【SS】君は美し
2013/04/11 01:21

昨日触れたばかりの白い腕に、大小無数の傷が付く。
帰ってきた時には既にぼろぼろだったというのに。

それでも、何度だって、カイは立ち上がるのだ。

怖いものなど何もないかのように。

本当は、恐れも、迷いも、山ほど抱えているだろうに。
いつだって凛として、スタジアムに立つお前を見ると、

壮絶だ、と思う。
気迫が違うとそう思う。


「カイーー!!!頑張れー!!」

大きな声で名前を呼んで、声援を送る。
この声は、いったいどのくらいお前に届いてるんだろうな。

たった一つでも届いて欲しい。
そして少しでも、戦うお前に寄り添えたらいい。

そう願う限り、声を上げずにはいられないのだ。

床に打ちつけられる身体、苦しそうな声。

それでも、お前がまた立ち上がれば、俺は、いつものように明るい顔でいられる。

勝って戻ってくることを疑っていないからだ。

自分でもよくわからなくなる程、本能的に確信しているのだ。

傷ついて、傷ついて、
痛々しい身体と、

それでも折れない強い瞳。


戦うお前は、

いつだって勝ちに拘るお前は、

真っすぐで、時折脆く不安定で、

そして、とても美しい。

ああ、


君は美し




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