自分のこと、よくできた人間だなんて思ったことなんてない。
竜持に勉強を見てもらえば馬鹿扱いされるし、中学時代は部活で忙しい凰壮にすら勝てたこともなかった。(もともと出来がいいんだ、あいつらは……)
最近までイモリとヤモリの違いもわからなかったし、パスモにチャージしようとして間違えて銀行のカードを入れたこともある。何もないとこで転んで買ったばっかのレギンスに穴あけるし、早とちりだってするし、誰がブランケットかけてくれたかなんかも自力では気付けない。
どっちかっていうと間の抜けた人間通称間抜けと呼ばれる人種だということは重々承知であり半ば開き直っているのだが、今回ばかりは自分の馬鹿さに呆れざるを得ない。


今日のデートは凰壮が気になっていた映画を見に行こうということだった。映画は前々から評判のよいもので、私も凰壮も期待して行った。
凰壮の好みの女のタイプは知らないが、映画の趣味とかそういうくだらない情報くらいは知っている。私と凰壮の映画の趣味は割と合っていたので、見終わる頃にはきっと二人で感想を言い合って盛り上がるんだろうなあなどと、映画を見るまでは思っていた……。






「思ったより面白かったな」
「……」
「殺陣のシーンもすごかったし」
「……」
「で?お前が見たほうはどうだったんだよ?」
「……は?」
「幸せそうに寝てたもんなあ、いい夢見てたんじゃねえの?」
「……」


映画が終わって、お昼時になったので凰壮に促され目に付いたインドカレーのお店に入った。
雰囲気のある内装はここが日本だということを忘れさせてしまいそうで、本格派なのだろうということが窺える。隅の席に通されてから注文を済ませると凰壮が「さっきの映画さあ」と切り出してきて、映画が終わってから口数の少なかった私はますます口を噤むことになった。



まさか、寝るだなんて、そんなテンプレみたいな失態犯すなんて、思わなかった。



だって、昨日は二時間しか寝てないし、暗くなってから本編が始まるまで随分時間があるし!などと自分を慰めるように言い訳をするが、しょせん言い訳にすぎない。
映画が終わっても起きなかったので凰壮に起こされたときはリアルに血の気が引いた。そして自分を詰った。なんてことをしたのだ、このおおばかもの!と。
凰壮はニヤアっと口の端を吊り上げるだけの笑いをして「映画館でいびきかくのはやめろよな、迷惑だから」と言った。
まさかデートに行って爆睡するなんて、自分を恋する乙女と自称するのも恥ずかしい。こんな乙女、いるわけない。ましてや一度ならず二度までも好きな人の前でいびきをかくだなんて恋する乙女どころか女ですらない。
なにがいつもより積極的に素直に可愛らしく女らしく、だ。いつも通り、だらしない人間ではないか。

「……私の可愛い寝顔見れてよかったね、えへ」
「ブスの寝顔見たって有難味ねえよ」
「……」

精一杯おどけてみせるが凰壮はいつも通り、馬鹿にしたように笑った。
いつもならここで怒って言い返すが、この件に関しては自分に非があるしデート中に喧嘩もしたくなかったので、反論の言葉はグッと飲み込んだ。

珍しく言い返してこない私を不思議に思ったのか凰壮が「なんだよ?」と聞いてきた。「何が?」と笑うと凰壮は「……なんでもない」と言った。


「(可愛いどころか、女としても想ってもらえないかもしれないなあ……)」


大好きなカレーが運ばれてきても私の心は晴れることなどなかった。






「あ、凰壮!あれあれ!」
「あ?」

お店を出て歩いているとゲームセンターの前を通った。外に置かれたクレーンゲームが目に入り、これだ!と思って凰壮の腕をぐいぐい引っ張る。

いつまでもくよくよしていては仕方がない。とにかく今は挽回するしかないのだ、と自身を叱咤し気を取り直して可愛い女の子を演出することにした。

「これ!このぬいぐるみ!欲しいなあ」

クレーンゲームのウィンドウを覗き込んで手前にあるくまのぬいぐるみを指してはしゃぐ。デートといえばこれでしょ!と私はまさに名案だと思った。
甘えたように取ってほしいと頼むことで可愛らしさを演出できるだけではなく、好きな人からプレゼントがもらえるし凰壮の頼もしい姿も見ることが出来る。一石三鳥ではないか。私天才!

