夢子とは、もう四回セックスしている。もう、とは言ったものの、それを多いと言うべきか少ないと言うべきか、本当のところはわからない。回数なんかを女々しく覚えていて、しかもそれが片方の指で収まる内は、少ないと言えるかもしれない。ただ、夢子に片想いしていた頃のことを思えば、おれとしては「もう四回」だった。
 初めてのセックスは付き合って五ヶ月。おれの部屋だった。その日はボーダーの任務もなく、珍しく一緒に下校していた。話の流れで「二人で宿題を片付けようぜ」となり、自然とおれの部屋へ誘うこととなった。単純に夢子の家よりもおれの家のほうが近いからという、合理的でシンプルな理由からだったが、偶然にもその日は家族全員の帰宅が遅くなると前もって連絡されていた日だった。そのことを思い出したのは夢子を部屋に上げてからだったが、無邪気におれの部屋を見回す夢子を見て「まあ、何もねーだろ」と一瞬よぎった考えを追い払った。おれらはローテーブルにノートと教科書を広げて、数学をやっつけ始めた。
 それが一体どうして、セックスすることになったのか。たしか、隣で数式を解いている夢子の一生懸命な横顔が可愛くて、ちょっかいをかけたのがきっかけだったと思う。夢子の耳から落ちる髪で遊んでいたら、ふいに視線を向けられて「勉強しないの?」と言われた。
「そりゃするけどさー……」
「けど?」
「キスしてからでいい?」
 自分から質問しておいて、聞き終わる頃には首を傾けて既にキスの体制に入っていた。お互いの気配を直に感じる、触れるか触れないかの距離でいったん動きを止め夢子の反応を伺うと、ぎゅっと目を瞑ってくれたのでそのまま唇を重ねた。瞬間、夢子の身体が強張るのがわかった。この時のキスは実に八回目だったのだが、夢子はまだまだ慣れない様子だった。
「まだ慣れねーの?」
「え、へ、変かな」
「変じゃねーけどさ」
 慣れ親しんだテリトリーにいたせいだろうか、それとも自室に夢子がいるなんて現実感のない状況だったせいだろうか。とにかく、この時のおれは完全に気が大きくなっていたんだと思う。
「じゃあ、慣れるまでしようぜ」
 今になって考えると、よく恥ずかしげもなくこんなセリフを吐けたもんだ。本当は、いつまで経っても初々しいところが可愛いと思っていたし、おれ以外の誰ともこういうことをしたことがないんだと改めて実感できるので、早く慣れてほしいなんて気はさらさらなかった。夢子にキスする、ただの口実だった。
 最初は触れるだけの軽いものだったのが、角度を変えて何度もしていると、次第に熱っぽさを帯びていった。今までのおれらはデートの別れ際に一回、挨拶みたいにするだけだったので、時間をかけて何度もするのはこれが初めてだった。
 より明確に流れが変わったのは数分後だったか、はたまた十数分後だったか。突然夢子がおれの太腿に手を這わせてきた。指先がぬっと滑るように足の付け根辺りにまで伸びてきて、手のひら全体で撫で始める。予想していなかった展開に驚いて思わず眉を顰めて薄目を開けると、夢子は尚も強く目を瞑ったままだったが、いつの間にか身体が前のめりになっていた。後日夢子に尋ねたら、とにかくキスの方に意識がいっていたので手の方は無意識だったとのことだった。夢子、絶対むっつりだろ。
 おれはと言えば「おいおいマジかよ」とか「急にどうした?」とか「慣れねーどうこうの話はなんだったんだよ」とか「順応早すぎねえ?」といったもっともらしい考えを懸命に巡らしたが、結局「こんなの、誘ってんだろ」「あーくそ」「エロい」「触りてえ」なんて性欲百パーセントの頭の悪い叫びによって、思春期の儚い理性はかき消されてしまった。半年もおれを足踏みさせていたのは「不用意に手を出して、夢子に嫌われたくない」という想いだったが、夢子自身がこんななので、もうどうにでもなっちまえ、という気持ちにシフトしていた。
