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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

 朝、目覚めると体が重かった
 何かが私の上に乗っているような、そう、人が一人乗っている重さだ
 とにかく何が乗っているのか確かめるべく視線をずらす
 するとそこには見慣れた金髪があり、自分の上に乗っている人物を理解した

「マツバ……?」
「……ん、」

 恋人の名前を呼べば小さく声を漏らし身じろぐ
 起きる気配がないので目の前の髪を触る、ふわふわでいでさらさらなそれは手に絡むことなくすり抜けてゆく
 ふと時計を見ると時刻は七時半過ぎ、もう朝ご飯を作らねばいけない時間になっていた

「マツバ起きて」
「ん……」
「朝ご飯作らないと」
「んー、」

 自分の上で寝ている恋人に声をかけると、寝言なのか返事なのかよく分からない声が上がる
 頭しか見えないマツバの髪を触っていると、くすぐったいのか身体をよじらせる
 それが面白くて、撫でる手を止めようとはしなかった

「ナマエ……」
「マツ……ひゃあっ」

 名前を呼ばれたと思ったらマツバに抱きしめられる
 それからマツバが顔を上げたので、マツバの顔がよく見えるようになった
 穏やかな寝顔は綺麗に整っている

「ほんと良い男だなこのやろー」

 じっと見つめていると不意に目が開く
 私は急に恥ずかしくなり顔を反らしてしまった

「ナマエ……?」
「おはよう」
「……なんで、僕の部屋に?」

 マツバは寝ぼけているのかここが自分の部屋だと思っているらしい
 ここはマツバの部屋でもなければマツバの家ですらない、私の家の私の部屋の私のベッドだ

「マツバ、ここ私の部屋なんだけど……」
「嘘だー」
「嘘じゃない」
「だって、きのうはよるに、ちょうせんしゃがきて……それから……」

 若干呂律が回っていないマツバを見て思わず笑みが零れる
 むくりと顔を上げて室内を見渡したマツバは目が覚めてきたのか、あーと唸った
 ほんとだ、と不思議そうに言うマツバ、すると今度は布団の中に入ってきた

「なになに、何で入ってくるの?」
「さむかった」
「そうじゃなくて、起きなよ」
「やだ」

 短く言うとマツバの腕が絡みつく、抱きしめられた
 さっきも言ったが朝ご飯を作らないと、ポケモンたちもお腹を空かせているはず

「……朝ご飯作らないと」
「さっきも言ったけど、」
「なに?」
「昨日の夜に挑戦者来たから眠いの」
「はあ、じゃあ寝てていいから、私は朝ご飯作るから」

 私だけでも布団から出ようとすると抱きしめる力が強まり、布団から出たくても出られなくなってしまった
 今日のマツバはいつもに増して甘えただな、しょうがないないなあ
 ポケモンたちには悪いけど、ご飯の場所は教えてあるから、あの子たちなら自分たちで用意して食べるだろう

 布団の中でマツバを抱きしめ返すとキスをされた

「ナマエ、好き」
「私も好きよ」


(今日くらいは良いか、なんて考えてしまう私はなんてマツバに甘いんだろう)



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