しかしながら、そんな私とは対照的に凰壮は不思議そうな顔をした。

「……やればいいじゃん?」
「え?!取ってよ!」

好きにしろよ、といった態度の凰壮に私は驚いた。
普通デートで女の子がこういうこと言ったら男の子は頑張って取ってくれるもんじゃないの?え、マンガだけ?

「夢子クレーンゲーム好きじゃん。やりたきゃ自分でやればいいだろ?」


……マンガだけだったようだ…。





きっと凰壮は、ああいう甘えるような女の子はタイプじゃないんだ。
そう言えば朝も「ぶりっこ」呼ばわりしてきた。もしかしたら可愛い系より美人系が好きかもしれない。インテリ系って感じ?

「凰壮、本屋寄っていい?」
「おう」

早速私は思いつきを実行しようと試みる。
美人と言えば、知的でしょ?本屋でしょ?インテリには頭のよさそうな本は必須でしょう?(あれ?これ大丈夫か?)



本屋に着いてドアが開く。頭のよさそうな本を探そうと意気込んだが、入ってすぐにマンガが平積みされて置いてあって、思わず目を奪われた。

あ、今日発売日だ。

集めているマンガの新刊が視界に入り、ほとんど無意識に足がそちらに向く。凰壮もそれに続いて「お、それお前が集めてるやつじゃん」と言った。

「買うのか?」
「うーん、どうしようかな」
「なんだよ、それ買いに来たんじゃねえの?」
「……ちがう」

じゃあ何買いに来たんだよ?と聞かれ、頭のよさそうな本を答えなければと考えるが、考えれば考えるほど思いつかず返答に困り、思わず「け、経理の本……」と呟いた。

「……なんで?」
「……わかんない」


これも失敗だ……。





その後もキュート系ギャル系天然系清楚系など思いつく限りのタイプを試してみるが、どこもこれも上手くいかず、むしろ凰壮がどんどん引いてる気がするし「なんかあったのかよ」とか言って心配までしてくる。
挽回なんてとてもじゃない。

出そうになる溜息を堪え、どうしたものかと腕を組む。
このままでは「可愛い」なんて凰壮に言ってもらえるのは、夢のまた夢である。
やっぱり凰壮の好みのタイプも知らない私が凰壮をトキメかせるなんて、無理なのだろうか。

困った私の脳裏に浮かんだのはやはり竜持の「下着見せればイチコロ」だった。


いや、ない。それはない。ない、だろ。ない…けど…。…本当にない……?

これだけは幾度となく否定したというのに、今の私はそれをすることができなくなってきている。
藁にも縋る思いとは、正にこのことだ。


「(でも、見せると言ってもどこで見せるの?ここは街中で人がたくさんいるし、っていうかホントに見せるのか、見せていいのか?タイミングは?見せたいって言うのか?突然見せるのも可笑しいよね?そもそも、どうやって?スカートめくって見せるの?めくってもらうの?凰壮に?え、何それ頭おかしい…いや頭おかしいのはわたし、か…?)」

グルグルと考えを巡らせていると「おい!」と少し荒げた凰壮の声が聞こえて肩を掴まれる。驚いて顔をあげると目の前を車が走っていて赤色の信号が見えた。
振り向くと眉間に皺を寄せた凰壮が「ぼーっとしてんじゃねえよまぬけ!」と怒鳴る。どうやら赤信号を渡ろうとしてしまったらしい。

「ごめん……」
「……お前今日変だぞ」

訝しげな顔をして私の顔を覗き込む凰壮から目を逸らして「別に……」と答えると、凰壮が「はあ」と溜息をついた。

「(あ、凰壮、呆れてる?)」

どうしよう、このままじゃ、まずい。
なんとかしないと。
どうやって?


