20.5






…来ちゃったよ。来てしまったよ。

「じゃオレ風呂入ってくっから適当にくつろいでてな〜。っつっても何もねーから暇だろーけど、ゴメンな」

「あっ…ううん。お構いなく」

「酒はあるけど」

「…それは結構です」

「そ?んじゃごゆっくり〜」

人生初・男の人の家にお泊まり。(ゲ○だけど)
※もちろんお家にはちゃんと連絡入れました、「友達の家に泊まってそのまま明日学校へ行きます」と。


でもまぁ、彼がソッチの人だというのは実は少し頷ける部分があって私はもはや疑ってはいないのだ。何というかこう…男を感じさせないって言うのかな。中性的な見た目も相まって。

クレイジー鮎川なのは確かなんだけど。
女の子に手を上げるのは外道って言ってたし。
基本的に優しいし、なんか知らないけど話しやすい。おそらくこれも大きな要因だ。いずれ彼に対するツッコミも口に出して言えてしまいそうな、私の中で数少ない存在の一人になり得る気がする。

しかしながらこの人も。
根っからの不良さんなんだよねぇ。

…良いんだか悪いんだか…いや、悪いわ。










「敷布団…コレっ。枕は…あーコレ新品。コレ使って。掛けんのは毛布でいい?あ、でも暑いか〜?」

「あっううん、大丈夫!ありがとう」

「っつーかホントに煎餅布団でいいのかよ〜。大して寝心地は良くねーけどベッドのが楽じゃね?オレはどこでも寝れるしよ」

「いいのいいの!鮎川くん普段ベッドなんでしょ、私のことは気にしないでいつも通りにしてくれていいからっ」

っていうかあんたが毎日使ってらっしゃるベッドで平然と寝られるかぁぁぁあ

…ああ、そっか。
この人は自分が男の人だという自覚に欠けてるんだった。こういうのに慣れないといけないのか、そうか、 無 理 だ な


鮎川くんのお家は1Kのアパートだった。
そこまで築年数は古くないらしくその上彼は意外と綺麗好きだそうで、お部屋は清潔感があって思っていたよりもちゃんと片付いていた。…いや、というより。

彼は日頃から片付けてる風に言ってたけど、コレはそうじゃない、よね。

妙に殺風景。っていうか物が異様に少ない。
テレビも箪笥もテーブルもないしキッチンもほとんど手を付けられてないっぽいし、冷蔵庫だって簡易的なミニサイズのもの。あるのはパッと見ベッドと積み重ねられた服のみ。あ、お風呂を借りたときに洗濯機があるのは見た。

高一だし、引っ越してきたばかりだろうから仕方ないのかとも思うけど。そもそもその年で一人暮らしなんてあんまり聞いたことがない。たぶんそれなりの事情があるんだろう。

…ま、そんなことズケズケと聞けないけど。

他人の私が気にすることじゃないし。
一日お世話になるだけなんだし、余計なこと考えたところでどうしようもないしね。

それに家の事情ということであれば私だって。
ベラベラと誰彼構わず話すようなことじゃないし、できれば今はまだ、あんまり人に知られたくないもんな…。

気持ちは分かる、なんて。
そんな簡単に言われたくないだろうけど。


「砂羽どーした〜?ボーっとしてっけど」

「…そ、そう?全然っ何でもないよ」

ふと急に顔を覗き込まれたものだから、私は思わず大袈裟な手振りで否定する。そうするとニコッと笑って何かを差し出してきたのでそれを見れば…ビ、ビール…。いやいらないっちゅーの

私は精一杯の笑顔でそれを手のひらで押し返した。


まぁ、それは置いておいて。
今出してくれた布団だってさっきまで圧縮袋に入ったままだったのよ。ん?ってことはこの家に誰かが泊まりに来たの…もしかして、初めてだったりするんだろうか。

いや待てよ、っていうか私安易に泊まったりして鮎川くんの彼氏さん(いや彼女さん?)に嫉妬されたりその生霊に取り憑かれたりしないか。…あ、それはないか。むしろ女なら安心なのか相手も。うーん複雑よのう…


「砂羽お前よ〜さっきからなに一人で難しい顔してんのよ。なんか悩みでもあんのか?」

「…いや、鮎川くんのような方々の世界って難しいなぁって思って、ね」

「へっ?まぁよく分かんねーけど〜難しいコト考えんのはまた明日でいいんじゃん。そーいうときはほら、とりあえず一杯いっとく?」

いきません

「なぁ〜んだよ今なら引っかかると思ったのに〜」

引っかけるなよ。

っていうかおじさん顔負けに堂々と飲んでんじゃないよ未成年が。ま、私の知ったこっちゃないからいいけど。そもそも人の家だしそんな文句は言えないからね。明日二日酔いになろうが鎮痛剤とかあげないからな、持ってるけどそれは自業自得だからなっ。