 夢子が息を吸うために口を開けた不意をつき、初めて舌を入れた。もう夢子の身体は強張ってなんかなく、躊躇いがちではあるが受け入れてくれた。時々溢れる「ふ」とか「ん」などの夢子の吐息を聞きながら、ぎこちなくはあるもののむさぼるようにキスを繰り返すので、めちゃくちゃキモチ良かった。思考はどんどん短絡的になっていき、「ちょっとくらい、触ってもいいよな?」と期待を込めて夢子の腰に触れると、それを合図とするかのように、夢子がキスを続けたままおれの胡座の上に移動してきた。さらに、両腕をおれの首に巻きつけてきて、身体を密着させる。いつか見た対面座位のAVを思い出して、興奮した。押し付けられる上半身、夢子の胸の感触は、何にも形容し難かく、ただただ「柔けえ」とか「あー、エッロ」などの、むき出しの感想の占める割合が増えていく。そしていつの間にか、夢子の方が夢中になって舌を絡ませてきていた。
「(前言撤回。慣れてくれるのも悪くねえな……)」
 それからおれに跨る夢子の太腿を、左右それぞれ同時に、付け根に向かって撫であげる。この辺からおれも、夢子が抵抗する素振りを見せるどころかどんどん積極的になるので、いちいち反応を伺うなんてことをしなくなっていた。片方の手を尻に移動させると、首に回された夢子の腕に力が入った。そのまま割れ目の際どい位置に人差し指だけを忍ばせると夢子の腰が静かに揺れて、下半身をおれに擦り付けるような動きをする。そんな夢子を見て「あー、これ、今日セックスするな」と、ぼんやりながらも確信した。ゴムは、男友達にもらった物が財布の中に入っていた。ちなみに、夢子はこの時のことを無意識で覚えてないと言っていた。絶対にむっつりだろ。
 ふと、キスに夢中だった夢子が、おずおずと唇を離した。どっちのものかわからない唾液で夢子の唇が濡れそぼっていたのを見て、思わず喉がゴクンと鳴ってしまった。夢子は息のかかる距離で「出水くん、なんか、かたい……?」と、小さく呟いた。もちろんおれは、言うまでもなく、めちゃくちゃ勃起していた。
「そりゃー……硬くもなるだろ」
「……」
「引いてんじゃねーか」
「や、あの……」
 今日、エッチ、するの? と、夢子が瑞々しい膜の張る瞳で見つめながら尋ねてくるので「したい」と答えた。少し食い気味になってしまったことを、今も地味に後悔している。
「夢子は? いや?」
「……」
 夢子は控えめに目を泳がせたが、意を決したようにぎゅうと抱きついてきた。そして、おれの耳元に口を寄せて「したい」と囁くように言った。夢子は意図してなかっただろうけど、結果的に吐息が耳にかかって背中がゾクっとした。
 夢子はやっぱり可愛いし、思いの外エロいしで、鈍くなっていく思考の隅で「あー好きだ」と改めて思った。
 それからのことは、正直あんまり覚えてねー。ベッドに移動して、夢子の制服を半端に脱がせて、触りたいところを触った。ツンと上を向いた乳首を弄った時は特に、夢子の吐息が甘ったるく、大きくなった。おれも夢子も、めちゃくちゃ盛り上がっていたと思う。問題は挿入時だった。
 おれも夢子もセックスは初めてだったので、なかなかうまく入らなかった。夢子が痛がるので断念しようとしたが、止めてほしくないと懇願されて、結局、最後まですることになった。おれはすげー気持ちよかったけど、夢子はやっぱり痛そうだった。セックスが終わる頃には、もうキスの回数はわからなくなっていた。
 それからそれなりの期間を経て、二回、三回、四回とおれらは関係を深めていったわけだ。夢子は初めの頃よりは平気そうに見えたが、まだ少し痛そうだった。

 そして今、五回目のセックス真っ最中。いつもの正常位で夢子を見下ろしながら腰を動かすと、どちらのものかわからない水音がぐちゅ、と鼓膜に響く。夢子は恥ずかしいとでも言うように両腕で顔を隠しながら、唇を噛んで声を漏らさないようにしているが、「どう考えてもセックスしてます」みたいな喘ぎ声を時々漏らしていた。服なんて一枚も着てなくて、もっと他に恥ずかしがるところがあるだろうに。腰を動かすたびに揺れる夢子の胸の先端は、ここに至るまでの行為により、おれの唾液でつやつやしていた。
 今日は初めて、夢子の部屋にあがらせてもらった。普段は家族がいるからおれの部屋で会うことが多かったが、「お母さんたち泊まりで、誰も帰ってこないの」と夢子の方から誘ってきたので、休日の午前中からお邪魔させてもらうことになったのだ。姉ちゃんの部屋には何度も入ったことはあるが、同年代の、しかも彼女の部屋に入るのは初めてだったので緊張した。
