その日は天気もよく、土曜日とあって、動物園は家族連れて混み合っていた。
ダーズリー夫婦は入り口でダドリーとピアーズに大きなチョコレート・アイスクリームを買い与えた。
(うわぁ、猿がいっぱいだ…。可愛い)
ハリーが猿のエリアに夢中になっていると、ダドリーが自慢気にハリーの前でアイスクリームを食べた。ハリーは内心邪魔だなぁと思っていたから、ちょっと離れる。ダドリーは反応があまりなかったのが癇に障ったらしく、地団駄を踏んでゴリラの檻の方へいった。
(あのゴリラ、ダドリーにそっくり)
ハリーもじっくり猿を堪能した後、ダドリー達に追いついてゴリラの檻を眺めていた。
ハリーが一回一回じっくり見ているので、ダドリー達は飽きれてハリーを置いて次のエリアに行ってしまった。
しばらくしてから、みんながいない事に気づいて急いでまわりを探してみるが、広い動物園の中を探すのは一苦労だ。今は諦めて公園のようなところで休んでいる。
(置いてかれちゃった…)
また怒られるんだろうな、とこれから起こることを想像してウンウン唸っていると、
「どうしたんだい?」
と、誰かに話しかけられた。
びっくりして振り返ると、そこには顔に傷がある男の人がいた。一瞬恐ろしく感じたが、よく見ると優し気な顔に気遣うような色がうかがえる。
「迷子かな?お父さんとお母さんはどこだい?」