「そーいや砂羽って彼氏いんの?」

「…忘れかけてたけど。それを聞く前に一つ、私に説明すべきことがあると思いませんか」

「えっ?」

「戸川さんたち完全に誤解してたし…な、なんであんな嘘吐いたの」

「あ〜オレとお前が付き合ってるってやつ?」

「…うん」

「ん〜アレは別にその場のノリでつい言っちまったっつーかな〜」

「やっぱりそれって…カモフラージュ?」

「や、だからそんなつもりじゃねーって〜。それじゃまるでオレがお前のコト利用してるみたいじゃんよ〜」

いやいや絶対利用しただろぉぉぉお
コイツ男いなさそうだしちょうどいいや♪みたいなノリに巻き込まれたんだろうな私…。どうせ巻き込まれるならノリはノリでも海苔の方がよかった、だって美味しいし(?)


「ま、いいんじゃん?そーいうコトにしとけば〜」

こ、この人。
人の気も知らないでなんて呑気なんだ…!?

しとけばっていうか、もはや手遅れに近い。
私がハッキリと違うって言ってるのにあの人たち全然聞く耳持ってくれなかったし…。

とりあえず当の本人はアテにならないし、念のため河内さんたちにちゃんと掛け合って口止めしておいた方が…ん、っていうか

………………………。

分かっちゃったかも。
鮎川くん、あんたもしかして


「ねぇ鮎川くん」

「ん?」

「もしかして河内さんのこと好きなの?」

ブフォッ

あっ動揺した!ってことはビンゴ!?
思いっきりビール吹き出しちゃって、汚いけど今は良しとしよう。それより答えが気になるっ


「ゲホゲホッ…えっ、なに急に」

「だって鮎川くん男の人が好きなんでしょ、それに武田さんたちにはしなくて河内さんたちにはするカモフラージュ、河内さんに対する発言…思い当たるところがあり過ぎて」

「………………………」

何故かポカーンって顔で私を見る鮎川くん。
…図星ってことで良いのかなコレは?

表情だけじゃよく分からないけど、我ながら名推理だと思うんだ。推理というか女の勘ってやつなのか。まぁどっちでも良いけどさ。


「あ、戸川さんの可能性も考えたんだけど…河内さんに対してほど大好きアピールが無かったから違うかと…でも逆に好きだからこそ素直になれないのかもと思ったり…」

「………クックックック…」

「…あ、鮎川くん?」

ふと気がつくと彼は俯いて肩を小刻みに揺らしてて、なんかコレ…必死に笑い堪えてないか。

クックックッ……や、もー無理…ダッハッハッハッハッハ!…おもしれ〜…ハッハッハッハッハッ!!

そしてとうとう我慢ならなかったのか大笑い。

…いや、ちょっと待って。
私それなりに真剣な話のつもりだったんだけど笑うところありました?


「なっ、何でそんなに笑うかな…」

「いや〜コレが笑わないでいられっかよ〜。プッ…ダハハハハッ!」

「あ、あのねっ笑わせるつもりで言ったんじゃないんだけど!自分からそういう話って鮎川くんの場合言いづらいかもしれないなって思ったから…だから、私なりに考えたのに…」

「…えっ。あ〜そ、そうだよなぁ!悪かったって!ほらちょっとそーいうのって照れくせーじゃん?だからつい笑って誤魔化しちまうっつーかさ〜」

「河内さんが私に、鮎川くんはオレの弟分で弟分の女はオレの妹分だ、みたいなこと言ってたのも…ホントは複雑な気持ちだったんじゃないかなって…ちょっと、心配したんだよ」

「……砂羽」

今度は何よ!その虚を突かれたような顔は!

「…な、なに」

オレやっぱお前好きだわ〜〜〜!!今日からオレたち親友成立ハイ拍手〜〜〜〜!

ぎゃぁぁぁあ!だっ抱きつかないでっいくらゲ○でも距離感は保ってぇぇぇぇえ!!