 二階にある夢子の部屋は、レトロ調の白い家具と、淡い薄緑のカーテン、白のベッドカバーなんかで彩られていた。ベッド脇に置いてある年季の入ったテディベアや花柄のクッションなんかが、夢子らしいと思う。今はそんな可愛らしいテディベアに見守られながら、昼間っからセックスしているわけだが。
「あー……夢子、イく」
 そう呟いてすぐ、夢子の中でゴム越しに射精する。ずる、と引き抜くと、夢子は「ぁん」と息を吐いた。今日の夢子はあんまり痛がっていなかった、というか、気持ちよさそうに見えた。実際はわかんねーけど。ゴムを縛ってから「やべ、これどこに捨てよう」と固まっていると、復活したらしい夢子が「ゴミ箱でいいよ」と察したように言う。
「いやいや、バレたらどうすんだよ」
 バレたら、というのはこの場合、夢子の親のことだ。バレたら困るようなことしてんじゃねーよ、というツッコミは置いておいて。
「ナプキンに包んで捨てたら大丈夫なんだって。友達が言ってた。あとで捨てておくから」
「ああ、そう……」
 夢子、友達とそういう話するんだ。
 おれとのことをどこまで話しているのか少し気になったが、聞くのは止めておいた。念のためティッシュに包んで、ゴムをゴミ箱に捨てる。
 ベッドに戻ると、夢子の隣に横になって布団を被る。背中から夢子を抱き締めると、身体のぬくさにちょっと眠くなった。
「……出水くん」
「んー……?」
「あのね、聞きたいことがあるんだけど……」
「聞きたいこと?」
 言いにくいことなのだろうか、夢子は布団の中でもぞもぞと背中を丸める。間が長いので、おれの方が緊張してきてしまった。夢子の腹に回した手が汗をかく。
「言えって」
「……出水くんって、その、あの……ま、満足してる?」
「満足?」
 いまいち夢子の問いかけが遠回しだったので、何を聞かれているのかわからなかった。背中越しの夢子の表情は見えないが、白い肌がほんのり赤く染まっている。
「あの、だから、その……私との、えっと……エッチ、に、満足してる? みたいな……」
「……はあ?」
 斜め上の質問に、大きめの声量になってしまった。夢子、さっきおれが出したの見てなかったのかよ。
「だ、だって! 出水くん、正常位? 以外しないし」
「なっ……」
「友達の彼氏はみんな、他の……体位とかしたがるって言ってて……でも、出水くん、『こういうことしたい』とか、何も言わないから、その……」
 なんつー話をしてんだよ。あと、夢子に余計なこと吹き込むな。と、クラスメイトの女子数人の顔を思い浮かべながら、声には出さずに非難した。夢子は相当恥ずかしかったのか、先ほどよりもずっと肌が赤くなっていた。
「いやー……そりゃあ、したくないって言ったら嘘になるけどさー」
 もちろん、体位だけの話じゃなくて。健全な男子高校生だし、エロいことに興味がないわけじゃない。何より、夢子のいろんな顔や反応が見たい。二人しか知らないことをして、もっとエロくなってほしいという気持ちもある。
 ただ、どうしてもおれの中では、初めてのセックスが引っかかっていた。夢子が止めてほしくないと言ったから最後までしたが、結局泣かせてしまった。おれが気持ち良くなっているかたわら、夢子は痛みに耐えていたわけだ。あの時の夢子の泣き顔を思い出すと、どうしても「もっとエロいことして楽しもうぜ!」なんて気分にはいつまで経ってもなれなかった。おれは、夢子が好きだし。エロいこともしたいけど、それはあくまで夢子が好きだからで、泣かせたいわけじゃない。嫌われたくもないし。もう、五回もセックスしちゃったけど。
 というようなことをなんて伝えようかと考えていると、夢子が身体を回転させておれと向かい合う形になった。夢子が下からおれを見上げて、じっと見つめてくる。おれの言葉の続きを促しているんだろう。可愛いと思う反面、少したじろいでしまった。
「だって夢子、まだ痛いだろ?」
「もうほとんど痛くないよ。今日とか、その、気持ちよかったし」
