「まじありえねえ!」 場所は学校の屋上で時間帯は昼休み、二人きりで昼飯を食おうとここまで来たわけなのだが屋上に着くなり冒頭の台詞を吐かれた 俺の目の前に座って腕を組んで頬を膨らませている晴矢にため息を吐く、俺が何をしたって言うんだ 「何で怒ってんの?」 「名前のばか」 何が原因か知りたいのに先ほどから、さあな、の一点張り、もう訳が分からない 今朝は普通だった、授業が終わって晴矢を教室まで迎えに行ったときもだ、ということは屋上に来るまでの間かな そして女子絡みだ、たぶん、名探偵張りに頭をフル回転させ屋上に来るまでの行動を追ってみる まず晴矢を教室まで迎えに行ったら女子の黄色い声が煩かった、それから廊下を歩いている間も女子たちの熱い視線が俺に向いているのはわかった、あと階段上がってるときに踏み外した女子を支えてあげた、ただそれだけだ っていうかこれが原因じゃねえか、つまり晴矢は俺が女子にモテるのが気に食わねえんだ、大人数の女子に嫉妬しているんだ そう考えたら目の前でぷりぷりと怒っている恋人に対して口元が緩んでしまう だって女子に嫉妬しちゃうくらい俺が好きってことだもんな、俺って愛されてんな 「晴矢ってば可愛いなぁ!」 「な、何だよ! そんなこと言って話ずらそうとすんなよ!」 「わかってますよー」 そう言って目の前の愛しい存在を抱きしめる、そりゃあもうぎゅうぎゅうと、そうすれば晴矢が腕の中で暴れだした 「おいまじやめろ!」 「顔赤いよ、あー、女子に嫉妬するかとかまじ可愛い」 「おま、気づいて……!」 離せー、と逃げようとする晴矢を更に力を込めてがっちり抱きしめる、相変わらず細い、もっと肉付けろよ 同じ男だけども晴矢よりは力がある自信があるので腕の中でどれだけ暴れたところで俺はびくともしないぞ やがて諦めたのかおとなしく俺に抱きしめられ、真っ赤な顔を見られるのが嫌だったのかそのまま俺の肩口に顔を埋めた ばかやろー、とつぶやく晴矢の頭をやさしく撫でる、チューリップ潰したい衝動を抑える、雰囲気を壊すようなことはしないぞ 「それにしても女子に嫉妬とは、晴矢は馬鹿だよね」 「んだと!」 「だって俺は晴矢しか見えてないもん」 「!」 晴矢が声にならない声を上げたところで予鈴が鳴った、あ、飯食ってねえや 「ねえ晴矢、このままサボっちゃおうか」 俺には君だけさ |