※高校生設定(ちょっとしたネタバレ有)




「竜持、コンタクトにしないの?」

私が問いかけると本に視線を落としていた竜持が顔をあげた。メガネ越しに気の強そうな鋭い目がしっかりと私を捉える。

放課後の図書室は人が少なく、図書委員のほかには私たちぐらいしか利用者がいない。少しくらいなら喋っても大丈夫だろうと、小声ながらも声を発した。私は小難しそうな本を広げて熱心に読みふけってる竜持の正面の席に座って、じいっと眺めていたのだけどそれもだんだん飽きてきてしまい、フと湧いた質問を投げかけた。

竜持は私の質問で思い出したかのように自分の眼鏡を中指でくいっと上げた。

「メガネ、嫌いですか?」

首を傾げるように質問しかえしてきた竜持は、普段との小憎たらしい態度とのギャップも合わさり子供みたいでなんだか可愛らしい。素でこういう仕草をするんだから、竜持は性質が悪いんだ。

「嫌いじゃないけど、コンタクトの方が便利だと思って。視野も広がるよ」
「別にメガネで不自由してませんから」
「しかも常にメガネかけてるの疲れない?」
「それはコンタクトしても一緒でしょう、異物を目に入れてるんですよ」
「……もしかして竜持、コンタクト入れるの怖いとか?」
「違いますよ。余計な手間を省きたいだけです」

そう言って竜持はまたメガネを中指であげた。この動作はもう癖になってるようで、一日に何回も見る。

「ほら、そうやってメガネあげるのもさあ、邪魔じゃない?」
「そうですね、怠惰な夢子さんにとってはたったメガネをあげるだけの動作も面倒くさいと感じるかもしれませんねえ」

そうやって馬鹿にしたように笑う竜持にムッとして、両手を伸ばしてメガネを取り上げる。竜持の目を傷つけないように至極ゆっくりとした動作で取り払ったが、竜持は抵抗することもなくただ目を瞑ってそれを受け入れた。

完全に竜持からメガネをはずすと、竜持はゆっくりと目を開ける。
今度はレンズを通さないありのままの竜持の目と目が合って、久しぶりに見る裸眼の竜持は子供のころを彷彿とさせどこか懐かしさを感じさせると同時に、見つめられたことで心臓がドキリと音を立てた。


いつもは斜に構えているくせに私を見つめる竜持の瞳は真っ直ぐで、これも竜持のギャップだなあ、と思った。


竜持はしばらく黙って私を見つめていたが、すぐにいつものようにニヤっとした笑みを見せて「ああ、やっぱりメガネはない方がいいかもしれませんねえ」と楽しそうに言った。

「え、どうして?」
「メガネがない方が、夢子さんが可愛く見えます」
「竜持くん、それは、ピントが合ってないからって意味でしょうか?」
「それに」
「無視か」


キスするときは、やっぱり邪魔ですからね。


そう言って竜持は、私が驚く間もなく触れるだけのキスをしてきて唇でチュっと可愛らしい音を立てた。


……ここ図書室なのに。
弱弱しく悪態をつく私に、竜持は「あれ?顔赤くないですかあ?」と言ってクスクス笑う。



メガネがあろうがなかろうが、竜持が小憎たらしいことに変わりなかった。



(まとめ:20140430)
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