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慣れるまでは、と探りながらだった動きが、遠慮しらずの激しいものへと変わるに従って、ユーリの瞳を覆う水膜が厚みを増す。
大きな瞳を余すことなく潤すそれは、涙と言うにはあまりに能動的で。
凍った湖の、ひときわ清い底の方のような青の瞳が本能の熱で溶かされる様はあまりに美しい。
ユーリを初めて開いたあの人も、これを見たのだろうか。
いや、あの人は当然知っているのだろう。
ユーリの身体は、ユーリ自身の物すらなく、あの人のものだったのだから。
それは俺も同じだけれど。
すべてはあの人のものだったのである。
だから、自ら背を向けた今でさえ、俺たちにとって、あの人の存在はあまりに大きい。
憎んでいようと、慕っていようと、根底にあるのは、強い強いむきだしの執着心のように思える。
それを憎しみという形に整えて、なんとかバランスをとっているに過ぎないのだ。
だから、もし、もし万が一、あの人が本気になって、戻っておいで、私には君が必要なのだよ、なんて言って腕を広げてきたりしたら、
俺たちは、またよく躾られた柔順ではしたない犬に戻り、跪いて舌を差し出すかもしれないし、自ら喜んで脚を広げるかもしれない。
決して屈しない、なんてことは言えないのである。
そんなことが、熱に浮かされた頭にやけに冷静に過ぎっていった。
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