 気持ちよかったのか。
「だから、あの、えっとね……」
 夢子が、両手で顔を隠す。
「出水くんのしたいことなら、全部して欲しい……」
 あー……、一回出しててよかった。


「ん……ふあ、はぁ」
 夢子に跨って舌を絡ませるキスをしながら、片方の手で乳首を摘み、片方の手で胸を下から持ち上げるように揉む。何度セックスしても、この柔らかさには毎回感動してしまう。
 初めての時からそうだったが、夢子はキスをするとすぐトロトロになる。服を脱がすときはしおらしいのに、キスしている内にどんどん夢子のほうが大胆になっていく。そしてこれは三回目以降に気づいたことだが、キスしながら胸を弄られるのが特に好きらしい。もっとして欲しいとでも言うみたいに、背中を浮かせて胸を突き出してくるのが夢子の癖だった。
 今日はおれのしたいことを……という話だったが、夢子にも気持ち良くなってもらわないと意味がないのでお望み通り胸を攻めてやる。それに、胸を弄るのはおれだって好きだ。言わないけど。
 キスをしていた唇を離すと、二人の舌を繋ぐ唾液がツと短い糸になって途切れて消えた。夢子の唇がテロテロになって、めちゃくちゃエロい。夢子は名残惜しそうにおれの唇を見ていたが、すぐに乳首を舐めてやると、立て膝にしていた足をビクンと跳ねさせた。
「夢子、気持ちいー?」
 今までこんなこと聞いたことはなかったが、五回目のセックスは気持ちよかったと申告を受けたので、おれは調子に乗っている。夢子は「んん」とか「ふうん」とか意味を持たない言葉ばっかりなので、返事を催促するように乳首を舌で弾いたり、吸ってやったりする。
「や、やら、いずみくん、いず、ぁん」
「(おいおい、マジかよ)」
 呂律が回っていない夢子は、うわ言のようにおれの名前を繰り返す。おそらく無意識だろうけど、胸に吸い付くおれの頭を必死に両手で撫で回してきて、ぐいぐい背中を浮かせて胸を押し付けてくる。まるでもっとして欲しいとねだられているようで、おれはと言えばめちゃくちゃ興奮してしまい、もともと勃っていたものが大きくなった気がした。今日の夢子は、いつもよりもエロい。
 ふと、おれの腰周りに何かが当たる感覚がした。視線だけ向けると、夢子が太腿を擦り付けてきていた。触って欲しいってことだろうなとすぐに気づく。
「夢子、後ろ向いて」
 頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、言われた通り後ろを向いた夢子をうつ伏せにさせると、腰を持ち上げて尻を突き出させる格好にさせる。濡れそぼっている入り口が丸見えになると、まだ触ってないのに太腿まで愛液が垂れているし、ヒクついていたので思わず「はは、すっげ」と笑ってしまった。もう何回か見ているけど、この角度からは初めてだったし、いつもと見え方が違うので思わずまじまじと見てしまう。おれが中々触らないので、焦らされていると思ったのだろうか、夢子が腰を振りながら「出水くぅん」と呼んだ。おいおい、本当に少し前まで処女だったのかよ。
「わりーわりー」
「ふ、んん! はぁ、あ、や!」
 しれっと硬くなったクリトリスに指の腹で触れると、夢子の内腿が震えて腰が揺れる。すぐに触ってもらえると思ってなかったのか、不意を突かれたみたいでめちゃくちゃ大きな声を出していた。家に誰もいないからって言って、外に声が漏れるんじゃないかとヒヤヒヤする。「夢子、声」と短く言うと、夢子は枕に顔を埋めてフーフーと荒く呼吸をしたが、その姿がエロすぎたのでおれも興奮した。
「夢子、エロすぎ。後ろからされるの、そんなに好きかよ?」
「ふう、ふうん、んん」
 肯定も否定もせず、夢子は喘いでばっかりだった。夢子のあそこから垂れる愛液が、おれの手首まで伝ってくる。指を割れ目に這わせて数回擦ってからゆっくり差し込むと、簡単に呑み込んでしまった。中指と薬指の二本を出し入れさせると、可愛らしい夢子の部屋に似つかわしくない卑猥な濁音が低く鳴る。夢子は、枕を噛みながら喘いでいるが、もう片方の手でクリトリスを摘まんでやると、身体を大きくくねらせて枕から顔がずり下がっていく。重力によって垂れ下がった胸に、クリトリスを弄っていた方の手を伸ばす。夢子の好きな乳首をひっかいてやると、夢子の声は明らかに喜びを含んだ。