わからないわからない。
凰壮と出かけるなんて初めてじゃないのに、なんでデートってだけでこんなに上手くいかないんだろう。ただ凰壮に可愛いって言ってもらいたいだけなのに、何もかも裏目に出ている。

どうしたら呆れた凰壮にデートを楽しんでもらえるんだろう。どうしたらトキメいてもらえるんだろう。

十年も一緒にいて片想いもしていたのに、そんな簡単なこともわからない私は、やっぱり恋する乙女失格だ。



「あれ、降矢じゃん」

信号を待つ雑踏の中から、私の耳はしっかりとその声を拾った。
降矢って、凰壮のこと?
声のした方を振り向く私と同じようにそちらを向いた凰壮が「おう、ナカムラじゃん」と言った。
ナカムラと呼ばれたその、女の子、は「偶然!」と可愛い声ではしゃいだ。
見覚えのないその顔に、凰壮と同じ高校の人だろうかと推測する。

「何してんの?」
「何でもいいだろ、お前こそ何してんだよ」

そう言って二人は私なんかそっちのけで話し込みだした。
話の内容は「映画見に行ったんだ〜」「俺もだぜ」から始まり、クラスメイトのハラダくんとやらのことにまで広がっていった。ハラダって誰だ。

「(凰壮が女の子と仲良いの、初めて見た……)」

エリカちゃんとか玲華ちゃんのようなチームメイト以外の女の子と仲良くしている姿を見るのは、十年間一緒にいて初めてだった。
昔は自分たち兄弟以外の人間のことなんて馬鹿にしてたくせに。三つ子の悪魔なんて呼ばれて問題児していたころと違って、それぞれ別々に進学した高校では社交的になったのかもしれない。凰壮も成長しているんだなあと思う反面、こんな凰壮まるで知らない人みたいだ、とモヤモヤした気持ちがした。

「(幼馴染だなんて言って、十年も一緒だなんて言って、私凰壮のこと、なんにも知らないじゃん)」

好きなタイプや好きな女優どころの話じゃない。
凰壮に仲のいい女の子がいることだって、クラスメイトのハラダくんのことだって、凰壮がどうやったらデートを楽しんでくれるかだって、凰壮をトキメかせる方法だって、私は何にも知らない。
幼馴染なんて名ばかりで、凰壮のことなんにも知らないんだと痛感した。

「(凰壮、楽しそうだな)」

デートなんかしてた時より随分楽しそうな姿に、どんどん気分が落ち込んでいく。

私は盗み見るようにナカムラさんを見た。ニコニコと口角をあげて屈託なく笑う姿はどこか幼さを感じさせて可愛らしく思う。加えて明るく気さくそうに話す姿は、とっつきやすそうであり好印象だ。
いつも怒ってくだらない喧嘩ばかりする私とは大違いで、一緒にいてきっと楽しいだろうなあと思う。

もしかしたら、こういう明るいタイプが凰壮のタイプなのかもしれない。
私の知らない話をする二人の会話を聞きながら、ぼんやりそんなことを考えた。


信号が青に変わり、信号待ちをしていた集団が一斉に動き出す。尚も話し続ける二人を窺うように立っていると、邪魔だと言うように後ろから歩いてきた人に押されて、前のめりに転んでしまった。

最近、よく転ぶ。凰壮のせいだ。

先日凰壮に気を取られて転んでしまった時のことを思いだした。あの時と同じ膝を打って、治りかけたところが響くように衝撃を放つ。ちょう、いたい。
レギンス履いてなくてよかった。また穴があいたらたまったものじゃない。
くだらないことを考えているとさっきまで楽しそうにナカムラさんと話していた凰壮が「お前何やってんだよ」と呆れたように溜息をついた。


むかつく。


今までただただ悲しかった気持ちがはっきりと嫌悪に変わったのがわかった。

私とナカムラさんに対する態度の明らかなる違いに、お腹の中が抉られるように気持ち悪くグルグル渦巻く感覚に陥る。

呆れてため息つくくらいなら、別に心配しなくていいのに。
私のことなんかシカトして、楽しい話に華を咲かせていればいいじゃないか。
そうすれば私だってこんな苛つかないしみじめにならないし悲しくならない。