私が思いっきり突き飛ばしたことによってベッドの縁に勢いよく頭をぶつけたにも関わらず、尚へっちゃらな様子でヘラヘラ笑ってるクレイジー鮎川。

この人に最初に抱いたあの″変態″という印象を、私の中で回顧させた瞬間だった。



そして何より。私、出水砂羽。
こ の 度 ゲ ○ に 親 友 宣 言 さ れ ま し た

そろそろストレスで胃に穴が開いてもおかしくないと思う。(真剣)













「あ〜そーいや言うの忘れてたけどよ、オレ明日ダチの早朝散歩に付き合うコトになってんのよ。だからか〜なり早い時間に起きっからさ〜物音で起こしちまったらゴメンな、先に謝っとくわ」

そんなこんなでふと時計を見れば0時を回っていたため、電気を消してお互いに布団の中へ入った。

真っ暗でシーンと静まり返った部屋。
時計の針のチクタクと動く音だけが響く。

こうして布団の中で眠気がやって来るのを待ちながら話をするのなんていつ振りだろう。そういうのってお泊まりの醍醐味だと思うんだ。まさかその相手が男の子になる日が来るなんてねぇ…まぁこの人メンはメンでもオトメンだけどな


「…早朝散歩?」

「そそ。同じクラスの仲良いヤツでよ〜ソイツこの前気づいたら20キロ、往復40キロ歩いちまってたとか言ってよ〜。したらキレーな湖なんか見つけたとか言うモンだから。この街でよ?どエレェ珍しいじゃん?あ、オレ結構自然とか好きなのよ」

「なんか…凄いし意外だね、色々と」

鮎川くんの友達か…強烈そうだなぁぁあ。
しかし早朝散歩なんてお年寄りみたいな趣味を持つ人がいるのはちょっと、いやスゴく意外。もちろん鮎川くんが自然好きっていうのも同じくらい意外だけど。

っていうか散歩で40キロって野生の匂いしか感じないんだけど、あれ。なんか…どこかでそういう人と会ったことがあるような…?


「あの学校おもしれーのよ〜みんな。毎日が刺激的っつーの?まぁオレは基本傍観者だけど。常日頃からギラついてるしよ〜見てて飽きねーの」

いやいや冗談よしなされ。
クレイジー鮎川がただの傍観者で済んでる訳がないよね、うん、さり気なく言いやがったけどそこを私は拾うよ騙されないよ


「そういえば、さ…鮎川くんってどこの高校なの?」

「あれっ?言ってなかったっけか〜。オレ鈴蘭」

「すっ…ええっ!?

「えっなによ?」

「…いえ、何でも」


…鮎川くん、マジか。
鈴蘭生きちゃったぁぁぁぁあ

いや、よくよく考えれば別にあり得ることだと思うんだけどさ。あの学校も市内にあるとは聞いてたし可能性は充分にあった訳で。でもまさか…それは無いと信じてたんだけどなぁ…。

私、この間奈那子さんに言ったよね
鈴蘭の人と知り合うのは200パーセントあり得ないって。それがなによ、ガチな鈴蘭生につい先ほど親友宣言された私なんなのよ


思わず起き上がる勢いで吃驚した私、ちょっとウトウトしてきてたのに今ので完全に目が覚めちゃったよ。

ああ、聞 か な き ゃ よ か っ た







鮎川くんもまだ眠くないのか、そのあと「鈴蘭に知り合いでもいんのか?」とか「オレも実際この街来たの最近だからよ〜、よく知らねーんだけど、やっぱ鈴蘭の噂って黒いワケ?」とか。戸亜留市に移住した時期は私と同じくらいなんだなぁ、なんて思いながら質問に答えつつ。鈴蘭に知り合いはいないし持ち合わせてる情報も少ない私は、そこから広げられる訳もなくすぐに話題が底をついた。

っていうかもう1時近いんじゃないか?
明日早いって言ってたけど大丈夫なのかな…。

目を瞑ったまま少しばかり心配になる。
けどしばらく黙ったままだしコレはたぶん、寝たかな。うん。よかったよかった。




「砂羽もう寝たか」

…あら。あんたまだ起きてたの(親か)

