星屑の海に沈む(前編)





 ツクモプロダクションの月雲社長と出会ったのは、私がクラブのホステスとして働き始めて半年が過ぎた頃だったと記憶している。

 スナックを経営している母親の知人のホステスのママに、どうしても毎週水曜日は二時間だけホステス嬢が足りずに穴が空いてしまう時間帯ができてしまうらしく、その間だけでも席に座ってお酒を注ぐだけの子が欲しいと言われ、週に一日二時間だけなら、と引き受けて始めた仕事だった。元々OLとして働いていたけれど最近は昇給もなかったのでお小遣い稼ぎにはちょうど良かった。水曜日、週の真ん中、席は少ないが高級クラブ寄りなこともありお客さんは先日女房と別れたばかりで金も暇も持て余しているIT企業の取締役社長と限られていたし(たまに部下たちも連れてくる)、人気トップ3に入るホステス嬢の隣に座ってお酌を手伝ったり、自慢話しか出てこないその人の話にうんうんと頷いたり「すごいですね」と言ってご機嫌を取るだけで毎月数万のお給料がもらえたのでお小遣い稼ぎにはぴったりだった。

 そうこうせっせとお小遣い稼ぎを始めて半年経った頃、固定客となったIT企業の社長さんが芸能事務所をやっている社長とその秘書と連れてきて、その社長さんがツクモプロダクションの月雲社長だったのだけど「いつもこの子達と話してるんですよ」「可愛くて美人な子たちでしょう」「月雲さん、次は何にしますか?私はこれがおすすめで…」といつも私たちに自慢話を繰り返しご機嫌を取られていたその人が、逆に機嫌を取るように月雲社長に語りかけていたのでその偉さは歴然で、初めて相手にする月雲社長に緊張したのを覚えている。
 けれども気さくな人で、偉い立場の芸能関係者ということもあって芸能界の裏話などを笑い話のように私たちに教えて楽しませてくれていたのでなんとかその日は追加延長分の30分残業しただけで何事もなく仕事を終えられたのであった。ただ一つ気になったことといえば、自意識過剰かと思われてしまうがやたら月雲社長と目があったことくらい。

 その後も月雲社長はこの店をお気に召したのか定期的に店に訪れてくれるようになったそうだ。私は水曜日しか居ない人間なのでママやここで働いているキャストがお金をいくらでも注ぎ込んでくれる嬉しい客だと話しているのを聞いていたけれど、その後暫くすると水曜日にあのIT企業の社長と共によく来店するようになった。

 私は自分の容姿を気にしたことはなかったけれど、最低限それなりにお洒落や化粧はしているつもりだ。その成果が出ているのかただ単に月雲社長のタイプだったのか、はたまたこういう女の子に囲まれた場所に慣れているだけなのか「可愛い」「綺麗だ」と水商売の女の子をベタベタ褒めるように、隣に座らせてさりげなくボディタッチをしたりとまるで会社のセクハラ上司にされるような扱いを受けるようになった。それと同時に芸能事務所の社長だもんなぁと嫌悪感すら抱いてしまったのだけど、相手はお客様で、この店にたくさんお金を注いでくれる特別客のような存在で、芸能関係者であれば悪い噂を至る所で流されるかもしれない−−楽な気持ちで今までお小遣い稼ぎをしてきた私には迫り寄ってくる月雲社長の言動を拒む権利など存在するはずがなかった。
 こんなことホステスをしていれば誰だって抱いてしまう感情だろう、だから耐えなければ。そう考えていたはずだったけれど、最初に出会った日に感じたあの"気のせい"がやがてそうではなくなり「よかったら連絡してほしい」と月雲社長から名刺をもらったのは彼の接待を続けて4度目の時だった。



