僕の幼なじみはとびきり可愛い。
ふわふわした蜂蜜色の髪に、水色の大きな瞳と形の良い唇が納められたとても小さい顔。
他の子とは違い、飾ったりしない彼女はとても人気がある。
よく、天使はとびきり可愛くて、砂糖菓子みたいなのを想像する奴をよく見かけるけど、実際はそんなことはない。
見慣れているからそう思うだけなのかもしれないけれど、本当にそう思う。
天使だって、化粧はするし、オシャレだってする。
香水の匂いをプンプンさせてる奴もいる。
人と対して変わらないんだ、僕らだって。
でも、彼女は違う。
天使に性別はないのだけれど、人の見た目的には女の子だから、彼女と解釈している。
彼女こそ正真正銘、天使だ。
「キラ、買い物に行きたいから、一緒に行こう?」
彼女の正に鈴を転がしたような声が耳に、鼓膜に、脳裏に心地よく響く。
振り返ると、にっこりと笑みを浮かべた彼女がそこにいた。
「いいよ。君の頼みなら」
「ありがとう。キラは優しいね」
そんなことない、君の方が優しい。そう言えば、彼女はいつものように照れたように頬を染め、謙遜する。ああ、なんて美しく、愛らしいんだろう。
普段はコロコロ変わる表情や声が愛らしいのだが、時折見せる憂いの表情が美しくて仕方ない。
目を伏せ、頬にその長い睫毛の影が落ち、口をきゅっ、と結んだ表情なんかは特に。
「僕が荷物を持つよ」
こんな細い腕に荷物を持たせるわけにはいかないと思い、そっと彼女の手にあった荷物を持つ。
随分と重さを感じて、自分が持ってよかったと実感する。
「ありがとう、キラ」
ああ、彼女の笑みが眩しい。
君はどうしてこんなにも素敵なんだ。
「ここまででいいわ。ありがとう、キラ。また、頼んでもいいかしら」
「勿論だよ、君の為ならなんでもするよ」
彼女に微笑まれると、自分が自分でなくなるような、心地いい感覚になる。
僕を惹き付けて止まないその微笑み。
「嬉しい。じゃあ、またね」
僕が持っていた荷物を抱えて、飛んでいく彼女をいつまでもずっと見ていた。
真っ白な羽が真っ白な世界に溶け込んでいくのをずっと眺めていた。
ひらり、と一枚の羽が舞い落ちた。
同時に羽を畳み、しまい込む少女の姿があった。
手には大きな荷物を幾つも抱えて。
「ふう…」
「今日は何を買ってきたの? シャンティ」
彼女の背後には髪をまとめ上げた女と髪の長い男が立っていた。
「違うよ、マリオン。買ったんじゃなくて、貰ったんだろ? シャンティ」
それを聞いた少女は先程とは違う笑みを浮かべた。
幸せそうに目を細めていた。
「そうよ。全部、貰ったの」
「可哀想な奴だよな、あいつも」
「ホントに。まさか自分の好きな奴が自分を利用しているなんて、思いもしないだろうに」
「それ、あいつに言っちゃダメよ。心が折れちゃうでしょ」
「わかってるよ」
「ああ、今日も楽しかった。明日はどうしようかしら」
たくさんの袋を抱えながら、くるくると回る彼女の頬はとても綺麗な桜色に染まっていた。
天使な小悪魔
(彼を惹き付ける小悪魔な天使は、そこにいた。)
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