ああ、これ嫉妬だ。情けない。

手を差し出してくる凰壮を無視して一人で立ち上がると凰壮がムッとしたように眉を顰めた。
服の砂を払うように叩く私に視線を送りながら、ナカムラさんが凰壮に「彼女?」と聞くと「うるせえなあ」と煩わしそうに呟く凰壮の声が耳についた。
まるで私の存在が煩わしく扱われているようで、ますますイライラが募り服を払う音がどんどん荒々しくなる。


点滅する信号に気付くと、ナカムラさんは「またね」と言って小走りに信号を渡っていった。
取り残された私たちの間に険悪なムードが漂う。
喧嘩はよくするけれど普段はお互い好き放題言い合いになるので、こういう雰囲気はなかなか居心地が悪かった。

信号がまた赤に変わって、再び信号を待たなければならなくなる。

お互いただただ無言で並んで立った。


なんで、こんな気持ちにならなければいけないんだろう。
昨日まであんなに楽しみにしていたのに。
こんなの全然楽しくない。

こんなことになるなら、デートしたいなんて、言わなければよかった。



「おい」
凰壮が、おそらく、私を呼んだ。

なによ!と不機嫌に対応してやりたかったが、そんなことしてはこのデートが致命的にダメになってしまう。

私は一度小さく深呼吸してから、極力屈託ないように笑って、ナカムラさんみたいに気さくに見えるように「なあに?」と尋ねた。

しかしながらそんな努力も虚しく、凰壮が切り出した言葉は「もう帰らねえ?」だった。

「え」

予想外の言葉に思わず声が出る。
ビルに表示される電子時計を見てもまだ十五時を回ったばかりで、帰るにはまだ早いと感じた。

「え、なんで?早くない……?」
「だってお前今日変じゃん、調子悪いなら早く帰った方がいいだろ」
「変じゃないもん、それに調子だって悪くない」
「そう見えないけどな」


なにそれ。なんでそんなこと思うの?
確かに今日の私は変かもしれないけど、別に体調なんて悪くない。

本当は凰壮が早く帰りたくて適当なこと言ってるだけなんじゃないの?

そんな消極的な考えがどんどん脳内に広がってきて、ますます気持ちは下がっていく。
緊張とは違う意味で心臓が早く鼓動した。


「変じゃないって言うなら、いつもみたいに言い返して来いよブス」



ブツンって溜めこんでいた何かがキレたような気がした。



「うるさい、ばか!なんで、なんでそんなこと言うの!」

人目も気にせずほとんどヒステリックに声を荒げると、信号待ちをしていた数人が驚いたようにこちらを見てきたが、今の私にそんなこと気にする余裕などなかった。
凰壮は特に驚きもせず私をジッと見る。
私も睨むように凰壮を見た。

「確かに変だったかもしれないけど、それは楽しくデートしたかったからじゃん、今日くらいいつもみたいに喧嘩したくなかったからじゃん、お、凰壮に、可愛いって思って、もらいたかったからじゃん…なのに、知らない子と知らない話ばっかりしてさあ……なんなの凰壮…」

言ってるうちに虚しくなってきてどんどん声が小さくなっていった。
ほとんど一息で言い終わると、ああ結局喧嘩してしまった、と落ち込んでしまう。

凰壮の顔を見るのがつらくなって、顔を伏せた。

昨日から頑張ったことが全部くだらなく思えた。
ほぼ徹夜で選んだ服も普段隠す足も慣れない化粧も手間かけた髪の毛も、全部全部無意味でしかなくて、凰壮にとってはこんなことどうでもいいことだった。
一人で掲げた積極的に素直に可愛らしく女らしくなんてテーマも今思うと馬鹿げたものでしかない。
凰壮にとって私なんて、結局ブスで女らしくもない幼馴染でしかないのだ。


「(あ、泣く)」

ジワジワ目頭があつくなってきて、でもこんなところで泣くもんかと思って手の甲で乱暴に目をこすると上から「泣くのかよ」って声が降ってきた。
誰のせいだこの野郎。

「うるさい、泣かないし」

必死で悪態をつくと凰壮がせせら笑う。

「そーだな、泣いたら目腫れてブスに磨きがかかるもんな。ただでさえ今日腫れてんだから」

……ん?

