古着屋と不思議な人達


「あの、終わりました……」

着替えを終え、来た道を同じように戻ったハリーは、ペチュニアおばさんと店主のおじさんが待っているところまで来た。
やはりおばさんはここに居たくないらしく、できるだけ外に近いところに立っている。

「おお!よくお似合いですぜ、ポッターさん」

「本当ですか?!えへへ、ありがとうございます」

お世辞でも褒めてもらえたのが嬉しかった。自然と頬も緩む。
ハリー自身も、初めて着たワンピースを気に入っていた。
ハリーは、いつもダドリーのお古の大きな服(Tシャツにズボン)を着ていたので、よく男の子と間違われていたのだ。流石に何年も間違われ続けるとあまり気にしなくなるが、それでもやはり男の子と間違われることはハリーのコンプレックスだった。

「サイズは?これからずっと着るんだからもっと大きくてもいいんじゃないかい?」

「奥様、心配しなくても大丈夫でさぁ。この服はよく伸びるんで何年たっても着れますぜ」

おじさんはチラリとこちらを向いてウインクした。

(もしかしてこれにも魔法がかかってるのかな?)

おじさんとハリー、二人だけが知っている秘密。そんな感じがして、ハリーはなんだかくすぐったいような気持ちでいっぱいだった。

「ふん。じゃあさっさと帰るよ」

おばさんはさっさとお金を払って外へ出て行ってしまった。

「あっ」

(行っちゃった……)

まだ着替えていないのに。
早く着替えてペチュニアおばさんの元へ行かないとまた怒られてしまう。
ハリーは急いで先ほどの更衣室へ戻り、着た時よりも早く着替えた。

「ポッターさん!袋に入れますかい?」

「大丈夫です!!」

店の出口目指してハリーが走っていると、後ろから店主のおじさんの声がした。
ハリーは申し訳ないと思いながらも、走る足を止めずに答えた。

(そうだ!!名前!)

走るのをやめ、くるりと振り向く。
おじさんは急いでいたのにどうしたのだろうという顔をしていた。

「あの!おじさんの名前は!」

「ああ。そういやぁ自己紹介がまだでしたねぇ。俺はユージーン・グローヴァーってぇ名前でさぁ」

「ユージーンさん……。ありがとうございました!!」

最後にお礼を言ってまた走る。
おばさんの甲高い声が聞こえる。急がなくては。
ユージーンさんの「ジーンでいいですよー!」という声をバックに、おばさんの元へ戻った。

「ハリー、遅いじゃないの!!全く、ボロい店だから服も安いと思ったけれど、そんなことないじゃない!こんなところもう二度と来たくないわ!」

おばさんはヒステリックにそう言った。
おばさんには悪いが、ハリーはまた来ようと思っていた。

「私はすごくいいお店だと思ったよ?」

そうハリーが言うと、おばさんは形容し難い顔で、まぁ!と言い、その日はずっとハリーと口をきかなかった。