「はあん、ああ、やら、やあ」
 先ほどまで枕に吸収されてくぐもってしまっていた声が、甘ったるい声に戻って、再びおれの頭にガンガン響く。やっぱり、ちゃんと聞こえていた方がいいわ。
 夢子のあそこから指を抜くと、夢子が「ふぇ?」と間抜けな声を漏らしながらこちらを見てきた。そんな夢子はお構いなしに、先ほどまで指を出し入れしていた場所へ向けて、顔を近づけて、舌を突き出す。おれが何をするつもりなのか気付いたようで、夢子は「まっ」と静止をかけるような音を発したが、少し遅かった。
「やあ、舐め、だっ、ふうん、ああん」
 あー、やべ。これ、ずっと舐めてられるわ。と、夢子の良すぎる反応を聞きながら舌を割り込ませて擦らせる。指で触るよりも熱い気がして、頭が沸騰するんじゃないかと思った。ぢゅ、と音を立てて夢子の愛液を吸いながら、太腿を掴んで逃げられないようにする。クリトリスを撫でてやると、入り口が大きくヒクついた。勃起しすぎて、痛え。絶え間なく溢れてくるので、舌で吸い上げるのに必死になっていると、夢子の喘ぎ声が泣き声みたいみたいに変わった。
「え、夢子、大丈夫か?」
「ひっく……出水く、も、むり……」
 やべー、さすがに好き勝手やりすぎたか? と思って一瞬青ざめたが、夢子は「挿れてほしい」と言って、腰をより一層突き出し、強請るように揺らした。視覚のインパクトが強すぎて、頭をメテオラで吹っ飛ばされた衝撃に、思わず手で目を覆う。
「んじゃー、挿れるな」
 セックスは六回目なので、いつの間にかゴムをつけるのは手慣れてしまった。素早くつけて、後ろから夢子のそこに擦り付けると、ゆっくり押し込んだ。
「いずみく、んう、きもちい、すき、すきなの、んん」
 夢子の腰を持って自身を打ち付けると、夢子が背中をしならせる。もう夢子は、自分が何を言ってんのかわかってないみたいに、おれの名前とあられもない言葉を繰り返していた。止めどなく溢れる夢子の愛液と喘ぎ声を感じながら、ぼんやりと片想いしていた頃を思い出す。
 夢子は控えめな性格で、どちらかと言えば大人しいし、ちょっと天然が入ってる。よく、女子の間でいじられていた。言葉遣いは柔らかく、おれが何を言っても笑ってくれる、なんというか、女子らしい女子だ。あんまり男子とは絡まないタイプだから、特にきっかけもなくて、ずっと話しかけられないまましばらく片想いをしていた。
 それが今、「エロいことなんてなんも知りません」みたいなあどけない顔しているのに、こんな真昼間から、おれに後ろから犯されている。しかも、めちゃくちゃドロドロになって、おれのものをなんなく受け入れている。白いベッドカバーがシミだらけになって可哀想だった。夢子、今日この布団で寝んのかな。この六回目のセックスを、思い出したりするのだろうか。夢子はむっつりだから、オナニーするかもしれない。女子もオナニーするのかは知らねえけど。今度聞いてみよ。
 バカになるような気持ちよさと暴力的な絵面に、おれの思考も相当単細胞になっていた。かわいい、きもちいい、えっろ、やらしーな、はあ、すきだ。同じ言葉が頭の中でぐるぐる巡っていく。今のおれ、最高に頭が悪い。
「いずみく、な、なんか、きちゃ」
「おー、イけイけ」
 夢子の中が、ビクビクと痙攣した。初めて中イキしてくれたので、おれは目の前がチカチカする。
「はぁ、いずみくん、まって、今なんか、変……」
「いや、無理。わりーけど、もう少し付き合ってくれ」
 夢子に覆いかぶさると、肌が重なって温かい。中の締まりとは違った気持ち良さがあった。

 早く、セックスの数なんてわかんなくなればいい。あと何回身体を重ねたら、そうなれるだろうか。快感が登り詰めていく中で、「とりあえず、ずっと一緒にいられたらいいな」なんてことを考えた。

(2021.05.23)

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