夏になったことだし名前と二人で海へキャンプにでも行こうと計画を立てそれを実行に移した当日。名前の愛車にキャンプ道具を詰め終わりさあ行こうと車を出そうとしたときだった。 市外に出たところで後ろから物音がしたと思ったら雪村が車に同乗していたのだがどういうことだろうか。 「雪村、なんでここに……?」 「名前先生が先輩と海に行くと聞いていたので来ちゃいました」 親にはちゃんと許可は取ってありますと計画通り二泊三日分の泊まり道具を入れたバッグを見せつけてきたので僕は溜め息しか出なかった。一体どこからその情報を仕入れたんだか、ちらりと名前を見やれば苦笑を浮かべているので情報源はすぐにわかった。 名前は白恋中で教師をしており美人で性格も良く優しいため男女問わず生徒からの人気が高い。フィフスセクターの件からサッカー部の顧問になり益々人気が出ていると木瀧に聞いたので確かな情報だ。 今から引き返すのも面倒だし親御さんの許可を取っているのならばとキャンプに同行させることになった。名前と二人きりで行って帰りにホテルでもって思ってたんだけどな。 それから海に着くまでサッカーの話が絶えなかったのが海が見えた途端に話題は海へと切り替わり、早く泳ぎたいだの先にご飯食べようだの盛り上がった。 滞在日数三日で駐車券を受け取った際に家族でキャンプですかと微笑まれた。そうなんですよと笑って返したが夫婦ではあるけれど家族ではないんです。 長時間運転していた名前は少し疲れているのか下車するや否や大きな伸びと深呼吸をした。 「んー、潮の匂いだー」 「早く泳ぎましょう!」 「その前にテント張るから雪村手伝って」 「はい!」 名前も手伝おうとしたがそこは男の沽券に関わるので僕と雪村の二人で砂浜にテントを組み立てた。 イナズマジャパン時代に聞いた話なんだけど砂浜にテントを建てて寝泊りするのは北海道だけらしい。そのことを話したらみんなに不思議がられたのを今でも覚えている。 水着に着替えようと名前は女性専用の更衣室へ行き男はテントで着替えることに。雪村はすでに下に穿いてきたのだと爛々と短パンを脱いだの対して僕は堂々と全裸になってから海水パンツを穿いた。 「(先輩のでかっ)」 「? どうかした?」 「い、いえっ、何でもないです」 テントの前で仁王立ちしていると女の子に声を掛けられたのだが妻を待っているのでと言えば残念そうに去っていく。まあいつものことだったので特に気にしてはいなかったが雪村にはモテ男だと言われた。 うーん、僕としては名前がナンパされていないか心配なのだけど。と思っていたら名前が見えた。 白いビキニにパーカーを羽織っている名前はとても魅力的で今すぐにでも抱きしめてテントの中で色々とやりたい衝動に駆られる。けれど横に雪村がいるので我慢だ。 「士郎、雪村くん、お待たせ」 「名前、良く似合うよ。綺麗だ」 「先生素敵です!」 「ふふ、ありがとう」 泳ぎましょうと海に駆け出そうとした雪村を捕まえ準備運動を促す名前は先生の顔をしていて、この顔の名前に口では絶対に勝てないので僕も素直に身体をほぐした。 準備運動をしている最中名前の胸が揺れに揺れて気が気じゃなかった。周りの男たちが名前を見るものだから二人に気づかれないよう睨みを利かせ威嚇するのが大変だった。あと僕の下半身も大変だった。 水を掛け合ったり泳ぎで競争したり砂でキャッスルを作ったりと海を満喫し、子供はいないけど雪村という大きな子供が出来たみたいで純粋に楽しめた。 家族ってこんなにも良いものだと思えたのは何年ぶりだろう。 「先輩サッカーしましょう!」 「いいね。でもボールがないよ」 「ボールならもってきてます!」 満面の笑みを浮かべた雪村がテントへ戻り自分の荷物の中からサッカーボールを持ってきたので砂浜でサッカーをすることにした。 名前もやりたいということで三人で軽く蹴り合っているといつの間にかギャラリーが出来上がっていた。 調子に乗って雪村がパンサーブリザードを打ち込み、このままいけばギャラリーにぶつかってしまうと冷や汗を出すのも束の間、真剣な表情の名前がボールの前へ立ち右手を動かす。 「エレキトラップ!」 刹那、無数の電気が通ったワイヤーが展開しボールの勢いを殺し、名前の手中に納まった。 これでも一応名前もサッカーをやっていた。というか中学のころは白恋でGKをしていてイナズマキャラバンにスカウトされる程の実力を持っている。 最近はもっぱら観戦ばかりでしていなかったみたいだけどその実力は衰えていなかったようだ。 そのことを知らない雪村はぽかんと眼を丸くしギャラリーは沸きあがる。名前は少し照れくさそうに頬を染め僕にピースサインを見せた。 「せ、先生今の技何ですか!? 先生もサッカーやるんですか!?」 「こう見えても中学高校とサッカー部だったの」 「凄いです! 今度部活でもいっぱい見せてください!」 「はいそこまで。もうお昼にしようか」 「そうね、私もお腹すいちゃった」 それから用意しておいた食材でバーベキューをしているとさっきのを見ていた人たちなのか、凄かったですと飲み物などを差し入れてくれ、僕たちは素直にお礼を言って厚意に受け取った。 昼食後は海で遊んで少しサッカーをして、休憩と称して海の家でカキ氷を食べたり充実した一日目をすごした。 夕食後はそれはそれはもう大きな打ち上げ花火や小さな線香花火など様々な花火で盛り上がった。花火が終われば辺りはもう暗い。 疲れきった雪村がテントで寝袋に包まっているのを良いことに僕と名前は二人だけで夜の浜辺に座って海を眺めていた。月明かりに照らされた海は幻想的で一枚の写真のようだ。 「やっと二人きりになれたね」 「そうね」 名前が僕の方に頭を預ければ波の音とお互いの鼓動だけが聞こえる。この地球上に存在しているのは僕たちだけなのではないだろうかという錯覚に陥りそうになる。 絡め合っている手に力を込めれば名前が反応してこちらに見れば目が合った。そのままゆっくりと顔を近づければ意図を理解したのか眼を瞑る。 空いている手を頬に添えて触れるだけのキスをした。その柔らかな感触を確かめるよう少しだけ下唇を食んでからゆっくりと離れる。 「……子供欲しいな」 「私も」 「よし、今から作ろうか」 「だーめ。帰ってかね」 教え子もいるのにと言われ現実に引き戻されてしまった。僕的にはこのままここででもいいんだけどな。 僕の考えていることが伝わったのか冷たい視線をいただいてしまった。すみませんでした。 |