部活の前に名前さんのところへ行くのが俺の日課だ。名前さんは二つ上の先輩で空手部の主将をしている美人。 天城さんの友達でサッカー部の練習を見に来たことをきっかけに仲良くなった。というより俺が一方的に懐いているというのが正しいだろう。 なので朝部活が終わってすぐ、昼休みは弁当を持って、放課後は部活行く前に、ほぼ毎日、最近は一日も欠かさずに名前さんの元へと訪れている。 他愛の無い話をして俺のことを知ってもらって名前さんのことをたくさん知るこの時間が好きだ。 「そうだマサキちゃん。最近変質者が出没してるみたいだから帰り道気をつけてね」 「大丈夫ですよ、俺男だし。それより名前さんが心配」 「私は友達と帰ってるから平気っていや。そうじゃなくて……」 「あっと、もう部活行かないと。じゃ名前さん気をつけて帰って下さいね!」 本当なら俺が家まで送っていきたいところだけど生憎今は部活が忙しい。革命だか何だか知らないけど早く管理サッカーなんて無くなってしまえばいいのに。 空がオレンジ色になるまでサッカーをした帰り道、園に向かう俺の前に変なコートを着たおっさんが現れた。こいつが例の変質者か。 まあ俺男だし大丈夫だろ。なるべく無視して足早にその場を離れようとしたのだがおっさんに捕まってしまった。気持ち悪ぃ。 「おじさんとイイことしようよ」 「離せっ、やめっ、ひぃっ!」 こいつ俺を女と勘違いしてんのか、でも今は学ラン着てるし、と必死に抵抗していたらズボンの上からちんこ触られた! あまりに唐突すぎて驚いて地面にへたり込んでしまった俺に覆い被さるようにおっさんが乗ってきてベルトを外そうとしてくる。 嫌だ、このまま変質者なんかに貞操を奪われるなんて。初めては名前さんにって決めてたのに。どんなに抵抗しても大人の力には勝てない、気持ち悪い、誰か助けて。 「てめぇマサキちゃんに何してんだっ!」 「あぐっ」 涙で視界がぼやけてよく見えないが俺の上からおっさんが消えるのがわかった。それに今の声は名前さんだ、恐怖で声が出てこない。 「あっ、う……」 「マサキちゃん! もう大丈夫だよ」 精一杯伸ばした腕を掴んで立ち上がらせてもらったのに腰が抜けてしまって上手く立てない。それを察した名前さんが俺を立ち抱える、所謂お姫様だっこ。 男として情けない姿なのに名前さんの腕の中だからか妙に安心してしまいこれまた情けなく涙を流し続けた。 「うっ、名前さ、俺、怖くて、ひうっ」 「いいよ。今は私の胸で泣きなさい」 のちに分かったことなのだがあの変質者、女ではなく男を狙っている奴だったらしい。そういうのはもっと早く言え! |