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- ナノ -

「ねえ石川ってさ、吉川と付き合ってんの?」

 朝、学校に来て自分の席に着き一時間目の授業で使う教科書を用意していたときだった
 前の席に座って携帯電話をいじっていた名字が振り返って俺に聞いてきた
 名字とはそこそこ仲がいい、というか女子の中では吉川と同じくらい仲がいいんじゃないかと思う

「え、何で?」
「だって石川と吉川って仲いいじゃん」
「え、別に普通じゃね?」

 だからってなんで俺が吉川と付き合ってることになるわけ、意味不明
 パチンと名字が携帯を閉じればいつに無く真剣な顔で詰め寄ってくる

「じゃあ付き合ってないの?」
「付き合ってないし」
「家にまで招待するのに?」
「それは吉川がゲームしに来るだけで、つか名字もうち来るじゃん」
「まあそうだけどさ……」

 うーん、と唸って、俺を見てため息をついて、再び唸る、ため息をつきたいのはこっちの方だこのやろう
 名字は携帯を握り締めたままそれから数秒何かを考え、思い出したように口を開く

「で、でも、吉川は石川のこと名前で呼んでるし!」
「別に向こうが勝手に呼んでるだけで……」
「じゃあ吉川とは何も無いってことでいいの?」
「さっきからそう言ってるし、え、何、名字どうしたの?」
「……何でもない」

 ふいっと再び頭を前に向けて携帯をいじりだした名前、一体なんだったんだ
 もう訳が分からない、いきらり振り無体と思えば質問攻めで意味の分からないまま会話は終了
 あまりにも一方的過ぎる、さすがの俺でもイライラしてきた
 小さい背中に話しかければ今度は振り向気もせずに会話が始まる

「おい名字、さっきのなんだったんだよ」
「いや、特に意味は無いので気にするでない」

 いや口調おかしいし、一言指摘してやれば名字は勢いよく振り返り俺を睨んできた
 何か顔赤いし、堀とかに比べると全然怖くない、むしろ可愛いくらいだ

「なんでもないって言ってるんだから気にしないでいいよ!」
「気にするなって言われたら余計気になるから」
「特に意味とかないって言ってるでしょ!」
「あー、もうめんどくせえから言いたいことがあるならはっきり言えよ」

 もう遠まわしに話されるよりはっきり言われたほうが気が楽だ、そう名字にはっきり言ってやれば名字は言葉に詰まった
 ど、どうしても言わなきゃだめ? と首をかしげる名字
 その姿がいつもの名字とは違い、しおらしいというか可愛かったのはここだけの内緒だ

「俺と吉川が付き合ってたら何か都合が悪いのか?」
「……うん、すっごく都合が悪い」
「そうか、で、何で?」
「何でって、ここまで言ってて気づかないの?」
「気づく? なんのことだよ……?」

 今度は俺が首をかしげる番となった、さっきからなんなんだよ
 考えても何もでない、頭を抱えてうんうん唸っていると前から笑い声が聞こえてくた

「名字笑うな! 何なんだよいったい……」

「透って変なところで鈍いよね」

 そう言って名字が笑ったところで担任が教室に入ってきた、そのせいで結局何のことか聞きそびれてしまった
 っていうかおいまて、今なんて……


自分のことには鈍感君




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