自室のベッドに寄りかかって雑誌を読んでいるとノック音と共にヒロトが入ってきて私の部屋の空気を腹一杯に吸い込んでいる、まったく変態じみている でもまあ、それはいつものことなので私はそのままページを捲りテーブルの上のマグカップに口を付ける 二口ほど喉に通してテーブルの上へと戻せばそれに気付いたヒロトがマグカップを手に取り私と同様に口を付けた 横目でヒロトを見やれば一口分飲んで眉間にしわを寄せている、ああ、そういえばヒロトはまだお子様だったな 「にがっ」 「そりゃブラックだし」 よくコーヒーなんて苦いもの飲めるよね、そう言ってマグカップをテーブルに戻して私の隣に座り込んだ 私がそのまま視線を雑誌に落とせば横から腕を引っ張られる、視線を再びヒロトに移すと両頬を膨らませていた、何なのこの子 「何?」 「構ってよ」 「今雑誌読んでる」 「僕と雑誌どっちが大事なの?」 「今は雑誌」 「なっ……信じてたのにぃ!」 隣で喚くヒロトを横目に、私は雑誌を読み続けようとページを捲れば横から手が伸びてきた、あ、雑誌取られた 返せと手を伸ばしたが雑誌は遙か彼方ドアもとに投げられ、伸ばした手は虚しく空を切る、非常にむかつく 体勢的にはヒロトが仰け反り私がその上に乗っている形、私の胸が変態の顔に当たっていて、反対に変態の一物が私の太ももに当たっている、気持ちが悪い 「あ、勃っちゃった」 「くそがき」 「同い年じゃないか」 「黙れ祖チン」 「いやだなあ、僕のモノが立派なのは名前がよく知ってるでしょ?」 私の背中に手を回して意地でもこの体勢を返る気がないらしい、変態は顔面を胸に押し付けて鼻息を荒くしている 自然に背中の手が下へと這っているのが嫌でもわかる、このまま行為に及ぶのも悪くはないがヒロトにしてやられるのは癪に障る マグカップを掴んでコーヒーを口に含めばヒロトが不思議そうに見つめてきた、相変わらず卑猥な手つきは健在である 私はその手を無視しヒロトの頬を両手で包む、それから顔を近づけてゆっくりと口付ける うっすらと目を開けるとヒロトと目が合って、積極的に口を開いてきた 私の思い通りになった、誘うように開いた口から私の口内にあったコーヒーを移してやる、刹那、ヒロトの目は大きく開かれその苦味からか目じりに涙を溜め始めた 私から逃れようとしたヒロトの頭を抑えて口内を犯していく、ブラックコーヒーと二人分の唾液がお互いの口内を行き来して味がだいぶ変わってしまった 「んっ、ふぁ、」 「ちゃんと飲んで」 ヒロトの口をふさいでついでに鼻をつまんでやれば力強く目を瞑った後にごくりと喉が鳴った 「んん! んはっ、ぷはぁ、はぁはぁ……」 「美味しかった?」 「お、いしく、なんか……、ないよ! ひどい!」 「じゃあ、ブラックが飲めるようになってから出直しておいで」 私は満面の笑みを貼り付けてヒロトを部屋から追い出した、今回は潔く諦めてくれたらしい、あーあ、雑誌が少し折れてるじゃない その後数日ブラックコーヒーを飲もうと頑張っているヒロトを見つけて頬が緩んだ ビターな恋のお味 |