俺の片想いの相手は片想いをしている。
勿論、片想いの相手は俺を好きなわけではない。
「藤原君、文化祭の案だけど…」
クソめんどくさい生徒会に入ったのも、全て彼女との接点をつくるため。
そしてなんとか、恋愛相談をされる仲にまで発展させた。
「照れた顔も本当に美しいの!
真っ赤っていうより、ほんのりみたいな!?」
好きな人の話になると、彼女は生徒会長の時とはまるで別人になる。
俺はそんな会長が好きだ。
「ゆつか、ちょっといい?」
会議室の扉からひょっこりと顔を覗かせていたのは、彼女の好きな人だった。
「は、はイっ」
好きな人と話をするどころか、顔を合わせるだけでしゃべり方がカタコトになる。
そんなところも可愛らしいところだ。
「今日、お母さんが―…」
「わざわざ此方までご足労を…ありがとうございました。お姉様」
彼女の好きな人は血の繋がった実の姉だ。
そんな歪んだ異常な愛情を実の姉に捧げる彼女が愛らしくて、とても愛しい。
他の誰でもない、彼女が他の誰でもない実の姉に恋している姿が好きなのだ。
他の奴に恋をする彼女は、彼女じゃない。
だから、キミはずっとその歪んだ愛情を姉に向けていてくれ。
僕自身の為にも。
決して、他の誰かをその瞳で映さないでくれ。
例えそれが僕だったとしても、僕はそれを拒むだろう。
彼女は姉に恋してこそ、彼女なのだから。
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