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それが、約2カ月前の出来事である。

お互い干渉しないつもりであったはずが、いつのまにやら、共用スペースで一緒に過ごすことも自然になって、出会った日に二人で作った法律は、既に跡形もなくなっている。

きっかけは、ユーリが淹れたコーヒーや紅茶を、一緒に飲むようになったことだったと思う。
同じ食卓に就いて、気がついたのだ。口数は少ないながらも、テンポよく進む会話が、その間のささいな沈黙が、ちっとも不快じゃないことに。

そうして、たまに二人でお茶を飲むようになり、それがほぼ毎日になるころには、朝食や夕食をともにすることも当たり前になって、お互いについてわかることが増えて、惹かれあう気持ちも強くなって。

それは、コーヒーにミルクが溶けて混ざり合うような、ゆるい坂道を転がっていくような、もしくはパズルのピースが合うような、結局そのどれでもないような不思議な感覚だったけれど、好きだという言葉よりも先に、自然に触れあった唇から伝わる気持ちの確かさが、全てだった。

だから、そのさきのあれもこれも、至極当然で。


「カイ」
名前を呼んでも反応はなく、二つ並んだ枕のうちのひとつに沈んだままの頭を撫でると、ようやくむき出しの白い肩が動いた。

「もう朝だ。」
ユーリがそう言うと、カイは寝惚けたままのそのそと起き上る。

食卓に向かう彼女を迎えるユーリの両手には、同じ飲み物の入ったグラス。
そして今日も二人の朝がくる。

癖の強い二人であるので、いつも穏やかに過ごせているなんて口が裂けても言えないが、お互いなかなかうまくやれていると思っている。

そしてこれからも、うまくやっていけると思う。




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