×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

 私には可愛い後輩が居る。宮坂了という陸上部の子で同級生の風丸を通して知り合ったのだが異様に懐かれてしまい風丸がサッカー部に転部してからも私と宮坂の関係は変わらずだった。
 自慢ではないが私は足が速い。小学生のときは運動会で一位を総取りしていたほどに足の速さには自信があった。
 中学校に上がったら陸上部に入るんだと思われていたらしかったが私はその期待には答えず写真部に入部した。それを知った宮坂にはしつこく陸上部に誘われたが私は写真の素晴らしさに心を奪われてしまったのだ。

「写真はいいね。ジョンが創案した素晴らしい文化だよ」
「先輩は何を言ってるんですか」
「まあまあ。それより宮坂は何でここにいるの?」

 ここというのは二年生の教室で、宮坂の手には当然といわんばかりにお弁当が握られているではないか、つまりは私と昼食を食べるために来たと。
 宮坂は笑顔で私の予想と同じことを口にした。お弁当くらい友達と食べなさい君には友達がいないのか。
 かくいう私も風丸と食べる予定だったから女子の友達を作れと言われそうだ。ちゃんと居ますよ、ただ今日に限って休んでいるだけで。他の友達はクラスが違うから移動するのが面倒なだけで。
 宮坂を引き連れて風丸の席まで行けば案の定風丸の口元は引きつっている。きっと私も今風丸と同じ表情なのだろう。

「名前さんと風丸さんを一緒にお弁当だ。わーい!」

 私と風丸と三人でお弁当を広げている現状はきっと宮坂にとっては天国なのだろう。いろんな気持ちが口から駄々漏れである。
 この三人が集まってもする話は部活の話題ばかり。サッカー部の円堂がうんたらとか、陸上でのタイムが縮まってうんたらなど、いつもそんなような話ばかり。私が話しても写真のコンクールの作品を取らなくてはいけないとかそういう。あ。

「ねえ風丸、今度サッカー部の写真撮りにいって良い?」
「別に構わないがどうしたんだ?」
「今度のコンクールに出す写真撮ろうと思って」

 私が出展するのはテーマ部門とテーマのない総合部門の二つでテーマ部門のお題は運動というものなので今絶好調なサッカー部の写真を撮ろうと決めたのだ。
 私たちの会話を聞いていた宮坂があからさまに不満気な表情で頬を膨らませた。何だ何だ。

「名前さん!」
「な、なに……?」
「陸上部にも来てください!」
「えー。いきなりどうしたの?」
「来てくださいっ!」

 まくし立てる宮坂に困惑している私。収拾のつかない状況に終止符を打ったのは風丸だった。困ったように笑ってため息を一つこぼした。

「名前。宮坂は自分の走ってる姿をお前に見て欲しいんだよ」
「か、風丸さん!」
「なるほど」

 図星を突かれて恥ずかしいのか宮坂の顔は真っ赤だ。よし、陸上部にもお邪魔しようかな。



戻る