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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 後ろの席の涼野君にプリントを手渡せば無言でそれを受け取る涼野君。小さくあくびをしたその様子からして彼は眠たいらしい。
 そんな涼野君が可愛いなって思えて小さく笑って正面を向いてプリントに目を落とす。有意義な夏休みを過ごすために。どうやら明日から始まる夏休みの過ごし方について書いてあるらしい。
 それから先生の説教じみた長い説明を聞き流す。早くホームルーム終わらないかな。
 ぼーっと窓の外を見ていると不意に肩を叩かれ、手の主を見ると涼野君だった。
 涼野君はさっきとは違ってしっかりと起きていて、少し眠気の出てきた私とは正反対だ。

「どうしたの?」
「……夏休み、海に行かないか?」

 ひそひそと小声で話し掛ければ涼野君も同じく小声で用件を述べた。海か、夏だし、暑いし行きたいなぁ。

「いいね。私も海行きたい」
「じゃあ決まりだ。日程等は今度連絡するから後でメアドを教えてくれ」

 そういえば涼野君とはよく話しするし仲は良いほうなのにお互いの連絡先を知らなかったんだと最後の言葉で気付いた。
 うんいいよ、ホームルーム終わったらね、と返事を返すと涼野君は少し嬉しそうに口角を上げた。
 きゅん。今の笑顔にちょっとときめいてしまった。普段はあんまり感情を表に出さない人だからたまにこうやって笑顔になるとどきっとしてしまう。
 平常心を保つために胸に手を当てて深呼吸をしたら涼野君に怪しまれた、うう……。
 気を取り直して楽しいことを考えよう、青い海、白い砂浜、輝く太陽、楽しみだなあ、早く行きたいな。
 色々と考えてふと思った、他に誰が行くのかな。涼野君のことだから南雲君とか基山君も誘っているのだろう。お、女の子も誘ってるのかな。
 ドキドキする胸を再び落ち着かせこっそりと涼野君に聞く。

「ほ、他に誰がいるの……?」
「何がだい?」
「海に行くメンバーだよ!」
「ああ、海に行くのは私と君だけだよ」
「えっ」

 ええぇえええっ! と叫びたくなるが口から出てくる直前で何とか飲み込む。
 私と涼野君の二人だけって、それってまるであれみたいだよ、あれっていうのはそう、えっと、で、デートみたいだよ!
 だって海に二人きりで行くなんてカップルみたいだよ。
 一気に顔が熱くなるのが分かる、やばい、さっきよりすっごいドキドキしてる。今絶対に涼野君の顔見れないよ!
 両手で顔を覆って指の隙間から涼野君の様子を伺えば涼野君もほんのりと頬を染めていて、それが余計に恥ずかしくって前を向いて机に突っ伏する。
 ああ恥ずかしいよぉ、丁度よく先生の説明が終わっていてそれと一緒にホームルームも終わった。
 みんなが教室から出て行く中私は未だに火照った顔を隠すように机に突っ伏していて、この後涼野君と連絡先を交換しないといけないのだと思うと余計に顔を上げることが出来なかった。
 そんな私を不審に思ったのか涼野君が私の机の前まで来て私の名前を呼んだ。落ち着け私、深呼吸だ。

「す、涼野君……」
「すまない。迷惑だったか?」
「い、いや、その、迷惑なんて、全然迷惑じゃないよ! むしろ嬉しいというか、その、えっと……!」

 涼野君が困ったような悲しそうな表情になったので、しどろもどろの挙動不審に鳴りながらも、私は涼野君に弁解した。
 ちょっとびっくりしただけよ、と自分に言い聞かせるように口にすれば涼野君は安堵の表情を浮かべた。

「そ、そういえば、何で私なの?」
「ああ、それは君が好きだからだよ」

 ええぇえええっ! いつの間にか二人っきりになっていた教室に私の声が響いた。

 み、水着買わなきゃ!



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