至福の時間です
「お腹すいたぁ!おばちゃん、今日の定食はなに?」
食堂についてすぐにおばちゃんの元へ行く。おばちゃんは、待ってましたとばかりに笑顔でおれに言った。
「今日は、煮魚定食と唐揚げ定食よ。春くんは唐揚げ定食でいいわね?」
「うん。さすがおばちゃん。おれのことが分かってるなぁ」
「ふふふ、まあね。竹谷くんも唐揚げ定食かしら?」
「はい!お願いします」
おばちゃんに手渡された定食を手に、おれとはっちゃんは席に向かう。
そこには、
「春! ハチ! 遅いじゃないか。待ちくたびれたぞ」
「今日はいつもより遅かったね。どうかしたの?」
雷蔵と三郎がいた。声でしか判断出来ないほど二人は似ている。相変わらず、三郎の変装はすごいなぁ。
「ごめんな、こいつがなかなか起きねぇから」
「あはは、なるほど」
「むぅ、納得しないでよ。おれだっていつも寝坊してるわけじゃないんだからさぁ」
「そうだぞ、雷蔵。そんなに笑っては、さすがに春がかわいそうだ」
おれに抱き着きながら三郎が言う。なんか微妙に失礼なこと言われてる気がしなくもないけど。
まぁ、そんなことより、
「い組の二人は?」
いつもは二人もおれ達を待ってくれているのに、今日は姿が見えない。
「ああ、二人は授業の準備があるみたいで、先に行ったよ」
「あいつらは真面目だからな」
そうなんだ。まぁ、あの二人には後で会えるか。
それよりも今は、目の前にあるご飯を食べることで頭の中はいっぱいだ。
いただきま〜す。
「春、話聞いてるか?」
はっちゃんの声も頭に入ってこない。
***
「ごちそうさまでした」
美味しかった。やっぱりおばちゃんの作るご飯はおいしいなぁ。
「やっと食べ終わったのか。春って食べるの遅いよな」
「心外だなぁ、はっちゃん。おれは食べるのが遅い訳じゃなくて、ゆっくり味を堪能しながら食べてるだけだよ」
「そうだぞ、ハチ。それに、ゆっくり食べてる春、可愛いじゃないか」
「はっちゃんは、味わって食べてなさすぎ。勿体ないでしょーが」
はっちゃんは、掻き込むように食べるから、食べ終わるのがすごく早い。
「雷蔵からも言ってやってよ〜」
「えっ、う〜ん。そうだね、春の意見にも一理あるけど、確かに春は食べるのが遅いし。う〜ん…」
雷蔵が悩み始めた。
あ〜、どうしよう。
ゴーン、ゴーン、ゴーン。
あっ、鐘が鳴った。
「ら、雷蔵。とりあえず考えるのは後にして、今は教室に行かないか?」
はっちゃんが焦って言う。あー、たしか、最初の授業は木下先生だった気がする。これは急がないと。木下先生怒ると怖いからなぁ。
「う〜ん、でも…」
「いいから行くぞ!」
三郎が雷蔵の腕を引っ張って走る。間に合うといいんだけどなぁ…。- 4 -
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