この山一帯の動物たちを眠らせるための忍術を修得するのに時間がかかってしまったがようやく好機に巡り会えた 山を管理している一族が任務で手薄になっている隙に張られている結界に入ってから、内側に私の結界を張る、これでしばらくは大丈夫だろう 飛段のチャクラを探りながら山道を歩いていく、イヤというほど一緒にいたからどんなに僅かな気配でも私には分かる 「土遁、土竜隠れ!」 とりあえずどのあたりに埋まっているのかだけでも分からないと掘りようがないので、特に気配の強い場所を得意の土遁で地中を泳ぐように捜すことに するといきなりヒットした、チャクラを流し込まれ砂状になった土中で見つけたのは彼が信心している宗教のシンボルだった 飛段が常に身につけ事あるごとにキスをしていたネックレスを掴み地上へ這い出る つまりはこの辺りに飛段が埋まっていることになる、首に付けていたネックレスが外されているところを見るとまた首を跳ねられたのか、それとも 考えるより本人に聞いた方が早いということで、再び土遁を使い今度は私を中心にここら辺の土地を掘り起こす、いちいちスコップなんぞ使っていられるか 隆起した土の中に飛段の頭を見つけた、よいしょと引っ張り出して髪や顔についた土を優しく払い落とす 改めて飛段と向き合えば、こうなることが分かっていたみたいに笑っていた 「よう、待ってたぜ、愛しの名前ちゃん」 「もうっ、私が、どれだけ心配したと思っ……!」 「あーっ、泣くなって! 俺がお前の涙によえーの知ってんだろ!?」 「だってぇー」 彼の顔を見たら一気に安心してしまい、あんなに気張っていた体から力が抜けて涙も出てきてしまった 動物たちは忍術で寝かせているというのに私の口からは小さな嗚咽しか出てこない、ぎゅうぎゅうと飛段の首を抱きしめてひとしきり泣き続けた いくら不死身といっても栄養を取らなければ体は腐りやがて生きた屍と化す、飛段が豆腐みたいに繊細な生物じゃなくてよかった 「名前……相変わらずチチでけぇな」 「……ばか」 昔から物を壊したり喧嘩をして相手を泣かせるのは得意だったが、直したり笑わせるのはあまり上手じゃなかった飛段の、彼なりの慰め方 里を抜ける以前と全く変わらない反応に私は笑みを浮かべていた、さあ全身を回収せねば 気を取り直して回収作業を再開、飛段の首の根元の土を手で拭うと以前切られた物とは別に、何かに千切られたような傷口がある 「ゴリラか何かに千切られたの?」 「ちげぇよ! 何だよオレ対ゴリラってよぉ!?」 「じゃあなに……?」 「起爆札使われまくってバラッバラなんだよ」 起爆札でバラバラということは大小様々な肉片が埋まっているのか、こりゃ全てを探すのは骨だ いつまでも動物たちの鳴き声が聴こえないと怪しまれかねないのであまり長居はしていられない とりあえず土遁を使いまくって飛段の一部と思われる物体を拾い用意しておいた袋へ詰めてゆく 腸やら肝臓やらは出てくるが一向に男として大事な部位が出てこない、見つけ出した肉塊を袋に詰めながら小さく呟く 「飛段のあそこが腐ってたらどうしよう……そうしたらもう飛段を愛せない」 「おいおいっ、十何年一緒にいてオレの価値チンコだけかよ!?」 「うん」 だって機能しなかったら男として終わってるでしょ、そんなのオカマと一緒よ 考えながら手を動かしていると頭を出しているそれを見つけた、すぐさま先端を摘み引っ張り出す 当然萎えているそれは私の知っている形を留めており、色は少し危うい気もするが大丈夫だ 飛段のモノを握りしめて安堵の溜め息を吐き出す私に対して、飛段はにやにやと下品な笑みを浮かべていた 「……なに」 「今のすげーエロかったぜ!」 「あほ!」 「ゲハハ!」 冷静になったら急に恥ずかしくなってしまい握っていたモノを飛段の頭部に投げつけて私は回収作業に意識を戻した それから数分も経たないうちに回収作業は終わりを告げた、最後にぎゃーぎゃーうるさい頭を袋に入れて掘り起こした土地を土遁で元に戻す 男性一人分の重さがある袋をしっかり掴んで土竜隠れで二重に張られた結界の外へ 無事に出られたことを確認してから私が張った結界と、動物たちにかけた術を解く、あとは私の所行がバレる前にどこか遠くへ逃げるだけ 「……はあ、温泉入りたい」 気配を消し木から木へ飛び移る中、ふと独り言を口にしたら背負っている袋の中から返事が返ってきた 「んじゃ、俺の体が治ったら行こうぜ」 「いや、今入りたいんだけど」 まあ飛段の体をくっつけるのが最優先だ、土だらけの体を洗うのはまだまだ先になりそうだ 恋人探しの穿孔者 |