眠らずに戦える体。 眠らなくてもいい。 逆に言えば、眠れない。 寝たいと思っても寝ることができない。 傷を付けられても再生する体。 死ぬことのない体。 逆に言えば、死ねない。 死にたくても生きなければいけない。 こんな忌まわしい体になんか成りたくなんてなかった。 「ヴィラル、泣かないで……」 「え……?」 俺が泣く? 人間みたいに? 「かっこいいのに、台無しだよ……」 「……名前? う、ウソだろ……名前!」 名前を呼んでも返事は来ない。 握った手は動かない。 俺と同じ獣人である証の、兎のように長い耳もピクリともしない。 あの優しかった瞳は涙を流している。 死ねたらどんなにいいことか。 君の元へいけたらどんなに幸せか。 今ほど思ったことはない。 あの笑顔を見ることは、もう叶わない。 「……誰か、殺してくれっ」 喉から絞り出した声は弱々しくて、逆に笑えた。 |