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「いしかあくん、いしかあくん」

 名字は宮村と同じで俺の苗字をはっきりと発音できない、いつもいしかあくんと呼ばれている
 本人はちゃんと石川と発音しているつもりなのだろうが百人聞いたら百人がいしかあと聞こえるだろう
 そんなことは置いといて、俺の名前を呼ぶ名字に振り向けば嬉しそうに目を細めていた

「どうしたんだよ……?」
「あのね、さっき京子ちゃんに飴貰ったの!」
「そりゃ良かったな」

 そう言って名字の頭に手を乗せ優しくなでてやれば名字は照れたように笑う
 それから握った両手を俺に差し出し、どっち、と聞いてきた

「な、何が?」
「どっちか選んで!」
「えっと、じゃあ、右、で」
「右ね! はい、どうぞ!」

 とりあえず右を選んだら名字は勢いよく右手を突き出してきた、殴られるかと思った、まあ名字はそんなことするような女じゃないが
 俺が頭にクエスチョンマークを浮かべているとその拳が開かれ中から小さな包装の飴が出てきた

「いしかあくんはレモン味だね! 私はイチゴだよ!」

 左手を開いた名字のが赤い包装を見せてくる、そういうことだったのか
 きっと堀に飴を二個貰ったので俺におすそ分けしてくれたのだろう
 黄色の包装をありがたく受け取り、ぴりっと破り口に放り込む、あー、すっぱい
 名字もイチゴ味の飴を口に入れ幸せそうに顔をとろけさせる、飴一個でここまで幸せそうな顔するやつ初めて見たかも
 その顔を見ているとなんだかこっちも幸せな気分になってしまい、思わず名字の頭を再び撫でてしまった
 でも名字は特に気にする様子がなかったので俺はひたすら撫で続けた

「今日のいしかあくんは私の頭をよく撫でるね」
「なんか名字が幸せそうに飴舐めてっからつい」
「そうか、ついか、ついなら仕方ない!」

 なんか名字って秀に似ている気がする、細かいことを気にしないとことか、テンションが高いとことか

「おいしいね、いしかあくん」
「なあ名字、透って呼んでよ」


いしかあくんは卒業しようぜ




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