早起きは苦手です
「おい、春!朝だぞ、早く起きろ!」

「ん、朝? …もうちょっと寝る〜」

昔の夢を見た。そういえば、あの時もはっちゃんにこうやって起こしてもらったっけ。
夢のなかで見たおねえさんとは、あれ以来会っていない。今はどうしてるのかなぁ。

「また寝ようとするな! 俺が顔を洗いに行ってる間に着替えとけよ!」

「…わかった」

 う〜、名残惜しいけど布団から出よう。
お腹すいた…。食堂のおばちゃんの定食が食べたい。

 もそもそと着替え終わると、丁度はっちゃんが戻ってきて、ほらよ、と言って濡れた手拭いを投げてきた。

「早くそれで顔をふけ。そしたら髪結ってやるから」

「ん〜」

 髪を結うはっちゃんの手つきはこなれていて、毎日同じように髪を結っていることがわかる。
自分で結えればいいんだけど…、不器用だからなぁ。

「……」

「…はっちゃんってさ、本当にお母さんみたいだよね〜。おれのお母さんになってよ」

「…こんな手のかかる子供はいらねーよ」

「あは、そっかぁ」

よし、髪も結い終わったし、そろそろ食堂に行きますか。


     ***



「今日の定食何かな。唐揚げ? 肉じゃが? 楽しみだなぁ。はっちゃんは何だと思う?」

「俺は豆腐料理じゃなけりゃなんでもいいよ」

「あは、はっちゃんまだそんなこと言ってんの?」

「うるせー」

 はっちゃんと話しながら食堂へ向かっていると、向こうからもんじ先輩がきた。

「もんじ先輩、おはようございま〜す。」

ぶんぶんと手を振りながらおれが先輩に声をかけると、途端にはっちゃんが固くなる。
そんなに緊張しなくていいのになぁ。

「おう、蓬川か。今から食堂に行くのか? 早くしねぇと食う時間なくなるぞ」

「おやまぁ。もうそんな時間ですか?」

「なに綾部みてぇなこと言ってんだ。お前はいつも来るのが遅いんだよ。」

「え〜だって、はっちゃん早く起こしてくれないんですよ?」

はっちゃんがしっかり起こしてくれれば早く来られるも〜ん。

「春がなかなか起きないからだろうが!」

「……はぁ。お前も大変だな。蓬川はあんまり竹谷に迷惑かけんなよ? じゃあ、俺はもう行くぞ」

自分と同じ匂いを感じたのか、先輩はため息とともに深い同情の目をはっちゃんに向ける。

「は〜い。じゃあ先輩、委員会で〜」


 最後に、おれの頭をくしゃっと撫でて、もんじ先輩は去っていった。朝から先輩に会えて少し気分がいい。
委員会が楽しみだなぁ。

「春、俺らもそろそろ行くぞ」

「は〜い」

 そうだった。食堂に行くんだった。そう思った途端、急にお腹が空いていたことを思い出した。

「おいっ、春!待てよ!」

そうと決まれば急いで行かなきゃ。
 はっちゃんの制止も聞かず、おれは食堂へ走った。
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