凰壮の言葉に、フと疑問を抱く。

「………なんでそんなこと知ってんの…?」
「は?見りゃ分かんだろ」


……竜持は気付かなかったのになあ。


可愛いって思われたい女心には気付かないくせに、そんなことには気付くのか。
変なの。
凰壮、変。

そんな小さいことで、ついさっきまで沸騰していた怒りが急速に冷えていく気がした。

「夜遅くまで竜持とイチャイチャ電話なんかしてるから目が腫れるんだよ」
「(…なんで知ってるんだ……)…凰壮は、私のことに詳しいんだね……」

だが、怒りが冷えれば今度は気持ちが冷える。なんとも乙女心は忙しい。
凰壮のことを何も知らなかった情けない自分に対して、少し皮肉った。

しかしながら、そんな私の気持ちを知ってか知らずか凰壮はせせら笑うように言う。

「そんなことねえよ、ついこの前まで夢子が俺のこと好きだなんて知らなかったし」
「!?そ、そんなこと言わなくていいよ!」
「お前が俺に可愛いなんて思われたいがために今日一日様子が変だったなんて言われるまで気付かなかったしな」
「だから、言わなくていい!」

恥ずかしくて叫ぶように言葉を遮ろうとする私をからかうように、凰壮が笑った。
くそう、ムカつく。

ただ、からかうような凰壮の態度に、凰壮のことなんにも知らないとか言って落ち込んでいたのがくだらなく思えた。
やっぱり凰壮は私のことに詳しい。私の扱い方、よくわかってる。
なんだか、少し、嬉しい。

「……俺」
「ん?」

突然、凰壮が急に真面目な顔をするので、私もどこか改まってしまった。
なんだ?

「お前と喧嘩するの、結構楽しいぜ」
「は」
「だから別にいつも通りの夢子でいいし」
「……」
「いつも通りの夢子がいい」
「う、うん……」
「だから変に取り繕ってぶりっことかすんなよ、様子がおかしいと心配するじゃん」
「…は、はい」


凰壮がそんな風に思ってくれてたなんて知らなかった。
やっぱり私は凰壮のこと、全然知らないなあなんて思うけど、今までみたいに悪い気はしなかった。

「(可愛いって言ってもらえるより、幸せ、かも)」

思わず顔を二ヤつかせていると、凰壮が「何笑ってんだよ」と照れたように顔を逸らした。

ああ、また二ヤついちゃう。えへへ。


「でもよかったよ、下着見せるなんて馬鹿な真似しなくて」
これ以上切羽詰まったら血迷うところだったあ。と言って笑うと、凰壮が「は?」と驚いた顔をした。

「は?何それ?」
「えー?竜持が凰壮に下着見せればイチコロって言ってたの」
「…………お前、もういい加減竜持に相談するのやめろよ」
「なんで?」
「(……)聞きたいことあるなら俺に直接聞けよ…」

凰壮が不機嫌そうにそっぽを向いた。
なんだ急に。

「んー、じゃあさ、凰壮の好きなタイプ教えてよ」
「……とくにない」
「いや、ないことないでしょ。好きな女優とかいないの?」
「……いない」
「嘘つけ!よねうらりょーこは?」
「別に…」
「えー!なかまゆきは?」
「なんとも…」
「うえだあや!」
「思わない」
「えええ、皆可愛いじゃんか、嘘でしょ……」

凰壮理想高いのかなあ、なんて考えていたらまた凰壮が私を真っ直ぐ見てドキリとする。
なに?って聞いたら真面目な顔で一言。


「俺、ブス専だから」


なあ、ブスって言って笑う凰壮に、それ褒めてないからねとツッコむけど、やっぱり顔はニヤけてしまった。

















書けなかったのでここで言い訳しますが、凰壮はヒロインがカレーとかクレーンゲーム好きだったり集めてるマンガ把握してたり、ヒロインのことよおく見てる、っていうー。 あ、ヒロインと凰壮は学校違うって設定です。(2012.8.23)

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -