残された3人の中で、一番に我に返ったイワンが、いまだに呆けた顔をしているボリスの背中をばしりと叩く。

「いてえな!何すんだよ」
「ばか!お前!さっさとユーリのフォローしてこい」

そう言われて、はっと気づいたボリスは、急いでユーリの部屋へと向かったのだった。


−コンコン

「ユーリ?入るぞ?」

そっとドアを開けて部屋に入ると、ボリスはベッドに腰掛けるユーリの隣に腰を下ろした。

「火渡だってな、なんだかんだ心配してるんだよ」

細い肩を抱き寄せて言うと、ユーリは力なく凭れかかって呟いた。

「俺は、そんなに痛々しいか?」

ボリスは黙って、赤い髪を撫でる。

「見ていられないほどか?」

そして雪のように白いおでこに唇を寄せた後、抱いた肩に力を込めてこう言った。

「なあ、ユーリ。
お前一人が気を張らなくったっていいんだよ。
泣きたかったらいつでも泣いたらいい」

「…っ!誰が泣いたりなんか!」

「言うと思ったぜ。
それにな、俺たちにはまだやらなきゃなんないことが山ほどある。

落ち込んでる暇、ないんじゃねーの?」

それを聞いたユーリは、おもむろにボリスに抱きついてTシャツの胸に顔をうずめながらこう言った。

「…お前に慰められるなんて屈辱だ」

「うわ、ひでえ言いよう。
でもま、後悔するより、先を見ようぜ」

***

翌朝、朝食の席に現れたユーリは、真っすぐにカイの方に向かうと、おもむろにその胸倉を掴み、挑戦的な笑みで尋ねる。

「誰が辛気くさい面をしてるって?」

昨日までとはうって変わって、何か吹っ切れたような堂々とした態度に、カイは心なしか、表情を穏やかにして、満足げな様子でフンと鼻を鳴らした。





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