カイが、少なくとも他の奴よりは、俺に心を許してくれていることは、純粋にうれしいことで、出来ればもっと頼ってほしいとも思う。

「おーい。
寝る前に着替え貸すから、制服かけとけよ」

気持ちよく眠りかけているところに申し訳ないが、雨で湿ったブレザーの肩を揺すって声をかける。

普段からは見考えられないほど緩慢な動作で起き上ったカイは、のろのろと着替え始め、その隙に来客用の布団を用意していると、バツが悪そうな顔をして「すまない」と言って近寄ってきた。

俺の部屋着から覗く手首や足首は、相変わらずびっくりするほど白くて、また一回り華奢になったみたいだ。

心配されるの、嫌がるってわかってるから、そこには触れずに話しかける。

「まーまー、
気にすんなって。
疲れてんなら、とりあえず寝とけ」

「ああ…
そうさせてもらう」

「おー。あれだったら飯食ってけば?
お前がいるとじっちゃんも喜ぶし」

「考えさせてくれ…」

うちの布団に潜り込みながら答えるカイに、「ゆっくりやすめよー」と言い残して道場を後にした。

さあ、俺は宿題でもやって、わからない所を見つけておこう。
勉強教えて、という口実でカイを少しでも引き留めるために。


しばらくして道場に戻ると、カイはまだ眠っていた。

よっぽど深い眠りなのか、俺が近寄っても全く起きる様子がない。

枕の横に腰を下ろして、端正な寝顔を見つめる。
白い肌、長い睫毛、筋の通った鼻、どれをとっても作り物のように美しいけれど、穏やかな寝息が、俺を安心させてくれる。

「いつでも泊りに来てくれていいんだぜ」

そう言って灰色の髪を撫でる。
それでも起きない彼のおでこを触って、やまない雨の音を聞きながら、俺はまた飽きもせずにその寝顔を眺めていたのだった。



[*prev] [next#]


→TOP


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -