clean×white



「触らないで近寄らないで汚いんだから!!!」

純白のワンピースに淡いブルーのカーディガンを羽織った少女は後退りながら、そう叫んだ。

幾らなんでもそれは言い過ぎっていうか、拒否りすぎなんじゃないかと思う。


「ちょっと、」

「近寄るな、バイ菌、汚物、汚れる!!!」

艶やかな黒髪を乱れさせながら、凄い形相で睨んでくる。
女のコがそんな顔をしていいものなのか…

「ねぇ、ちょっと待って」

「近寄らないでってば! 汚い、ゴキブ…ゴホゴホッ…」

「ちょっと大丈夫!?」

彼女は肺が人一倍弱く、興奮したりするとすぐに持病の発作が起きてしまう。
彼女に近付くには、彼女の持っている鞄に入っている手袋や消毒液やらを取り出して消毒しないといけないのだ。


「ほら、大丈夫?」

「大、丈夫…ゴホッ…ゴホッ…」

発作の時は背中を摩ると、少し楽になると知ってからは手袋をして、彼女の細い柔な背中を摩ることにしている。


「大丈夫、顔が赤いよ?」

「な、なんでもないわよ! もういいから早く離れて!」



彼女は色の中で一番、白が好きだ。
身につける物も白が圧倒的に多くて、逆に黒は殆どなかったりする。


「君って本当に白が好きだよね」「なによ、急に」

「君は僕が嫌いだろ?」

「ええ。だいっきらい。汚れと同じくらい大嫌いよ」

「だよね」

「それがなに?」

眉を寄せながら首を傾げる彼女に、勿体つけるように話始める。

「いや、君は僕が嫌いなのに、僕があげたそれはいつも持ってるんだなぁ、と思って」

彼女の持っている白いウォークマンを指差す。

「べ、別に! これにはなんの罪はないから!」

そう言って横を向いてしまった彼女の顔は林檎のように真っ赤だった。


「やっぱり、熱があるんじゃ…」

「しつこい! この鈍感!!」



そういえば、このウォークマンは僕が君に初めてあげた物だったけ…





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