「ううん、起きてる」

「…そっかぁ」

なんだろう、なんか。
耳に届いた彼の声はどこか寂しそうで。

「…鮎川くん?」

だけどあんまり触れちゃいけない領域、そんな気がするから。言葉足らずに″どうしたの″と尋ねてみる。


「オレさ〜この街好きなのよ。スゲー気に入ってんのよ」

「…うん」

「ここに来たきっかけが、さ。中学卒業してすぐ…地元飛び出して来ちゃったの。アホゥだから金もな〜んも持たずに」

布が擦れる音がして彼が体勢を変えたことが伝わる、そして少し沈んだ声色ながら相変わらずの調子で話を続けた。


「…卒業間際によ、オレが一番尊敬してる…まぁ言っちまえばアニキみてーな人がさ。単車で事故って死んだんだ」

「……っ」

「疾走らせてるときゃまぁ〜かっちょええわ最高にイカしてるわでよ〜。色んなコト教えてもらった。オレもぜってーああなってやる、むしろ越えてやるって思ってた」

「……うん」

「だからなんでその前に居なくなっちまうかなぁって…なんか、全部どーでもよくなっちまってさ〜。投げ出したくなっちまってさ」

「……………………」

「色々決まってたのによ、七代目はらさしてもらうのとか単車の組み換えとか…大事だったはずのことが180度違って見えてよ〜。色を失った感じっつーのか…」

その頃のことを懐かしむように。
だけどどこか苦しげに言葉を紡ぐ鮎川くん。

それは私に話してるというよりはむしろ、独り言に近いように思えた。


「んでなりふり構わず地元出て…この街に辿り着いてから三日三晩飲まず食わずで野宿、ついにこのままオレも死ぬのかなぁな〜んて思ってたら、ある人が風呂もロクに入ってねー臭ぇオレを拾ってくれてさ」

「…ある人…」

気がつくと口が勝手に動いていた。
自分でも不思議だった。

″ある人″と聞いて、ふと。
梅星さんが浮かんだのはどうしてだろう。

たぶん、藤代くんや月島くん(だったよね)…要するに鮎川くんと同じような人たちを下宿させてるって聞いてるから、あの人なら野宿生活でボロボロの男の子を見て見ぬ振りはしないだろうって思う。だからかなぁ

そんな想像をしつつも今は彼の話の腰を折る気にはなれなくて、私は静かに再び耳を傾けた。


「そっからトントン拍子でさ〜、その人の家でメシ食わしてもらってスゲー良くしてもらってよ。おかげで地元のヤツとも母ちゃんとも連絡とれて、当然めちゃくちゃにドヤされて…ありゃ恐ろしかったな〜。けどみんな揃って言うんだぜ?とにかく一秒でも早く戻って来いって。んな求められちゃよ〜やっぱ戻らねーとって一度は思った」

鮎川くんは不良さんで、私にはよく分からない世界にいて、その…七代目?とか背負っていたものがあって。(分からないけどやっぱり間違いなく恐ろしい人なんだと思う…うぅ)

きっと彼が地元を離れるということは周りの環境を大きく揺らがすような、大変なことだったんだと思う。それがどんなに小さい一つの街の出来事だったとしても。

それも吹っ飛んでしまうくらい。
相当…その人の死が、辛かったんだろう。


「けど、縁とかそんなモンよく分かんねーが、オレがこの街に引き寄せられたのは何か意味がある気がしてよ。それに何より…まず自分をリセットしたかったんだろーな〜」

「……うん」

「勝手が過ぎるとは思ったけど自分を騙し騙しでやってくのは違ぇだろって思うじゃん。だから正直にそー言ったら「お前がそこまで言うならそっちで一ヶ月暮らしてみろ」ってさ。しょうもねー街だったら必ずすぐ戻って来いって、そん時は死ぬぐれーの覚悟しとけって。オレはもう何からも逃げねーってその時ヤツらと約束したのよ」

ホントに物騒だなぁ…と思いつつ。
さも平然と言う彼はもしかしたら、本気でその覚悟をしてたのかもしれない。だからこそ約束を交わしたんだろうから…そう考えるとゾッとするけど。

この街には一体、彼らにとってどれほどの魅力があるんだろうか。


「んで母ちゃん説得して、前借りした分バイト代で返しながら今は何とか自分でやってんのよ〜。元々ビンボー育ちだしこーいう生活には慣れてっけどさ」

…しっかりしてる。
私よりも全然しっかりしてるじゃないか。
自分で生計立ててここで生活してるんでしょ。それって同い年とは思えないくらい、なんか、苦労してるというか…偉い…。

それに比べて私は周りの大人にすべてを委ねて、子どもだからと言い訳して、甘えてるんだなぁと思う。こういうところに限っては見習いたい。そういえば殴られたことですっかり吹っ飛んでたけど、バイト。うん、まずバイトしよう…!!




