壊れたメガネと魔法使い


「うん、あるよ。僕のとも……いや、知り合いが持っていたからね」

そう言ったリーマスの顔は、寂しそうだった。しかし、リーマスはすぐにその顔を切り替えるとまたにこりと笑ったのだった。

(その友達と何かあったのかな)

ハリーは、リーマスのそんな顔は見たくなかったので、話題を変えることにした。

「リーマスはどこで魔法を教えてもらったの?」

ハリーが先程からずっと気になっていたことだ。
(もしかすると私もそこへ行けば魔法使いになれるのかもしれない)

「あー、……ごめんね。今は教えられないんだ」

途端に顔から光を失っていくハリーを見て、リーマスは慌ててこう付け足す。

「大丈夫!ハリーにも手紙が届けばわかるよ」

「本当に、私にも……、届く?」

今まで手紙なんてもらったことのない自分に、リーマスの言うような手紙がはたして届くのだろうか。

「大丈夫。君はあの二人の子供だ。手紙が届かないはずがないさ。あと数日待つんだ。そうすれば全て分かるよ」

「わかった……」

(待つことには慣れてるもん。あと数日なんて、たいしたことない、よね)

リーマスはハリーに話せる程度で面白い話はないかと必死で頭の中を探したが、ホグワーツの管理人であるアーガス・フィルチを出し抜いたことや、様々な悪戯をしたことくらいしか出てこなかった。

(もっとマシなことをしていなかったのか僕!!)

「うーん……」

本日何度目かになるリーマスの様子に、ハリーは構うことなくボタンを付け直していった。
前の糸を切って、新しく縫い付けて……と。

「…………できた!!」

割とうまくできたことにちょっとした達成感があり、褒めてもらえるかと期待してリーマスの方を見るとまだ考えていた。

(考えてるのを中断してまで言うことじゃないよね……)