第一松
兄さんたちが起きる前に起きて学校へ行く。学校が終わったらバイトに行って、兄さんたちが銭湯に行っている間に食事、お風呂を済ませる。
そんな生活にももう随分慣れた。
「大変じゃない?」
憧れの女の子は言う。
「おめぇは頑張り屋だな」
顔なじみのおでん屋の大将が言う。
「厄介な兄妹ザンスねぇ」
よく遊んでくれたおじさんが言う。
大変だって、頑張ってるって言われるけど、これは全部自分のため。誰のためでもない。兄さんたちと会いたくない、見られたくない、嫌われたくない。そんな利己的な思いで始めたこと。高校を卒業してこの家を出るまで、兄さんたちにできるだけ会わないようにする。そう決めた。
「なまえじゃん。おはよう」
はずだった。
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