気持ちは通じあってるはずなのに、君は何に怯えてるのだろう

「…カイ」

名前を呼べば、深紅の瞳が俺を映して。

相変わらず、見とれてしまうくらい強い光を宿すそこには、確かに俺を受け入れてくれる優しさがあるのに。

がさつな俺でもわかるくらいはっきりと、俺を思ってくれているのに。

なあ、なのにどうして、俺の手が頬に触れた途端、お前はまるで恐怖で足がすくむみたいに、身体を強張らせてしまうんだ?
キスだとか、その先だとか、そういう行為自体を怖がるようなお前じゃないだろう?

だって、お前を怯えさせるのは、いつだって過去の記憶。

「なあ、カイ?」

臥せた瞳は、君の強さを揺るがすみたいで。

「お前は、何がそんなに怖いんだ?」

なんでもこうして聞かずにはいられない俺は、なんて考えなしで愚かなのだろう。

いつだってそうだ。
お前は俺に言いたくないことがたくさんあるのに、俺は何でもちゃんと聞かないとわからない。

お前は俺に弱いところを見せたくなくて、俺はお前の弱いところも見せて欲しくて、ああなんで、こんなにも強い気持ちで思いあっているのに、俺たちはいつも折り合いがつかなくて苦しいのだろう。

それでも、それでも俺の気持ちは揺るがない。

「どんなことを知ったって、俺はお前の強さを認めていられるから」

筋肉はしっかり付いているのに、やけに細い肩を強く掴んでそう言えば、カイは、半ば自棄になったような勢いで顔を上げる。

睨みつけるような瞳は、俺を映した途端、不安定な脆さを垣間見せて。

それでも必死で強くあろうとするような、痛々しい声で、こう言うのだった。

「俺は、俺はお前に似合う清らかな身体じゃないんだ」

ばかな俺でも、予想できていた答えに、返す言葉はただ一つ。

「関係ないよ、そんなこと。
どんなお前でも、好きだよ」

「簡単に言ってくれるな!

あんな…あんな浅ましいところを見られてしまったら、お前を汚してしまったら、俺はもう堂々とお前と対峙することができなくなる…!」

叫ぶように言った言葉はだんだんと力をなくして。

滲むような声で付け加える。

「そんなことになれば、俺は生きていく意味がない。

俺は、お前のライバルでいたいんだ」





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