 こんな仕事辞めよう。 そう思ったのは、拒否権のない私が月雲社長と個人的に連絡を取り合ってすぐだった。頻繁にメールや電話を寄越し、あからさまな好意を向けられた挙句同伴からのプライベートをお邪魔したい、自分は芸能事務所の社長だぞなんて言われて、あまりのしつこさに私も耐えきれなくなった。馬鹿に大きな業界の社長はこういうもなのか?と思い、興味本位でツクモプロダクションについてサーチしたところパワハラが酷いという引退した元芸能人の告白ブログなんてものがたくさん出てきたのでついに嫌気が指してしまった。いわゆるネットの情報を鵜呑みにするな状態ではあったけれど、あの積極的で強引な態度はそこからの表れだろうと思うと納得してしまう自分がいた。

 店には悪いけれど「会社にバレそうになって……」と言ってしまえば辞められることができることは分かっていた、何故なら働く前に会社には黙って働くということといざバレそうになった時はすぐに辞めるという約束をあらかじめしていたのでその意思を抱えたまま水曜日、いつも通りの時間帯に店に向かった。

「おはようなまえちゃん。あなたが来る前からあなたに指名が入ってるんだけど、出れる?」

 できれば勤務前に辞めることを告げたかったのだけれど、こういう時に限ってアクシデントが生じるものだ。店に顔を出すなり、ちょっと慌てた様子のママが私に着替え用のドレスを押し付けながらそう問うた。断れる雰囲気ではなかったけれど着替を受け取りながら思わず溜息混じりに「月雲社長ですか?」と言葉にしてしまったがママは首を横に振る。初めて見る人だけれど、いかにもお金がありそうな人で、決まった日にしか出勤していない私を指名してきたからただ事ではないと思ったそうだ。

「普通のお客さんだと思うんだけど、もし会社関係の人だったら言って。誤魔化しておくから」
「ありがとうございます……」

 もしかして、嘘を吐こうとしていたことが現実になるのか? 嫌な予感を感じながらドレスに着替えるけれど気が重たくて仕方がなかった。けれども私の代わりにその人の相手をしてくれるホステスがいるのでノロノロしているわけにも行かず結局重たい気持ちのまま着替を終えてホールに出た。
 万が一、会社の人間だったらまずいのでこっそりカーテンの陰から個室の様子を伺ったけれど、私を指名してくれた人は私の知らない人だった。

「お待たせいたしました。ご指名にあずかりました、なまえです」
「わぁ、君がなまえちゃんか! 待っていたよ。さぁ、座って座って」

 派手なスーツを纏って、笑顔を貼り付けて、陽気に私を迎え入れてくれたその人はママも言っていた通りあきらかにお金を持っていそうな身形をした青年だった。

「……失礼します。初めまして、よろしくお願いいたします」
「あっ、名刺はいらないよ。ホステスの名刺なんて、貰ってもゴミになるだけだからね」

 この業界では初めての客には席に着いたらまず名刺を渡すことがマナーとなってるのでマニュアル通りに名刺を差し出そうと仕草を見せると、すぐに私の行う行動に気付いたのか彼はウイスキーグラスを片手に余計な一言を付けて受け取ることを断った。
 失礼しましたと口にするも、どうやら彼も私のことは名前を知っていたくらいのようで随分楽しげにグラスを弄びながら私の姿を頭のてっぺんから足の先までを観察する。品定めをするようなその視線はとても居心地が悪かった。

「聞いたよ。君、この時間にしかいないんだって? どこか他のところで働いてるの? バレたらまずいんじゃないの? ま、こんな不況の中じゃ、お利口に働いてるのは息苦しいよね」
「いえ、学生なんです。他にアルバイトをしながら空いた時間にこちらに顔を出していて……」

 女性とお酒と会話を楽しむことを目的として来ていた今までのお客さんとは全く違うタイプの人間であることはオーラで伝わってきたし、ああこの人はそういう目的でなく本当にどこからか噂で聞きいた私本人をただ見たいがために訪れたのだということは彼と会話を初めて5分も経たないうちにわかった。

