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- ナノ -

 アディーネ様は部下が失敗したり、自分の思い通りにならなかった時は必ず尻尾で殴られる。

 俺はアディーネ様に殴られるのが嫌いじゃない。むしろ好きなくらいだ。
 その事をヴィラルに話したら変な顔された。


「ナマエ! ナマエはどこだ!」
「アディーネ様、遅れて申し訳ございません」
「おっせーんだよ!」
「っ!」

 アディーネ様の尻尾は容赦なく俺の頬を殴る。
 当然だ、アディーネ様が俺の名を呼んだらコンマ一秒も遅れずに現れる。
 それが俺の決まりだ、じゃないと殴られる。だから、ワザと少し遅れる。
 そしたらアディーネ様に殴られる。殴る瞬間にアディーネ様は笑う。
 俺はその顔が好きだ。

「ジェローム様に呼ばれておりま……っ!」
「言い訳はいいんだよ! アタシが呼んだらすぐ出てこい!」
「はい……」

 また殴られた。嬉しい。アディーネ様がまた笑った。
 殴られるとアディーネ様の愛情を感じる気がするから。

 アディーネ様は当たり前のように俺を殴る。俺も当たり前のように殴られる。
 その関係が気持ちいいのだ。

「俺はきっとアディーネ様に殴られるために生まれたんだと思います」
「はぁ? いきなり何言ってんだよ?」
「アディーネ様、俺は殴られたいんです」
「じゃ誰かに殴られてこいよ!」
「アディーネ様に、殴られたいんです」

「――っ! ったく……このマゾ野郎が!」


「はい、仰るとおりです!」

(もっと、罵って下さい!)(……馬鹿がっ!)



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