「なあ名前、パンツ見せてぇや」 「いっぺん死んで来なさい」 白石が珍しく真剣な顔をしていると思ったら口から出てきた言葉はセクハラそのもの 白石の言葉を聞いた瞬間名前は思わず顔面を殴り飛ばしてしまった、しかも心の篭っていない笑顔で あやらだ私ったらはしたない、と対して心配していなさそうに椅子から落ちた白石を覗きこんだ 鼻が折れないよう殴ったつもりだったが、無傷は免れず鼻血が流れいる 「な、なんでや……」 「鼻血が出ているわよ」 そう言いつつも手元にあるティッシュを渡さないあたり相当怒っているのだろう、現に顔は笑っているが声や目は笑っていない 若干痛そうに、かつどこか嬉しそうに名前の机をはさんで向かい側の椅子に座りなおす白石 「いっつつ……あ、でもこれはこれでエエかもしれん」 「ほんと、あなたって残念なイケメンね」 「そないに褒められたら照れてまうやろー」 嫌味も通じない白石に軽く舌打ちをし、ティッシュを差し出せば、おおきに、といまだにたれ流れる鼻血を拭き始める 黙っていれば良い男なのに、そう考えれば自然とため息が出てくる、机に肘を付き鼻にティッシュを詰め込む白石を見つめる 「ん、俺の顔になんか付いとる?」 「いいえ、なにも」 「え、だったらそないに見つめて……あ、もしかして俺のことやっと好きになってくれたん?」 ニヤニヤと名前の机に肘を付き、彼女と対称になるようなポーズをとった白石は少しずつ距離を縮めていく それこそお互いの呼吸が肌で感じられるくらいの距離まで彼が詰め寄ると名前は小さくため息をつき目を瞑った それをキス待ちだと思い込んだ白石も目を瞑り彼女の唇を重ねた、が彼女の唇は冷たく固かった 目を開ければ目の前が黄色い壁で覆われており慌てて唇を離すと壁の正体はひよこの絵が描かれた下敷きで、それを持っているのは名前だった 「ちょ、何でや名前!」 「だってキスしようとしたじゃない、当然の措置よ」 「だって目ぇ瞑ったから名前もその気なんかと……!」 「恥を知りなさい、ここは教室よ」 名前の言ったとおり今二人がいるのは教室で、時間帯は昼休みだったが室内には大多数の生徒が残っていた そのため先ほどのやり取りを見ていた生徒たちが黄色い声を上げている 「場所なんて関係あらへん、俺は名前と一緒ならどこでも楽園や」 「少しは世間体というものを考えなさい」 「世間体なんてどうでもええ、俺は名前とイチャイチャしたいんや!」 教室内に響くほど声を張り上げ力説する白石の顔面に再び拳を叩き込む 「名前、なかなかやるやないか、惚れ直したで」 「あらきもい、惚れ直されても困るのだけれど」 ふふふ、と困ったように笑う名前に白石は顔が熱くなるのがわかる、その綺麗な笑顔にいつも翻弄されてしまう いくら拳をお見舞いされてもそれすらも愛おしく感じるほど彼女に惚れ込んでしまっている 午後に使用する教科書をロッカーまで取りに行こうと立ち上がった彼女に合わせて白石もその場から立ち上がる そして名前の前まで行き、彼女の頬に手を添える 「えっと、蔵……?」 再び困ったような笑顔を向けると今度は唇同士が重なり、触れるだけのキスをする 「顔めっちゃ真っ赤やで?」 「……」 自分でもわかるくらい顔が赤いのを指摘されて恥ずかしくなった名前は白石の腹に拳を叩き込む 無防備だった彼の腹は当然その衝撃に耐え切れず、腹を抱えて膝から崩れ落ちた 「うっ……なんでそうなるんや、少しくらい愛をくれ!」 「変態にやれるのは拳くらいしかないわ」 「な、なんやて……でも好きや!」 (これが僕らの愛のかたち) |