「お名前、お伺いしてもよろしいですか? 何とお呼びしたらよろしいですか?」
「月雲了っていうんだ、好きに呼んでくれていいよ」
「……つ、月雲?」

 聞きたくない名前を聞いた気がする。きっとあの人とは無関係の人だろう、ただの偶然だろうと思い込もうとしたけれど、珍しい苗字であるしこのようなお金を持っていないと入れない場所に来て、そのうえ私の存在を知ってわざわざ指名までしてきたのだからどう考えても無関係とは思えなかった。必死に動揺を隠そうとしたけれど、そうなる予想ができていたように月雲了と名乗った男はふふふと一つ笑って口を開いた。

「おかわりちょうだい。それとも、君も一緒に何か飲む? 僕はテキーラが好きなんだけど、せっかくだからボトルでも頼もうか? 焼酎にする? ワインにする? ああっ、噂に聞いていた君との出会いに乾杯!って、シャンパンの蓋を開けるのもいいね!」

 笑顔を崩さないまま勢いよく喋った後に、了さんはこの店で一番値段のするドンペリを注文してた。楽しげにボトルの蓋を開けて、私のグラスにお酒を注ぎながら「ツクモプロの月雲社長は僕の兄だよ」とさらりと告白を交えながら。


 月雲了さんの接待は二時間弱に及び、学生だと言っているのに嘘を見抜いているのかやたら仕事関係の話を振っては一般社会のネタを提示して自問自答を繰り返したり、時には月雲社長の話題を提供して言葉巧みにわざと触れてほしくない部分をピンポントで突いてきたり、知識が豊富なのか牛肉よりもバッタを食べる方が栄養価が高いやら頭の良いイルカはイジメの知能も高いから集団で魚を虐めて生き殺しにするやらセロリを食べ続けると緩やかに餓死するだとか知りたくなかった知識を知るはめになり頭が痛くなった。

 それが意図を交えて行った言動なのかはわからないけれど、そんな会話の中で少しでも気を紛らわすためにグラスを開けてしまったのは私の方で、終いには了さんよりも多くのアルコールを摂取してしまっていた。後半はほとんど記憶がなくて、意識を保つのが精一杯な最低なキャストを演じてしまったのだった。



「なまえちゃん、大丈夫? 送っていこうか?」
「いえ、平気です……タクシー拾って帰るので……」

 一人張り詰めた空気の中での了さんの接待を終えバックヤードに戻ると、あの接待と勤務時間が終わったことに安心しきったのか身体の力は抜けてとても帰れる状態ではなかったのでバックヤードで30分だけ仮眠をとっていた。気持ち楽になった程度にしか回復できなかったけれど、今は数組お客さんがいるのか賑わう声が耳に入ると邪魔にならないようにとさっと支度を終わらせた。一人で階段を降りれる気力は残っていたし、この時間ならほんの少し歩いた先の繁華街の大通りに出ればタクシーは簡単に捕まえられるため、店の人の力を借りることなく一人でビルから出た。

「−−−っわ、」
「おっと、大丈夫? ふふふ、ちょっと飲ませすぎちゃったかな」

 店からは出られたのだが、酔っていた私の身体はまだ階段を降りている感覚が残っていたのか外に出た瞬間に足をふらつかせてよろけてしまい、その時、ちょうど誰かに支えられた。

「りょ、了さん……」
「タクシー拾って帰るんでしょう、僕が送ってってあげるよ」
「いえ、結構です。すみません、先ほどは……」
「へぇ、悪いと思ってくれてるんだ。 それならアフターしてよ、あるんでしょう、そういうの。お金ならいくらでも出すし、君が行きたいところはどこにでも連れてってあげるよ。どこがいい? 食事にでも行く? バーに飲みに行く? それとも綺麗な夜景が見える場所にでも行こうか?」

 始まった、と思ってしまった。あのわずかな二時間弱の接待中もそうだったけれど、この人は饒舌で押し付けがましい態度をとりながらいくつかのパターンを提供して相手の意思を一つのレールに誘導させようとする人だ。

