×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「飲み会しよう!」

 この円堂くんの一言で、今集まれるメンバーだけで飲み会をすることになったのだが思いのほか集まっていた。
 まだフィフスセクターとの対立は終わってないのに聖帝の格好をしている豪炎寺くんやその側近の虎丸くんまでもが集まっている始末。

 大の大人が大人数で酔い狂う様は滑稽としか言い様がなく、私は避難するように壁際の端でお酒をひたすら飲んでいた。きっと鬼道くんかヒロトくんあたりが奢ってくれると確信しているので、タダ酒が超美味しい。
 お猪口に注がれた日本酒を嗜みながらお刺身を食べているこの瞬間の為に生きていると言っても過言ではない。こいつの存在さえ無ければ。

「ねー名前ちゃん、セックスしようよ」

 いつの間にか私の横を陣取っているこのナンパ師をどうにかしてください。周りを見やってもみんなそれぞれ絡み酒状態なので助けの望みは薄いだろう。
 酒が入っているからといって居酒屋という公共の場でその発言は如何なものか。吹雪くんにはモラルがないのかこのやろうと睨みつけてみるも本人は気にする様子もなくへらへらと頬を上気させている。
 幸いだったのがここが鬼道くんの予約で貸し切り状態だったことと周りも酒が入っていて騒いでいるということだ。
 それよりも何なんだよこいつは。さっきからずっとこの調子で絡んでくるものだから、酒が入っているせいもあってか私もついつい口が悪くなる。

「相手ならいっぱいいるんじゃなくて? ヤリチンさん」
「ヤリチンってひどいなぁ」

 そう言いつつ私の腰に手を回しながら店員さんにビールの追加を頼んだので私も日本酒を追加してもらった。
 というかヤリチンに対しての否定はないのね、と少しの物悲しさを感じつつ運ばれてきた日本酒をお猪口に注いだ。
 飲もうとした手を掴まれ、そのまま私の日本酒は吹雪くんの口へと運ばれた。

「ああっ、私のおさけがぁ」
「名前ちゃんと間接キッスしちゃった、あはっ」
「あはっ、じゃねえ」

 私の手を離した吹雪くんは色付く両頬を押さえて照れて見せた。さっきからセックスセックス言ってた奴が間接キスくらいで照れるなよ。
 吹雪くんとはそこそこ長い付き合いだが理解しがたい行動ばかりをとるので、私は未だに彼がよくわらない。

「……吹雪くんって何がしたいの?」
「名前ちゃんとセックスがしたいな」
「そうじゃなくってさぁ……」
「僕は至って真面目だよ。名前ちゃんとキスしたいしセックスもしたいっ。名前ちゃんとの子どもも欲しいよ!」
「ちょっと吹雪くん酔いすぎじゃない!?」

 いきなり立ち上がって熱弁を始めた吹雪くんに、それまで各々で楽しんでいたはずのみんなからの注目が集まる。
 何だ何だ、いいぞもっとやれーと、酔っ払いの熱弁を酔っ払いどもが助長する。頼むからみんなも止めて。

 私は慌てて吹雪くんを座らせるも時すでに遅し。みんなの話題は私と吹雪くんに移っており私は好奇の目に晒されることとなった。

「吹雪と名前ってそんな関係だったんだなー」
「断じて違うからね、円堂くん」
「えー、僕はそのつもりだったんだけどなー」
「吹雪くんは少し黙ってて!」

 酔っ払いに対して何を言っても通用しない。こんな時助けてくれる鬼道くんや秋ちゃんも酔っ払ってしまって正常な思考じゃない。さらには吹雪くんに横から抱きしめられて身動きができなくなってしまった。くそう今の私には味方がいないのか。
 勝手に式の日取りなんかを決め始めた酔っ払いどもをどうすべきか考えていると、だんっ、と大きな音が響いてその場が静まり返る。
 その音の正体はヒロトくんが飲み終えたビールジョッキをテーブルに叩きつけた音だった、幸いジョッキは無事のようだ。普段ならばもう少し丁寧に扱いなさいと注意するところなのだが、今の私にはヒロトくんが天使に見えるよ。
 俯いているから表情は分からなかったが、そのまま立ち上がったのでみんなを注意してくれるのかと期待していた私が馬鹿だった。

「俺だって名前ちゃんとセックスしたいよ!」

 前言撤回、ヒロトくんは天使なんかじゃない。今すぐくたばれド畜生が。

「キャーッ。まさかの三角関係!」
「名前ちゃん俺と吹雪くんどっちを取るの!?」
「もちろん僕だよね!?」
「……酔っ払いってサイテー」

 自分も多少酔っているから人のことは言えないけど、それでも酔っ払いはたちが悪いです。



戻る