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- ナノ -

 俺は今見てはいけないものを見てしまった
 これは夢なのか? むしろ夢であって欲しい、夢ならば早く覚めてほしい、これが夢ならどんなに良いことか……
 でもこれは夢ではなくて、目の前の光景は現実なんだと嫌というほど理解する、現に頬を抓ってみたが痛かった

 ああ、昼寝をしてしまったせいか夜中に目が覚めてしまったので気晴らしにコンビニに行こうと思ったのが間違いだった
 夜中だというのに暑かったのでコンビニで飲み物と雑誌を買って、帰る途中に近道をしようと公園に入ったことを激しく後悔
 夜中ということもあり公園内人っ子一人おらず静かだった、当たり前っていえば当たり前か
 夏とはいえ夜中は暗いので電灯を頼りに歩いていると向こうから人が歩いてきた、何やら紐を持っているのでこんな時間に散歩か、とぼんやり考えていた
 電灯に照らされたその人を俺は知っていた、俺の友人で、親友の恋人だった

「ナマエ……?」
「あ、オーバだ、こんな時間にどうしたの?」
「俺は目が覚めたからコンビニに……って、ナマエは何してんだよ」
「私? 私は散歩」
「散歩って、お前犬飼って……!?」

 リードの先を見てみて後悔した、激しく後悔した
 リードの先にいたのは犬ではなく、俺の親友だった

「デンジ……?」
「わん」

 デンジが犬の格好をしてリードに繋がり四つん這いになっていた、俺を見るなり心底嫌そうな顔をした
 顔を上げてナマエを見やると何か問題でも? といった表情で返された

「……何してるか聞いていいか?」
「何って、散歩って言ったじゃない」

 ねー、とナマエはデンジに言うとデンジもデンジでわん、と一言言って頷いた
 俺って本当に友達運がない、そう心の底から自分の運命を呪った
 デンジは早く行くぞと言わんばかりにリードをひっぱりナマエを促した
 ナマエもナマエでごめんごめん、と散歩を続行しようとしたのでとりあえず阻止することに成功した

「オーバ邪魔なんだけど」
「わん」
「俺はお前らを更正させる義務がある」
「更正って、何で? デンジわかる?」
「……わん?」
「それだよおおおお!!」


 所変わって誰もいない夜中のナギサジム
 あの後素知らぬ顔で散歩を再開しようとした二人を無理矢理、かつ誰にも見つからぬよう(ここ重要)引っ張ってきた
 とりあえず二人を正座させ説教する

「今一度聞こう、何をしていたんだ?」
「だから散歩だってば」
「散歩って何を?」
「デンジの散歩」
「わん」

 目の前の男はずっと眉間にしわを寄せ、俺を睨みつけている
 だが、首輪とリードがつけっぱな上、返事は全部わんときたもんだ、呆れてものも言えん
 っていうか今のデンジは滑稽でしかない

「……デンジ、お前は普通に喋りなさい」
「わん」
「言ってる意味分からんから普通に喋れよ!」
「『俺は犬だからわん以外言わないこのクソアフロ野郎とっととくたばれ』だってさ」
「何で分かんの!? っていうか
今の一言にそんなに意味があったのかよ!?」

 なんなんだこいつらは、自分たちがしていたことを少しも可笑しいことだと思っていない様子だ
 ナマエは何で怒られてるのかわからないって表情を止めろ! 頼むからわかってくれ!

「次ふざけたら二人とも殴るからな」
「わん」

 言った矢先にこれだ、当然俺は二人の頭を叩いた、買ってきた雑誌を丸めたやつでだが
 丸めた雑誌と言えど思い切り殴ったから痛かったらしく、ナマエは若干涙目だ
 しびれを切らしたらしくデンジが口を開いた、どうかその口から出てくる言葉がわん以外でありますように

「……何すんだよ、タコアフロ」
「タコじゃねーよ、ようやくまともな言葉喋ったな」
「ナマエ泣かせんなよ」
「痛い……」
「あー、そんなに痛かったとは思わんかった、ごめんな」
「許さん」

 デンジに抱きついたナマエに素直に謝れば許さんの一言、どうすりゃいいんだよ
 つーか、元はといえば原因はお前らにあるんだよ

「っていうか、お前ら何してたかわかってたのか?」
「犬プレイ」

 俺が再び問いかけると、デンジが堂々と答えた

「どこで?」
「公園」
「一歩間違えれば警察沙汰だったんだぞ、見つけたのが俺だから良かったものの、他の人だったらどうしてたんだよ……」
「……見せつける」
「おいいいいいいい!!!!」

 こいつらには何を言っても無駄だ、長年の付き合いから分かり切っていたことなのに……


駄目だ、こいつら早く何とかしないと……!




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