「パパ!ねえ!ハリーがなにか持ってるよ」
ハリーは急いで部屋に戻ろうとしたが、それよりも早くおじさんにそれをひったくられてしまった。
「おじさん!返して!それ、私のだよ!」
ハリーが奪い返そうとしたが、どうしても身長の差があり、ピョンピョン跳ねるだけになってしまう。
ダドリーがそれを見てニヤニヤ笑うので、ハリーは抵抗をやめ、おじさんを睨みつけた。
「返してってば!!」
「お前に手紙なんぞ書くやつがいるか?」
おじさんはせせら笑い、封筒から手紙を取り出すと、片手でパラっと手紙を開いてちらりと目をやった。
とたんに、おじさんの顔が赤から青へと変わった。しかも、数秒後には、腐りかけた粥のような白っぽい灰色になった。
(……おじさんの様子が変?手紙に何が書いてあったの?)
「ぺ、ぺ、ペチュニア!」
おじさんはあえぎながら言った。
ダドリーが手紙を読みたがったが、おじさんは頑として読ませなかった。
そして、ペチュニアおばさんに手紙を渡すと、難しい顔をしてソファにドシンと腰を下ろした。
おじさんがダメならペチュニアおばさんに手紙を見せてもらおうとしたダドリーだったが、無駄だった。
おばさんはヒッと小さな悲鳴を上げると、まるでダドリーのことが見えていないかのようにおじさんのところへ駆け寄った。
無視されることに慣れていないダドリーは、何が起こっているのか理解できていないようだった。
(いつもならダドリーがやりたい事は何よりも優先するのに………)
おかしい。何かがおかしい。
あの手紙におじさんとおばさんをあそこまで動揺させる何かがあるというのだろうか。
ハリーは考えた。すると、あることを思い出した。
(そうだ。手紙。もしかしてあれってリーマスやジーンさんが言っていた手紙のこと?だとしたら内容は……)
「魔法……」
「バーノン、どうしましょう……あなた!」
呟いたあとでハリーはおじさんに聞かれてしまったかもしれないと焦ったが、おばさんの声にかぶり、ハリーの呟きはおじさんには聞こえなかったようだ。
「おじさん。私に読ませて。それ、私にきた手紙だよ」
ハリーは怒った。
せっかくハリーに手紙が来たというのに何故読ませてくれないのだ。
「あっちへ行け!二人ともだ」
おじさんは、手紙を封筒に押し込みながら、かすれた声でそう言った。
「おじさん!返して!」
ここで引いたら絶対に手紙を返してもらえないと思ったハリーは、いつになく頑固にその場を動かなかった。
「僕には見せてくれるよね?パパ」
ダドリーがしたり顔でそう言うが、おじさんは聞く耳を持たず、
「行けと言ったら、行け!」
と言って、ハリーとダドリーをリビングから締め出してしまった。