×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

 Nは可哀想な子、彼の部屋に入ってすぐそう思った
 この小さな部屋と中に散乱する玩具だけが彼に与えられた唯一の世界であり全て、この世界での生活を想像しただけで反吐がでる
 プラズマ団は英才教育という名を借りたただの洗脳をし、何も知らない何も分からない子供を利用した犯罪集団をしている
 ゲーチスに拾われてしまったばかりに彼は外の世界を知らずに大人になってしまった幼気な子供

 Nの部屋から出てきた私は相当ひどい顔をしていたのだろう、目の前にはNが、今にも泣き出しそうな表情で立っていた

「ナマエ、」
「大丈夫だよ」

 心配させてごめんねという意味を込めて、彼の手を握ればしっかりとした力で握り返してくる
 プラズマ団の城、Nの城だなんて悪趣味なもの私がぶっ壊してやる、そうすればNはここにいる必要がなくなるのだ
 左手に伝わるこの温もりを守るためならば、私は何にだってなれるのだ

 城を上へ上へと上ってゆけば待ってましたと言わんばかりに立っているゲーチスとその部下たち

「さあNを返してもらおう」

「ナマエ……」
「大丈夫だよ」

 レシラムに見初められたNを側に置いておけば再びレシラムを捕まえるチャンスが来ると思っているのだろう
 己の野望のためならば義子をも利用する卑劣な人間にNは渡せない、私は彼を守ると決めたのだ

 不安げに私の名前を呼ぶNに大丈夫だと笑顔で応える

「あなたがポケモンを解放する英雄ならば、私はあなたを解放する英雄となるわ」

「ふっ、面白い、私たちに勝つというのですか」
「ええそうよ」

 腰につけたモンスターボールを一つ掴みボタンを押して大きくする、中にいるのはずっと共に旅してきた私の相棒
 臨戦態勢の私に、ゲーチスの後にいた部下たちが各々モンスターボールを構える

 Nは自分のポケモンを持たないので戦えるのは私一人だけ、状況的には追い込まれているのは私たちなのに、自然と笑っていた
 カントージョウト地方のリーグチャンピオンを舐めると痛い眼見るってことを教えてあげないといけないようね




 手持ちのポケモンを全て戦闘不能にされたゲーチスは悪役らしい捨て台詞を吐いてどこかへ行ってしまった、全て終わったのだ
 私も何匹か戦闘不能にされたがあの人数相手によくやってくれたものだ、ポケモンセンターで回復させたらいっぱい褒めよう
 バトルの後の静かな空間に私とNの二人だけ

「もう貴方はプラズマ団の王でも英雄でもない、ただのN」

「……ナチュラル」
「?」
「ナチュラル・ハルモニア・グロピウス、それが僕の本当の名前」
「……うん、わかった」

 私が微笑みかけると彼の顔がくしゃりと歪む、まるで泣きそうな子供みたいね

「おいでナチュラル」

 腕を広げてやればNにぎゅうぎゅうと力強く抱きしめられるが、今はこの苦しさすら心地よい
 私の肩口が濡れてゆくのを感じながら彼の頭を優しく撫でてやる

「これからは人間としての生き方を教えてあげるね」
「ナマエが一緒なら僕は何も怖くない、ナマエがいい」

 抱きしめた体は私の腕に収まりきらないくらい大きくて、それなのに小さな子供を抱いたときみたいに温かかった


(それは姫を取り戻すように)



戻る