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それでも、わたしたちは、あのころとはずいぶん変われていたみたいだ。

我先にと逃げていく、男たちの中で最後に残った哀れなひとりを掴み上げたボリスに、もういい、やめろ、とわたしが叫ぶのと、ボリスがそいつを突き飛ばして逃がしてやるのがほぼ同時だったから。

もしボリスがあの頃のままならば、男たちはひとり残らず血祭りにあげられていたことだろう。

そもそも、わたしもこんなに簡単に捕まることなどなかったのかもしれない。

そう思うと悔しいけれど、上着を掛けたままのわたしを背負って、ホテルまでの道を歩いているこいつの背中は、悪くない。

「心配掛けるな。ばか」

そう言ったっきりめずらしく寡黙になったこいつは、きっと少し怒っているのだろう。

すまなかった、と言ったら大袈裟に驚かれたのは心外だが。

さっきの余韻で、いやに火照る身体を持て余していては、怒る気にもなれない。

わたしは、盛りのついたのら猫のように、目の前の身体にべったりと擦り寄って、銀の短髪から覗く首すじを緩く噛んで舌を這わせて、それを、強請ったのである。


わたしから求めたことに最初は少し驚いていたボリスだが、行為自体はやはり満更でもないらしい。

「ユーリからなんて、珍しいな」

そういって浮ついた様子で服を脱がしにかかる。

そもそも、わたしが淡泊なのではなく、いつもボリスが先に手を出すから、わたしから求める機会がなかっただけのことなのだが。

しまりのない顔に戻ってしまったことに安堵と失望を感じたのは一瞬で、ボリスはわたしを見つめながら熱を孕んだ特別な表情になる。

「ユーリ」

正面向いて抱き合ったまま、喉もとに唇を寄せ、名前を囁かれたら頭がくらくらと働かなくなって。

汗ばんだ猫背、銀色の短髪の頭を、火照った胸元に、ぎゅう、と抱きこんで、

わたしはそれに溺れていったのである。


心のない人形だとか、

氷のように冷たいだとか、

そんなことを誰に言われようと、たいして気にはならないけれど。

そんなばかな話が本当ならば、私はもうとっくの昔に、溶けて溶かされて水になって、形を失っているはずだ。


だって、

おまえも、わたしも

こんなに

あつい。





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