ブランコと古い記憶


あの後、おばさんとダドリーは急いで病院へ行き、残されたハリーはというと家へ帰ってガタガタと震え、泣き続けていた。

おじさんは心配してくれていたが、ハリーは恐ろしくてたまらなかった。

幼心にあれを自分がやったということはわかっている。もしダドリーがものすごく大きな怪我をしたら、一生残るような傷を負っていたら……。
自分のしでかした事の大きさに、そしてただでさえハリーに対してよそよそしかったおばたちの目が自分に対する嫌悪で染まるのかと思うと、怖くて怖くてたまらなかった。

(や、やだ……。きらわないで、わたしを、きらわないで…)

ハリーはずっと泣き続けた。
お腹が空いて泣き止んだ頃に、やっとおばさんが病院から帰ってきた。
どうやら顔に擦り傷や切り傷がついただけですんだらしい。ダドリーはおばさんの腕のなかで眠りこけていた。

「あの……」

ハリーが声をかけようとした途端、すごい剣幕で睨んできた。

バーノンおじさんが何か声をかけようとする前に、おばさんの声がリビングに響く。

「ハリー、やっぱりあなたもあの姉の子だわ。あなたは違うと思っていたけれど……。あなたでしょう?ダドリーにあんなことをしたのは」

「わ、わたし…ちが……」

「違うわけないわ!!あんなわけのわからない事、あなた以外にできるわけないもの!!」

またあの変な力を使ったんでしょ?!ねえ!そうなのよね!?何か言いなさいよ、ハリー?!

そう言って肩をガタガタと揺さぶられ、とてもじゃないがハリーは話す事ができなかった。
それでもなおヒステリックに怒鳴り続けるおばさん。このままではダメだと判断したおじさんの手によって私は部屋へ帰されてしまった。

あのあと、おばさんは事のあらましを話したようで、次の日にはおじさんもおばさんもハリーに冷たくするようになっていた。

「…………」

(あの時、もし私がブランコに乗るのを諦めていたら、今もおばさん達は優しくしてくれていたの?私はやっぱりダメな子なの?)

ブランコを漕ぐのを止めて、考える。
暗い考えが頭の中をグルグルと駆け回り、お前はいらない子、お前なんか生まれてこなければよかったんだと囁きかけてくる。
そんなとき、

「ハリー?」

温かくて優しい声がした。