【SS】WINNER and LOSER
2012/08/11 20:20
特別な気持ちで、心が繋がったなら、
出会った頃は、知らなかった方法で、
身体も、繋りたい。
それはひどく自然なことだけれど、
“それ”が済んだら、お前にとっての私は、
“ただの女”になってしまう?
【WINNER and LOSER】
朝が、きてしまった。
太陽の光が、夜の内には、熱に溺れて気付かなかった不安を暴く。
誰よりも好きな人に愛されたのに、どうして私はこんな気持ちになっているのだろう。
その理由は、カイ自身が一番知っていることであった。
溜め息を吐いて、カイはそっと上体を起した。
普段はちょっとやそっとじゃ起きないタカオも、今朝ばかりはベッドの揺れで目を覚ました。
「カイ…?」
おはよ、と言おうしたけれど、開いた瞼が彼女を写した途端、何も言えなくなった。
昨晩撫で尽くした滑らかな肌が、朝の光の下に露になって、
よく知ったはずの横顔は、憂いを帯びてひどく色っぽい。
タカオは、今更ながら自分の顔が熱を帯びるのを感じた。
「どうした?」
妙な沈黙に違和感を感じたのであろう、カイが尋ねる。
深紅の瞳が自分を映すと、タカオは思わず目を見開いた。
「あー!!もう!!!」
突然叫んだかと思えば、自分の腰に腕を回して顔を埋めたタカオに、カイは驚く。
どうしたんだ、と言って頭を撫でると、タカオが口を開いた。
「男は一生、女に勝てない生き物なんだって。
アダムとイブの時から決まってんだぜ。」
「なんだ。それは」
話の筋が読めない。
「わかんねー。
何か兄ちゃんが言ってた。」
「おい、仁の言うことを真にうけるな」
ひどい言い様である。
「でもその通りだと思うわー。」
ちくしょー勝てねえのかー、と呟きながら腕の力を強めるタカオを、半ば呆れながら見ていると、彼が急に身体を起して言う。
「あ!
でもバトルでは負けねえからな!」
今度は、カイが目を見開く番だった。
自分がいらぬ心配をしていたと気付いて。
泣きそうなくらいの幸せを、いつものポーカーフェイスで隠して、わざと高飛車に返してみる。
「ふん!どうだか
時間の問題だ」
「かわいくねーなー」
言葉とは裏腹に、自分に向けられた眩しい笑顔に、敵わないな、とカイは思ったのだった。
さて、勝ったのはどっち?
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