「何してんの?」 放課後、部活がミーティングのみで早く終わったのだが教室に忘れ物をしたことに気づいて急いで教室に戻れば窓際で体育座りをしている名字を見つけた 夕焼けが窓から入ってきていて一目じゃ名字だとは分からなかった、もう少し暗かったらちょっとしたホラーだったね 「なんだ、山ノ井か……」 感傷に浸っているだけだから放っといて、そう続けて立てた膝に顔を埋めた、感傷ねぇ とりあえず再び忘れないうちに忘れ物を机の中からカバンに移動させてから名字の前にしゃがむ 俺の気配に気付いたのか名字が顔を上げた、あ、目が赤くなってる 「どうしたの? 話しちゃった方が楽になるかもよ、俺が聞いてもいい内容ならだけど」 「……」 「んーと、」 「告って振られた」 名字が何も言わないので、俺が聞いちゃいけない話だったのかな、とか思っていたら口を開いた というか名字って好きな人いたんだ、普段はそんな素振り見せないから分からなかった それからぽつりぽつりと話してくれた、ずっと好きだったこと、意を決して呼び出して今日の放課後に告ったこと、そして振られたこと 喋りながらまた涙を流し始めたあたり名前は知らないけどそいつのことが相当好きだったのだろう 「そいつ、勿体ないことしたな」 「えっ……?」 「名字を振るなんて勿体ないよ、俺が付き合って欲しいくらいだもん」 「……ふふっ、ありがと、山ノ井のお陰でなんか元気でた」 「どういたしまして」 「あー、今振られて寂しいから山ノ井に惚れちゃうかも」 もう吹っ切れたのか名字の顔は笑っていて安心した、名字が冗談で言っているのは分かっているが最後の言葉に俺の何かが吹っ切れた 「さっきの十割以上本気だったんだけどなー」 気がつけば口走っていた、あーあ、なんか弱った心につけ込むみたいで言いたくなかったけど言ってしまったものは仕方ない あからさまに名字が動揺しているのがわかる、顔を赤くして口をパクパクさせていて鯉みたいだ 「名字が好きだよ」 俺がハッキリ想いを告げれば名字もちゃんと理解したらしく赤い顔を再び膝に埋めた 「名字ー?」 「……どうしよう、山ノ井に惚れちゃうかも」 「惚れてもいいよ」 「私って現金な女」 「そんな名字も好きだよ」 忘れ物して良かった |