甘味処にて
「おばちゃーん、お団子全種類一本ずつお願い〜」
甘味処に着き席に座った彼女は、慣れた様子で団子を注文していく。
何故全種類一本ずつ頼んだのだろう。
そう不思議に思って彼女を見ていると、
「好きな味がわからないので全種類頼んじゃいました〜。あっ、でもどれも美味しいですよ?だから好きなだけ食べてください」
あはは、と少しはにかみながら笑う。
その顔にまた少し心臓がうるさくなった。
***
(ある意味)危ないところを助けてもらったおれ。
何かお礼をしようと思って、おれが知っている中で一番美味しい甘味処に来た。おばちゃんも優しいがらすごくオススメなんだぁ。
パク…バクバクと団子を食べるお兄さん。か、会話が続かない。
何か話題を見つけないと。
一生懸命考えた結果、
「あの、さっきは凄かったですね!どうやったらあんな風になれるんですか?」
おれって馬鹿なのかな。
今おれは女の子なんだから、こんなこと言ったらおかしいよね。
目の前のお兄さんも変に思ってるだろうなあ。
「ああ!あれか!あれはな、毎日の鍛錬のおかげだ!」
あれ、案外ノリノリで話してくれた。
それからもどういう鍛錬をしただとか、友人の話だとかをしてくれて、いつの間にかおれも熱心に話を聞くようになっていた。
***
「おっと、つい話し込んでしまったな」
お兄さんの言葉で気づくと、もう太陽が随分傾いていた。
「す、すいません!随分長い時間話し込んでしまって。何かご予定はありましたか?」
「いや、大丈夫だ!むしろ感謝しているぞ!」
感謝?
「ああ、今日はとても楽しい時間を過ごさせてもらった。ありがとな!」
「そんな、こちらこそ」
お兄さんの話はとてもためになった。おれも今度からの鍛錬の計画がたてられたし。
「今日は本当にありがとうございました。では私はこれで」
おばちゃんにお金を払い、店の前で別れようと声をかけたら…。
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