ところで。

「もうその一ヶ月は…経ってるよね。こっちで暮らすことに決めたの?」

「おう!この街はさ〜オレが思ってたよりもず〜っと、なんつーかこう、ワクワクさせてくれんだよ。そーいうヤローが揃ってる気がすんだ。もっともっと先を見てたくなるよーなヤローがさ」

「……そっか」

「んなトコ離れちまうのは惜しいじゃん?まぁオレも気まぐれだからいつ気が変わるか分かんねーけどしばらくは居座るつもり。運よく高校も入れたコトだし、そこもまたおもしれーし」

「…地元の友達は、大丈夫なの?」

「あ〜ソレはほら、母ちゃんにカッコがつくくれー金貯めてから殺されるつもりで帰るかな〜いずれ」

「………………………」

「おいおい黙んなよ〜冗談だって冗談!」

当の本人は楽しそうだけどこちとら笑えんわ。
そういうことをあんたが言うと冗談に聞こえないんだってば…!



「…ねぇ、鮎川くん」

「ん〜?」

まったく、話終わったら満足したのか一気に眠そうな声になっちゃってこの人は。


「そんな大切な話…どうして私に教えてくれたの?」

これは本当に、ただ素朴な疑問だった。
鮎川くんの事情はなんとなく気になってて、でもまさかそれをこんなにすんなり聞かされることになるとは思ってなかった。だけど聞いたからといって別にどうこうって訳じゃないし。むしろほんのちょっと見直したし。鮎川くんに限らず、こういう人たちを外見だけで判断したり色眼鏡で見ちゃいけないんだなぁって。少しだけ反省もした。

まぁそれはあくまで聞いた側の感想であって、なら話してくれた彼は一体何を思ってのことだったのかって、そこを疑問に思うのは当然だよね。


「あ〜…そういや何でだろーな〜」

そうくるか。
自分でも分かってないパターンか。
はたまた結構誰にでも自分のことを話しちゃうタイプなのか…いや、うーん。そんな感じはしないけど。だって喰えないもんこの人。

「よく分かんねーけど〜砂羽もなんか、苦労してそーだなぁって思ったんよ。同じ痛みが分かるよーな、そんな気がした」

「…鮎川くん…」


同じ痛み、か。

それはきっと、自分が大切に思う人を失ったときの痛み。彼にもそれを受け入れられない時間があってそれを乗り越えて今があるんだろう。

私の一度目のそれはあまりにも小さい頃で、理解するのに苦労した記憶ばかり残ってる。むしろ今になって偉大さを知るというか。もし今いたらどんな感じなんだろうとか、悲しいというよりは想像して勝手な像を作り上げる方が先にくる。

お父さんのことはまだ。
どうしても実感が湧かないし、現実を受け入れられていない子どもだなぁって思うけど、いつか彼みたいに乗り越えなければならない日が来るのは分かってる。

ああ、でもなんか改めて。
一人じゃないんだなぁって思える瞬間かも。(あの親友宣言は案外ダテじゃなかったりして)


…いや。毒されてない?毒されてないか私!?
そんな気がして結構本気で焦る。だいたい親友とか認めてない!決して認めない…!


「オレこー見えて人を見る目はあんのよ〜。軽く見えっかもしんねーけど、好き嫌いハッキリしてるし良しとしねーヤツには相当冷たいらしいし〜。だいたい今みてーな話する以前に気に入らねーヤツ家に入れねーもんよ」

「それはまぁ…そうかもしれないけど」

「まっ、オレお前好きだし!結局理由なんざそれに尽きるってコトよ〜」

あれ、好きって言われても全然ドキドキしないのなんでだろっ☆親友だからかなっゲ○だからかなっっ

……………………。

やっぱりこの人に色々狂わされていくような気がしてならない。ただちに本来の私を返せ


っていうかそもそも。
なんでそんなに好かれてんの私(ぶっちゃけ嬉しくない)








「ありがとな〜つまんねー話聞いてくれてよ」

欠伸混じりにお礼を言うんじゃないよあんた。まったく。この人に対して八割方は保護者目線なんだけどどうなのよコレ。

「ううん、むしろ、こちらこそありがとう」

そんな苦労をひた隠しにしちゃう私って超優しくないか…!まぁなんかちょっと、元気もらったし。ありがとうは言いたかったし。

「えっなにが」

「いいの気にしないで。私が言いたかっただけだから」

「ハハッ!変なヤツ〜」

頑張れよくじけるなよ私。


っていうか今何時よ。怖くて時計見れないよ。
ちょっとコレなかなかマズいんじゃないのもはやお互いに。

まったく何をやってるんだか私は…。

……………………。

よし、もうこれが最後の一言!そして寝るっ





おやすみなさい!
(砂羽〜どーしよ全然寝れねぇ!)
(無視)
(頼むっ5時に叩き起こしてくれっっ)
(ふざけるなぁぁぁあ!!)


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