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 進路希望調査、安田が黒板にそこそこの大きさで書く、それと同時に一枚のプリントが配られる
 そのまんま進路希望調査のプリントで、俺は後ろの席の名字にプリントを回す
 俺は後ろを向いて名字を見る、名字はプリントを見つめながら溜め息を吐いた

「どうした?」
「ねぇ、石川は進路どうするの?」
「あー、俺は家」
「そっか……、そうだよねぇ」

 俺の進路を聞くやいなや机にうなだれた、きっと宮村も家業を継ぐんだろうなー、と呟いた
 何で宮村なんだろう、好きなのかな、そう思い聞いてみた

「なに、宮村好きなの?」
「何でそうなるわけ、脳味噌紫野郎」

 最後の言葉は聞かなかったことにしよう、どうやら名字は宮村が好きではないらしい
 名字はその端正な顔を上げで俺にきっぱりと言い放った

「私はね、石川や宮村みたいに将来が安定している奴らが憎い」

 名字の口からでたのはただのひがみだった、それからまた机に突っ伏した、
 名字は進路に迷っているのだろうか、机の上に伏せてあった名字の進路調査プリントを手に取る
 なんだ、しっかりと第一希望の欄だけは埋まっていた、ちゃんと進路が決まっているではないか

「へぇ、名字大学進学すんだ」
「……なに勝手に見てんのよ」
「なのになんでそんなに暗いわけ?」
「……」

 やばい、黙ってしまった、俺は今確実に名字に睨まれている
 大学進学の何が不満なんだ、この大学は結構有名で、たぶん頭の良い名字なら入れるだろう、なのになぜ

 名字は俺からプリントを奪い返すと第一希望の欄を消した、プリントは名前以外白紙に戻った

「私先生にも親にもこの大学行くように言われてるの、私の頭なら簡単に入れるって」
「なにそれ嫌み?」

 成績が微妙にやばい俺に対する、そう言うと、違うの、と言葉を続けた

「私の父親、この大学の教授なのよ……」
「……なんか気の毒」
「それに高校卒業しても勉強なんてしたくないし」
「あー、それはわかる」

 かと言って行きたいとこもやりたいこともないし、そう言ってため息を吐いた
 そんなにため息吐いたら幸せ逃げるぞ、名字の眉間に寄ったシワをつつけば、石川が羨ましいと言われた
 俺は名字が羨ましがるような人間はない、むしろ将来有望な名字が羨ましいくらいだ

「どっかの男に永久就職したい」
「どこに」
「公務員か社長」
「なんかバブル時代みたいだな」
「なによー……、あ、この際石川でもいいや、養ってよ、石川の扶養家族になりたい」

 すごい告白みたいな台詞を平気で言う名字に俺は内心どきどきしてしまった
 しばらくして名字が自分の発言に気づいたのか、あ、特にそんな深い意味はないよ、と笑った
 このままでは釈然としないので俺は再び名字のプリントを奪い取り自分の机でペンを走らせる

「ちょっとなにすんのよ!」
「いいからいいから……、はい、返す」

「……第一希望永久就職って、どこによー」
「名前欄をよく見ろ」

 プリントの名前欄を見た名字は目を見開いた、それから少し嬉しそうに呟いた

「まじでいいの……?」
「いいに決まってんだろ」


近い未来、私は石川になります


 名前欄には石川名前、もちろん俺が書きました




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