善ですねえ。傷つけたくないだなんて綺麗ごと並べてますけど、それは断ることで自分が嫌な思いしたくなかったからじゃないですか。決まってる答えを先延ばしにして、期待させるとは思わなかったんですか?はっきり断らないほうが、随分残酷だと思いますよ」

畳み掛ける僕の言葉に、夢子さんは覇気なく頷きました。

「わかるよ、偽善だってこと。私が、嫌なやつだってこと。だから、落ち込んだの。私、ブスだなあって」
「……」
「性格悪いなあって、性格ブスだなあって、そう思って、そしたら、もしかしたら、凰壮がいつも私にブスだって言うのが、もしかしたら、そういうことかもって思ったら、すごく、悲しくなったの」
「……」
「凰壮に、嫌なやつだって思われて、嫌われてるかもしれないって思ったら、すごく、悲しかったの」

そこまで言うと、夢子さんはまた立ち止まってしまったので、僕も再び立ち止まることになりました。
後半、夢子さんは泣いていたのか声が震えていて、僕は「くだらないことで悩んでいますねえ」と思わず溜息をついてしましました。
そうして夢子さんに振り向き、口を開きます。

「被害妄想だと思いますよ。凰壮くん、清々しく口は悪いですけど、そこまで陰湿じゃないですから、そういう意味で言ってるんじゃないでしょう」
「……うん」
「それにそんなことで落ち込むなんて、僕たちに失礼ですよ。僕ら、三つ子の悪魔だなんて呼ばれてたんですから。性格ブスどころの騒ぎじゃないです」
「……あは、今思うと酷いあだ名だねえ」
「そうですよ。そんな悪魔の幼馴染やってるんですから、聖人君子じゃいられませんよ。第一、僕、いい子ちゃんは苦手なんです」

少し『いい性格』しているほうが、僕らは付き合いやすいんですよ。



そうしてしばらく夢子さんは黙ってから、「そっかあ」と呟いて、小さく笑いました。

いつもらしい、屈託のない笑顔でした。



「性格悪くなんてないよって慰めないところが、竜持っぽいよね」
「……慰めたつもり、ないんですけどね」

僕は嘲るように笑いました。

慰めるのは凰壮くんの役で、僕は仲裁役にすぎません。
これはずっと、幼い頃から変わらないのです。

「でも、元気出たよ?ありがとう」
「……お礼はいいですから、さっさと帰りましょう」
「うん」

踵を返し再び歩き出す僕に駆け寄った夢子さんと、肩を並べて帰路につきました。






「ただいま」
「おかえりなさい、凰壮くん」
「凰壮、おかえり」
「……夢子か、何してんだよ」

夢子さんとリビングで待っていると、部活を終えた凰壮くんが帰ってきました。

キッチンに向かおうとする凰壮くんに「ああ、夢子さんが話があるみたいですよ」と引き留めると、横にいた夢子さんは「え!」と慌てた声をあげ、凰壮くんは足を止めて「何だよ?」と振り返りました。

「飲み物は、僕が持ってきてあげますね」

そう言って立ち上がると夢子さんが「一人にしないで」と不安な顔を見せたので「頑張ってくださいね」と満面の笑みで返すと恨めしそうに睨まれて「ああ、やっぱこのほうが面白いですね」と心の中で笑います。

キッチンに行くとリビングから夢子さんの「あ、あのね、凰壮」と意を決したような声が聞こえてきて、聞き耳を立てました。


「あ、の、今日、告白、されて」
「……」
「で、も………断った、から」
「……別に関係ねえよ」
「……うん、でも、凰壮に、勘違いしてほしくなかった、から」
「……」
「……」
「……で?元気は出たのかよ?」
「……え、あ、うん」
「あっそ」
「……気にしてくれたの?」
「まあ、普段うるせえ奴が大人しいのは、こっちも調子狂うからな」
「……そか」


こっそりと、キッチンから顔を出してリビングを覗くと、そこには頬を染めて嬉しそうに笑う夢子さんがいました。
その顔を見て、やっぱり慰める役は凰壮くんですね、と心の中で呟きます。


「(あの二人、いい加減付き合わないんでしょうか)」

ペットボトルからコップにお茶を注ぎながら、そんなことを考えました。


「(そうなった方が、僕もからかい甲斐があって面白いんですけどねえ)」



なかなか進展しない二人の先のことを思うと、自然と笑みがこぼれたのでした。















二度と竜持視点書きたくないレベルで敬語が分からなくなりました。ゲシュタルト崩壊!(2012.9.16)

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