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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -

 部屋に備え付けられている時計の音とペンの走る音だけが響く
 この部屋の主は椅子に座りひたすらにペンを走らせる
 もう何時間、この時計の音を聞きながらペンを握っているのだろうか……
 そう思えば思うほど、むなしさしか残らず思わずため息だ出てきた

 ため息をついてから更に時計の針が180°回転する頃には、ようやくといった感じに書類の山がなくなりかけていた
 茶でも飲んで休憩しようかと考えていると、勢い良く扉の開く音がした

「おい名前、会いに来てやったぞ」
「……誰も会いたいなんて言ってないんだけど」

 ていうか邪魔、そう付け足すと突然やってきた彼、イギリスは眉をひそめた
 二度目の邪魔通告をし、彼を除けて扉を通りキッチンへと向かった

「おい待てよ、俺がきてやったのにその態度かよ」

 部屋を出て二・三歩歩いた所で彼に肩をつかまれる
 名前はあからさまに不機嫌な顔を彼に向けた

「別に来てくれって頼んだ覚えはないし、私は仕事で疲れたから茶を飲んで休憩したいの」
「彼氏が来たってのに、嬉しくないのかよ……?」
「今は彼氏さんより茶が恋しいの」
「そうかよ……じゃ俺帰るわ」

 そう言って彼は踵を返した、だからといって本気で帰るわけじゃない
 時折振り返ってちらちらと名前を見ているのがその証拠だ
 きっと彼は愛する彼女に呼び止めてほしいのだろう、所謂ツンデレというやつだ

 しかし世の中そう甘くはなかった
 帰るふりをしている彼に対して名前は簡潔に、さようなら、とだけ伝えキッチンへ急いだ
 彼女はツンデレであることを知った上で、冷たく当たったのだ
 すると案の定彼は吸い込まれるようにキッチンと足を運ぶ

「おい! 何で呼び止めないんだよ!」
「だって帰りたいんでしょ? 悪いじゃない」

 全然悪びれる様子もなく言ってのけた名前は彼を見つめた

「違う?」

 明らかに確信犯のそれが彼を見つめた

「う、あー、そうじゃなくて、何ていうか……察しろよ!」

 見る見るうちに顔が赤くなっていく彼に面倒くささを覚えた名前は再び口を開いた

「それ以上ツンデレしてたらあんたのこと嫌いになるから」
「っ、ごめん……」
「わかったら、早く紅茶煎れてよ」
「……は?」
「だからイギリスの淹れた茶が飲みたいって言ってるの、私は菓子用意するから」
「……わ、わかった!」


ツンデレは鼻歌交じりに紅茶を淹れた




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