「ああ、もちろん、君がよければの話なんだけどね」

 それなのに拒否する権利をはっきりと与えてくる。自分の考えをグイグイと押し付けてくるくせに、結局会話の終わりは一歩引いたところで待っている。拒絶することはできたけれど、また訪れた月雲了の行動に頭の痛みを再発させた私は「今日は早く帰って休みたいんです」と逃げるように曖昧な答えを出してしまっていた。



 それで、送っていくよとタクシーに乗せられた後、自宅の住所を了さんに前もって告げたはずなのに行き着いた先は都内の高級ホテルだった。タクシーに乗せられた後、座ったことと心地よい揺れについ意識を失ってしまった私が悪いし、アフターをお願いされた客と一緒にタクシーに乗り込んだ時点で多少の確率でこうなることは頭に入っていたはずなのにそれが酔いのせいで抜け落ちて判断ができなかった私が悪いのだけれど。

「−−綺麗な夜景だろう」

 了さんは機嫌良さそうに、高級ホテルのスイートルームとこの部屋から見える夜景に胸を打たれて立ち尽くしていた私に問いかけた。直接こういう場所を提供したわけではないけれど、彼が最初に提案した場所通り確かに綺麗な夜景が見える場所だった。

「とても綺麗です……あはは、もう十分なので、私帰ります」
「え、どうして?」

 少ない時間でも2回睡眠を取れたので頭ははっきりしていた。まだ酔いは残っているけれどさっきよりも頭はだいぶスッキリしているし、歩くことだってへっちゃらだ。こんな場所にいても良いことなんてあるはずもないのは分かりきっていたので、夜景を眺めて満足したところで帰る旨を伝えるけれど、了さんは笑みを浮かべたまま疑問を投げかけた。

「泊まって行きなよ。大丈夫、なんにもしないから」
「何もしないなら尚更……」
「尚更? あーー、さては期待してたんだね。何かいけない事をされるかもしれないって、嫌なことを想像してたんだ? 多少の覚悟を決めたはずなのに、何もしないって言われたらガッカリしちゃったわけだ」
「え? いえ、そういうわけじゃないんですけれど……いや、でもこんなところ、ちょっと、過ごせないです」
「庶民には、居心地の悪い場所だったかな? でも大丈夫。宿泊費を請求したりしないし、お持ち帰り料寄越せって言うなら、君と過ごした時間分ちゃんと払うよ。今日はただ、僕とここで一晩だけ一緒に過ごしてくれたらいいよ。なんせ君は、僕のお気に入りなんだから」

 何を言われているのか、わけがわからなかった。私の頭の中が良いように言葉を引っ括めて纏めたことといえば、初対面の人間に気に入られていて私が一生かけてでも泊まることなんてできない高級ホテル、おまけにスイートルームの一室で、何もしないから一晩一緒に過ごせということ、もちろんこれは私の仕事扱いで料金も発生するということ。上手い具合に美味しい話に纏められて、何もしないならば……と受け入れてしまったのは、本物のお金持ち相手を目の前にして金に目が眩んだせいだろう。

「……あの。一つだけお尋ねしたいんですが」
「何?」

 客室に佇んだお洒落なダイニングテーブルに私を通した了さんは「酔いは覚めた?」と尋ね、イエスを答えると「お腹が空いているんだ」と言って、慣れた手つきでルームサービスを注文していたようだけれどどうやら私も一緒にそれを受けるらしい、当たり前か。綺麗な夜景がくっきり見える広い窓の傍で夜景を眺めながら食事をする行為は生まれてこの方一度たりともなく、食事のマナーは入社してすぐに行った研修きりでしかなかないのでこの場所に私は不釣り合いでしかなかった。目の前に座っている了さんは、御曹司ということもあって子供の頃から教育されていたのだろう。言動、仕草、全てにおいて高尚な人だった。
 だからこそ、こんなことになってしまったことに疑問を隠せない。

