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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 ここ数日に渡る歴史修正主義者共の猛攻は烈烈たるものであり、立て続けの出陣により刀剣男士たちは心身共に疲弊していた。
 特に鳴狐は隊のメンバーが入れ替わりたち変わる中ずっと隊長を任されていたのだ。これといった外傷はなくとも他の刀剣男士に比べてその疲労度は明らかだった。
 しかし生憎手入れ部屋は先客で溢れており、軽傷にも至っていない鳴狐が入る隙間はなし。
 仕方ない、夕餉までどこか静かな場所で休もうと思っていた矢先、彼らの主こと名前が鳴狐の名を呼んだ。

「ちょっといい?」

 今日の出陣のことで聞きたいことがあるから部屋に来てくれと言う彼女の後ろを、鳴狐とそのお供は大人しくついて歩く。
 出陣報告ならば先ほど完了した。なにか報告漏れでもあったかと、首元で寛ぐ狐に目配せしても、彼も知らぬ存ぜぬ。ならば何のために呼ばれたのか。彼らには分からなかった。

「鳴狐、今日はご苦労様」

 彼女の部屋で向かい合って座るや否や掛けられた言葉は彼を労うもので。
 漸く彼とそのお供は先ほどの言葉が嘘であることに気がついた。
 聞きたいことがあると言うのは他の者に怪しまれずスムーズに彼を連れ出す口実に過ぎなかったのだ。

「いつも隊長任せっきりでごめんね。助かってるよ、ありがとう」
「何て勿体無いお言葉! 私も鳴狐も光栄にござます!」

 いつも通りお供の狐が返事をする。隊長を任せてもらっているということはそれだけ信頼されており、実力を買ってもらっているということ。
 それだけでも名誉なことなのにこうして二人と一匹きりで真正面から労いの言葉を頂けるのは刀冥利に尽きるというものだ。それだけでも今日の激務が報われ、疲労も軽くなる。
 鳴狐自身、何も言葉は発していないが主からの言葉をしっかりと噛みしめ、悦喜する。

「鳴狐」
「?」
「おいで」

 自身の膝をぽんぽんと叩く名前に、鳴狐は数回の瞬きの後己の主の顔と綺麗に正座された膝を交互に見やった。
 それから暫くして彼女の意図を察したに自身の頬が熱くなるのが分かる。頬面がなければバレてしまうところであった。
 何とかポーカーフェイスを崩すことはなかったが心臓は五月蝿いくらいに鳴っている。彼女に聞こえていないかを案じた。

 それから遠慮がちに頭を乗せたそこは彼が知りうる物の中で一番柔らかく、とても落ち着かない。

「……」

 望外の喜びを噛み締めながらばくばくと五月蝿い心臓を落ち着かせようと胸に手を置く前に、お供が彼の身体に乗り上げ腹の上で丸まってしまった。
 いつもならば顔の横で寝ているのに今日ばかりは甘えているみたいだ。
 その様子に鳴狐も胸に手を置くことを止め、寝息を立て始めたお供の背を撫でてやる。いつの間にか心拍数は平常値に戻っている。

「あら、狐ちゃんはすっかり寝ちゃったね」
「……」
「夕飯までもう少し時間があるから鳴狐も寝ていいよ」

 普段から寡黙で甘えたがろうとしない自分の為を思ってこうして膝枕をしてくれているのだと考えるといつも以上に愛おしくてたまらない。
 鳴狐は少しの優越感を感じながら、今日だけはしっかり甘えようと決める。

「今日もお疲れさま」
「……うん」

 名前が彼の頭を優しく撫でてやれば鳴狐の目元は次第に蕩けてゆく。

「ふふ。鳴狐の声、久しぶりに聞いた」
「あるじ……」
「? なぁに?」
「……ありがとう」

 うつらうつらする意識の中、鳴狐はそれだけは言っておきたかった。お供からではなく自分の口から伝えたかったのだ。
 それともう一つ。

「……好きだよ」

 あまりの眠たさにきちんと言葉になっていたか、彼女の耳に届いていたかは分からない。
 それでも言えたことに対する充足感の方が大きかった。
 ぼんやりと見えた彼女の顔は驚きに満ちていて。どうだ驚いたかといつもの調子で言ってやりたいところだが、彼の意識はもう睡魔に支配されている。

「あのね、私も鳴狐のこと……」

 名前の言葉を最後まで聞くことなく鳴狐は就眠してしまっていた。

「あら、寝ちゃったの? おやすみなさい」



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