「了さんはどうしてあのお店に来たんですか、どうして私を指名してくれたんですか? どうして初対面の私を気に入ってくれて、こんな高い部屋に泊めようとするんですか?」
「質問が多い子だなぁ。君を気に入った理由なんて、僕の兄が君を好いてるからに決まってるじゃないか」
「え……?」

 −−それ以外に理由が存在すると思う? 夜景が写り込んだワイングラスを眺めて、視線を私の方に滑らせて了さんは口を開いた。何かを思い出すように淡々と、けれども相変わらずどこか楽しげで。

「……僕の兄はね、昔から両親に可愛がられて、愛されて育ってきたから、お金と権力で欲しいものはなんでも手に入れてきたんだ。だから、どんな手を使ってでも君を手に入れようとするだろうね。
 そうだ、ちょっとだけ昔話をしよう。ある会社が倒産の危機にあったそうだ。そこの社長が僕の兄に縋って、お金を借りて、どうにか会社を持ち直したんだけど、女房に愛想を尽かされて、逃げられて、自暴自棄に陥って、クラブで金を使い回していたらしい。兄は貸した金の返済を申し出たんだけど、その社長は借りた金を返さなかった。会社のために出してもらったお金の半分をそっちに使っちゃったから、返せなかったんだろうね。結局、兄にクラブに金を使い回してることがバレちゃったんだけど、通ってる店の女の子が可愛いくて、なんて馬鹿な言い訳をしてみたら、女に飢えてたのか兄は興味を示して付いてったんだって。そしたら、そこにいた女の子がとーーっても自分好みの女で、一目で気に入ったそうなんだ。ま、君のことなんだけどね。秘書に話してるの聞いちゃった。だから、僕も気になって遊びに行ったんだよね。悪いけど、君は僕のタイプでもなんでもないんだけど、兄のお気に入りなら話は別だ! あわよくば横取りしちゃいたいと思うくらい、君は魅力的だった」

 褒められてるのか、貶されてるのか。個人的に興味は無いけれど、兄である月雲社長のお気に入りだから気に入ってくれていた、どうして? 兄を尊敬しているから、兄と同じものを好きになりたかった?和気藹々兄弟水入らずで盛り上がるような話でもしたいから?
 いや、そんな兄に対する敬慕や思慕から訪れる感情を彼は抱いていない。話に出てきた発端となったあのIT企業の社長の話がもみ消されたと感じるほど、兄を語った了さんの言葉はとても嘲ていて。

「それってつまり、どういう……」
「つまり! 僕は、あの男の絶望に満ちる顔が見たいんだ」

 それが彼の真相で、本性だった。それはつまり。

「……私を、月雲社長の当て付けに利用したいってことですか?」
「ご名答! 拒否権の無い弱い君の立場の利用して、自らの欲求解消のために弄ぼうと手を忍ばせた男だけど、僕が先に手に入れちゃった、なんて聞いたら一瞬で手を引くだろうね」
「………」
「あはは、どう。面白い話だと思わない?」

 アイスペールに入ったボトルワインをかき混ぜて了さんは私に問いかける。ザクザクと鳴る氷の音が私を急かしているように思えた。

 たとえば、ここで利用されるのを承知で彼の口車に乗せられたとして、私には一体どんなメリットがあるのだろう。お金が潜んでいることに間違いはない、のだけれど。
 私が欲しいものは、そんなものではないことを私は分かっていた。それが私のエゴだとしても、心の中に芽生えた月雲社長に対する憎悪の存在を私は知っていて、権力をふりかざして迫ってきた月雲社長と私が思い込んでいた以上に女として受けた屈辱が大きくてその鬱憤を晴らしたいという気持ちが何処かにあることを知っていた。

「……いいですよ、わかりました」

 ただ単に、月雲了という口が達者な男に上手く言い包められて利用されているだけかもしれないけれど、私が少しでも報われるのであれば私も月雲了という人間を利用してみようと、それを酔いのせいに任せてお酒と共に彼の提案を飲み込んだ。








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